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しおりを挟む「レグルスさん……っ!あ、ありがとうございます!何度も危ない所を助けて頂いて何とお礼を言ったらいいか……!」
「ん?ああ、大丈夫だ。気にしなくていい。……だが」
レグルスはぐるり、と周囲を見回すとひょいと肩を顰める。
「派手にやってしまったから、血の匂いに誘われて他の獣やモンスターが現れそうだ。早いところ拠点を作ろう」
レグルスは、自分の隣に歩いてきていたクライに視線を向けながら皆に向かってそう伝えると、遺跡の段差までやってくるとひょい、と飛び越える。
クライもレグルスに続いて段差を飛び越えると、眼前に広がる凄惨な光景に口元をひくつかせた。
「これ、は。そうだな。早く片付けないと獣を呼び寄せそうだ……」
「ああ……取り敢えず、ミーナと両親、アンナとリーチは収納した荷物を整理しててくれ」
そう言うなり、レグルスは空間魔法で収納していた荷物達を遺跡の床がまだ比較的綺麗な場所に解放すると、ここまで漂って来る血臭をまずはどうにかしようと風魔法を発動させる。
途端に、辺りを一陣の風が吹き抜け、先程まで鼻に届いていた血生臭い匂いが綺麗に消える。
レグルスの横ではもう驚く事は無くなったが、呆れたような表情でクライがレグルスに視線を向けている。
「何か、もう……レグルスの無詠唱魔法には驚かなくなったが……ここまでの広範囲の血臭を吹き飛ばす程だと、結構な高位の風魔法──いや、いい。もう何も言うまい……」
「そんなにか……?」
レグルスは不思議そうな表情をしてから、遺跡を覆うように物理防御の広範囲魔法と、気配察知の魔法を掛けると次はレッドウルフの亡骸を処理しようとくるりとそちらの方向へと向き直る。
「レグルス……?亡骸も処理するのか?」
「ん?ああ。あれも全部灰にしといた方がいいだろ?」
なんて事ないようにそう言葉を放つレグルスに、クライは本日何度目になるか分からないが再度溜息を零す。
(魔力切れ、と言うのを知らないのかこの男は──)
通常、魔法を使うには自分の体内にある魔力を使用するのだが、その魔力は有限だ。
暫く魔法の使用をしなかったり、休息で魔力は徐々に回復していくが、先程からこの目の前の男は連発で魔法を使い続けている。
普通の人間だったらとっくに魔力切れを起こし、倒れててもおかしくない程だ。
それなのに、目の前の男はケロッとした顔で更に魔法を放とうとしている。
クライは、自分は剣士の為そこまで魔法について詳しくはないが、詳しくない自分でもこれだけは分かる。
レグルスの魔力は底なしで、更に無詠唱をやってのけ、高位魔法もバンバンと使用している事から取得している魔法の総数はかなりの数になるだろう。
それが、どんな事か……。
どう言った事になるか目の前の男はまったく気付いていないのだ。
「──レグルス、一つ言っておくが。他ではそんなにバンバン魔法を連発するのは止めておいた方がいいぞ」
他所に知れ渡れば至る所から声が掛かるだろう。
だが、レグルスはそう言った事には興味がないように見える。
名誉や、野心、そんな物とは無縁でただ自分の好きに自由に過ごしているように見える。
それだったら、レグルスの力が外部に漏れてしまうのは不本意だろう。
「本当か……?これくらいの事で?」
「──お前は一体何処から来た人間なのか分からないが、普通の人間には魔力切れと言う物がある。それも起こさず、ケロッとしているお前の力は底知れない。お前の力を悪用しようとする人間もいるだろうから、目立つ事は極力避けた方がいい」
クライの真剣な瞳に、レグルスも黙って頷くと、「今後は気をつけるよ」と言葉を返した。
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