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第二十九話
しおりを挟む「まあ、このような素敵な物を賜ったのですか」
ティアーリアがきらきらとした瞳で、陛下からの褒美を見つめている。
「ええ。ティアーリアにとても似合いそうですね」
クライヴは自分の手のひらの中にあった色とりどりの宝石が装飾された髪飾りを、ティアーリアの髪の毛をそっと纏めるとその纏めた髪の毛を止めるように髪飾りを付けてやる。
自分の髪の毛に陛下からの褒美である髪飾りを付けられた事に、ティアーリアは慌てて恐れ多いと言っているがクライヴはまさか自分が身に付ける訳にもいかず、ティアーリアへとその髪飾りを贈る。
「──狩猟祭には、参加する者には殆どの者に婚約者や妻がいますので陛下は毎年こうやって女性に贈れる褒美を用意されているのですよ」
「そう、だったのですね······」
ティアーリアは戸惑いながらも、そっと自分の髪の毛に飾られた髪飾りに指先を添えると控えめにだが確かに嬉しそうに微笑んだ。
「何だか······色とりどりに散りばめられた宝石が光に反射してクライヴ様の瞳のようです」
「──っ、本当ですか」
ふにゃり、と嬉しそうに頬を染めて笑顔を見せるティアーリアにクライヴはその表情を直視出来ず自分の口元を手のひらで覆うとティアーリアから視線を逸らす。
嬉しそうに笑顔を見せるティアーリアにクライヴは自分の手がティアーリアに伸びそうになるのを必死に押し留めた。
ここはクライヴの邸宅へと戻る馬車の中で二人きりだ。
ティアーリアへ邪な考えを抱いてしまったクライヴは距離を取れない馬車の中にいる事に内心で焦る。自分が抱いたティアーリアへの邪な感情を悟られないように、クライヴは貼り付けた笑みを浮かべると早く邸へ着いてくれ、と心の中で祈り続けた。
「クライヴ様、ティアーリア様お帰りなさいませ」
馬車がアウサンドラ公爵邸の別邸であるクライヴの邸宅前の馬車停めに止まると、邸の中から家令が出てきて出迎える。
「ああ、今戻った。リドル」
リドル、と呼ばれた家令はクライヴから馬車の中の荷物を運ぶように指示をされると一礼してそのまま馬車の方向へと向かっていく。
クライヴとティアーリアはそのまま邸の中へと入っていくとティアーリアと共にクライヴは自室へと入った。
「ティアーリア、馬車での長時間の移動は疲れたでしょう?」
「いえ、私は殆ど座っていましたのでクライヴ様程疲れてないですよ」
ふふふ、と自分に微笑み掛けてくれるティアーリアにクライヴも微笑むと外出着のコートやウエストコートを脱いで行く。
ティアーリアもクライヴの着替えの手伝いを行いながら、受け取ったコートの汚れ等を洗濯メイドに洗ってもらう為、自分の腕に抱えるとクライヴの自室から出ていこうとする。
「ティアーリア、それは後でいいですよ」
「え、ですが早めにお願いしないと汚れが落ちなくなってしまいます······」
「それよりも、やっとティアーリアと二人きりになれたのですからゆっくり話しませんか」
クライヴに腕を捕まれて、優しく引き寄せられる。
ティアーリアの腕に抱かれていた自分のコートを抜き去ると、室内のローチェストの上に放り、ティアーリアを自分の腕に抱えてソファへと腰を下ろす。
恥ずかしそうに視線を彷徨わせるティアーリアの目尻に唇を落とすと、クライヴはしっかりとティアーリアの瞳を見つめて唇を開いた。
「ティアーリア······、狩猟祭から元気がないですが訳を話してもらってもいいですか?」
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