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第四話

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フィオナ・レーバリー嬢。
その名前がジェイクの唇から出てきてセレスティナは「なるほど」と納得して頷いた。

フィオナ・レーバリーとはレーバリー男爵家のご令嬢だ。
三人姉弟の末っ子でピンクブロンドの髪の毛に赤茶の瞳の可愛らしい顔立ちのご令嬢だ、と噂を聞いた事がある。
セレスティナの耳にまで噂が入るという事は相当可愛らしい女性なのだろう。
そのご令嬢とジェイクは「良い仲」なのだと言う。と、言うことは恋仲なのだろうか?セレスティナは疑問に思った事をジェイクに聞いてみる事にした。

「フィオナ・レーバリー嬢とカートライト侯爵子息様はお付き合いをなさっているのですか?」
「──ジェイクでいい。……そうだな、ひと月程前にフィオナ嬢から想いを告げられて付き合い始めた」

恥ずかしそうにセレスティナから視線を逸らしそう告げるジェイクに、セレスティナはあらあら、と自分の口元に手を当てジェイクを微笑ましそうに見つめる。

「そうなのですね、でも……そもそもお付き合いをされているのであれば、何故フィオナ・レーバリー嬢とお付き合いしている事をご両親にお伝えしないのですか?真剣に交際されているのであれば、ご両親もご納得して頂けるのではないでしょうか?」

セレスティナの最もな意見にジェイクは悲しそうに溜息を吐き出すと、唇を開く。

「フィオナ嬢は男爵令嬢で、跡継ぎがしっかりと居る家の娘だ。それに対して俺は侯爵家ではあるが次男……自分で何かしらの偉業を成し遂げて叙爵されるか、一人娘の家に婿に入るしかない。……それにフィオナ嬢は男爵家だ。侯爵家の縁組にはまず名前が上がらない」

気落ちするようにずん、と肩を落とすジェイクに「可哀想に」と何処か他人事のように感想を抱くとセレスティナもジェイクがどうして偽装婚約を持ち出したのか納得した。
折角好いた女性とお付き合いしているのにお相手は下位貴族の男爵家のご令嬢で、婿に入る事も出来そうにないお家だ。
それに対して自分は没落寸前とは言え、伯爵家の娘である。
一応跡継ぎの兄がいるにはいるが、没落寸前の我が家の財政を立て直そうと他国に経営を学びに行っている。
暫く帰国の予定がなく、次の子供であるセレスティナにも爵位を継ぐ可能性がある為白羽の矢が立ったのだろう。

それならば仕方ない。

「かしこまりましたわ、ジェイク様。ジェイク様がフィオナ・レーバリー嬢と無事婚約出来るその時まで"婚約者役"承ります!」

解消する時もこちらに傷が付かないように取り計らってくれるとまで言っているのだ。
それならば、自分は家のために出来る事をしようとセレスティナはジェイクに自分の手を差し出した。
差し出されたセレスティナの手のひらと、セレスティナの顔を交互に見つめていたジェイクだが、ぱあっと表情を輝かせるとセレスティナとしっかり握手を交わした。

「ああ、それでは暫くの間よろしく頼むよ。セレスティナ嬢」

ジェイクに懸想しているご令嬢達の視線が怖いけれど、頑張ってみよう、とセレスティナは心を強く持った。
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