【完結】偽りの聖女、と罵られ捨てられたのでもう二度と助けません、戻りません

高瀬船

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「君が好きだよ」

と、そう言ったのは嘘だった。

「爵位なんて関係無い、俺は君の人柄に惹かれたんだ」

なんて言った癖に、結局あなたは私の家の爵位が低い事を嘲り、自分の爵位に釣り合う「恋人」を作っていた。

騙されて、まんまとこんな最低な男に恋をしてしまった自分が本当に愚かだ。

初めからこの男は、私が持つ「光属性魔法」を狙っていただけだったのに。

「学院を卒業したら結婚しよう」

なんて、どの口が言ったのか。









私、メニア・ハピュナーは学院の空き教室で、自分の婚約者が他の女性と口付け合っているのを見てしまい、その場に立ち尽くした。







メニア・ハピュナーはこの国の子爵家の生まれだ。
子爵家に生まれた、三番目の子供で子供は全員女の子。
跡継ぎである男子が生まれなかった事から、長女が婿養子を取り、ハピュナー子爵家は長女の旦那が継ぐ事になり、夫婦の子供が後を継いで行く。

夫婦仲はとても良好で、早速二人もの子宝にも恵まれていて、子爵家の今後は安泰だ、と両親も考えているからか、末娘のメニアの結婚相手はのんびりと考えていた。

だが、この国で子供が十歳になると必ず受けねばならない適性確認の検査がある。
それは、魔力の適性属性検査だ。



この国には魔力と言う物があり、自然の五元素である、火、水、雷、土、風の属性がある。
この自然の属性以外にも、三種類程属性があり、それが光属性、聖属性、最後に闇属性だ。

光属性と聖属性は治癒の能力に秀でており、この二つの属性を持つ者は希少な存在である。
そして、それより更に希少な属性が闇属性だ。

本来、闇属性の魔力を有するのは「魔の者」と呼ばれる人間以外の生き物の使用する魔力だったのだが、数百年前にその魔の者と友好関係を結ぶ事が出来、その中で魔の者と人間が交わる事で生まれた子供に、闇属性の魔力が宿る事がある。

魔力を持つ者は多いが、複数の属性の適性を持つ者は極めて珍しく、過去に遡っても自然の五元素全てを操る者は歴史上一人しか居ない。
しかも、その者は四属性の同時展開まで出来た、と言われている正真正銘の化け物だ。
同じ人間とは思いたくない。

そして、治癒能力に特化した魔力に適性を持つ者は自然の元素魔法に目覚める事はほぼ皆無、と言われているが、やはり数百年前に聖属性魔法と、火・水属性の三属性の複数の魔法に適性を得た化け物のような人間がいた。
しかもこの人も三属性同時展開を行えたと言う。

上記の二人は、同じ時代に生き、そして夫婦だったと言う。
その子孫達が今現在もこの国に生きているので、本当の事なのだろう。

俄に信じ難い、とメニアはそう思っていたのだ。
自分の身にそのような事が起きる前までは。




メニアが十歳の時に行った適性確認。
その時、自分の適性は風の適性しか出なかった。

だが、その適性確認から数日後。
子爵家で怪我をしてしまった使用人を心配して、治りますように、と祈ったらメニアから真っ白い光が輝き放たれ、使用人の怪我が綺麗さっぱりと治ってしまったのだ。

これに驚いた子爵家の面々、主に両親は急いで適性の再確認を行いに行ったが、初めは全く信じて貰えなかった。
それだけ、光や聖の魔法の使い手は希少なのだ。
希少な使い手として、国からも手厚い待遇を受けれる為に、適性を詐称する者も多かった。

その事からまともに取り合って貰えなかったメニアの父は、憤りあろう事か自分の腕を小刀で斬った。
恐らく、メニアの家がただの子爵家だった事から侮られ、信じて貰えなかったのだろう。

数百年前、メニアと同じ子爵家で奇跡の乙女と呼ばれた女性が居たのにそれは禁忌として扱われてしまっている為、無かった事にされている。

突然腕を斬った自分の父親に、周囲は慌てふためき、メニアは泣きながら父親を治癒した。

そして、メニアは光属性の適性者だ、と正式に認められた。




だが、光属性の魔法の使い手だと知れ渡ってしまったが為に、騙され、利用され馬鹿な目に合ったのだ。
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