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しおりを挟むレグルスは門の外に出ると、この町から繋がる街道へと足を向けた。
道の両側には森が広がっており、レグルスは先程番の男から聞いた盗賊の話も納得だな。と心の中で頷いた。
森は深く、人が隠れるには適している場所だろう。
日が落ちた後、一人でこの街道を通っていたら運悪く盗賊の餌食になってしまうのにも頷ける。
(まあ、盗賊が出てきてもどうとでも出来そうだけどな)
レグルスは先日の領主の邸付近で対応した私兵達の事を思い浮かべて判断する。
私兵と、盗賊。両者にどれだけの力量差があるかは分からないが、大人数で向かって来られても落ち着いて対応出来た事から自分はそこそこガルバディスに力を付けて貰ったのだとわかる。
最低限、とガルバディスば言っていたが今思えば竜種が言う「最低限」とは人間であればそこそこ自分の身を守れるレベルではないか、と思う。
もし自分を襲ってくる盗賊がいたら処理してもいいだろう。
「そう言えば……盗賊を討伐したりしたら報奨が貰えたりしないのか?」
レグルスはふとそんな事を思い、戻ったら番の男に聞いてみよう、と考えた。
何も考えずに街道を進んで行くと、さわさわと風がレグルスの肌に当たり、被っていたフードを脱がせるように風が強く吹く。
「──っ?」
まるで悪戯を仕掛けられているようなその不自然な風に、レグルスはフードを被り直して押さえると周りに人がいないか見回す。
何故、突然突風が吹いたのか。
今ではまったく風は吹いておらず、レグルスは不可思議な現象に目を見開くと何が何だか分からないまま、気を取り直して足を進めた。
大分街道を歩いてくると、昔の建造物だろうか。
遺跡のような物がレグルスの視界に入った。
所々壊れ、朽ちてはいるが雨風は凌げそうだ。
レグルスは視線を街道の先に向けてみるがまだ小さな町の影も見えない。
「こんな建物もあるんだな」
レグルスはソワソワと心が浮き立つのを感じて遺跡に足を踏み入れようとしたが、あれから大分歩いて来た事もありもうすぐ町へ引き返さなければ夕方前に町に戻れないかもしれない。
散策はこの辺にして引き上げよう、と考えたレグルスは遺跡に掛けていた足を下ろすとトン、と地面に降り立つ。
遺跡等に心惹かれてしまうのは何故なのだろうか、とレグルスは考えながらベリーウェイへと戻るため引き返した。
レグルスは行きと同じように周りを見回しながら景色を楽しみつつベリーウェイへと戻ってくると番の男に先程気になった事を聞いてみた。
盗賊等を捕まえた場合は報奨等が貰えるのだろうか。
疑問に思った事をレグルスが番の男に聞くと、男は頷いて話してくれた。
「ああ。手配書が出回っているような盗賊だと、身柄を拘束して街の門番に引き渡せば手配書に記載の報酬を貰える。手配書がないような盗賊や山賊だったとしても、捕まえて突き出せば報奨金程ではないが、まあ程々に報奨は貰えるはずだ」
「そうか。分かった、ありがとう」
貰えるのならば有難い。
襲われたのならば捕まえてしまおう、とレグルスは考えると番の男に礼を告げて町へと戻った。
町が夕暮れに包まれて、太陽の光が柔らかく注いでおりとても美しい街並みの中をレグルスは孤児院の方角へと向かい歩いている。
まだ、町中には騎士隊がちらほらと見受けられるが、誰もレグルスの事を気にしている風ではない。
この町に入ってくる前に掛けた認識を希薄にする魔法が上手く作用しているのだろう。
レグルスはすたすたと孤児院まで歩いてくると、シザーバッグから孤児院に寄付する予定の本を数冊取り出すと孤児院の門の前にそっと置いた。
明日の朝、恐らく門を開けに来た人物が気付いてくれるだろう。
しゃがみこんでいた体制からレグルスは立ち上がると、宿へと戻るため孤児院に背を向けて歩き出した。
宿に着いて、レグルスは自室へと一旦戻ると着替えてから夕食の席に着いた。
ルドガやルルが「最後だから」と色々とサービスをしてくれて食べきれない程の豪華な食事となる。
サービスで酒も出してくれて、レグルスは何度も二人に礼を述べると、ルドガは豪快に笑い、ルルは寂しそうにしながらレグルスに抱きついて来てくれる。
三人で少しばかり会話を楽しんでから夕食を食べ終わると、レグルスは二人に声を掛けてから自室へと戻った。
この宿で過ごすのも今日で最後になる。
レグルスは早朝に出て行く事を考えて早めに寝てしまおう、と考えるとシャワーを浴びていつもより早めにベッドに横になった。
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