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第二話
しおりを挟む「ご令嬢はセレスティナ・クロスフォード嬢とお見受けするが、間違いないか?」
「ええ……その通りです。私はセレスティナ・クロスフォードと申します。お見知り置きを」
セレスティナは初対面の相手に対して行う挨拶でもって制服のスカートを摘むとジェイクに頭を下げる。
セレスティナの挨拶を受けてジェイクも自分の胸に手を当てると軽く腰を折り、答礼すると唇を開く。
「ジェイク・カートライトだ。俺の事を知ってくれているようだな?」
「ええ。カートライト侯爵子息様は有名ですから」
セレスティナがにっこりと笑顔でジェイクに答えると、バツが悪そうにジェイクが表情を歪めるのが見える。
自分がこの学園で騒がれている、というのはしっかりと把握しているようだ。
それならば、さっさと要件を行ってこの場から立ち去って欲しい。
いくら学園の裏庭で殆ど人が来ない場所とはいえ、他の生徒達の目に止まってしまえば更に嫌な噂話を流されてしまうかもしれない。
セレスティナがちらちらと周囲を気にしているような表情にジェイクは続けて唇を開くとセレスティナが思いもよらなかった言葉を口にした。
「失礼を承知で頼みたい。セレスティナ嬢に、期間限定で俺の婚約者になって欲しい」
「……は?」
セレスティナは、相手が高位貴族だと言う事も忘れ、ついつい素で返してしまう。
それだけ、セレスティナには思いもよらないおかしな事を言われたのである。
じり、とジェイクから距離を取ろうと後ずさるセレスティナに焦ったようにジェイクが声をかける。
「待て待て待ってくれ!確かに、俺も突拍子も無いおかしな事を言っている自覚はあるんだ!だが、これは期間限定の婚約であって、セレスティナ嬢にも利点はある!」
必死に言い募るように叫ぶジェイクに、セレスティナは眉を顰めたまま、ある程度ジェイクから距離を取ると言葉の続きを促す。
「……その、大変失礼な事ではあるが、ご令嬢の実家は資金繰りに奔走しているらしいな。そこで、この期間限定の婚約者役を引き受けてくれるのであれば、俺の私財から契約料として毎月ある程度の契約料を工面する」
「契約料?」
ぴくり、と反応したセレスティナにジェイクも押せば行けると思ったのか、畳み掛けてくる。
「ああ!もし俺の婚約者役を引き受けてくれればそれ相応の契約料と、前払いで契約金もお渡しする!婚約を解消する時もなるべくご令嬢に傷が付かないように手配もする!だからどうか俺と偽装婚約してくれないか?」
余りにも必死なジェイクの態度に、セレスティナは迷うように視線をさ迷わせたがそれも少しの時間だけで、ジェイクの言葉にこくり、と頷いた。
今は実家を助ける、それだけを考えるのだ。
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