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第十三話

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散々自棄酒を煽り、無茶な酔い方をして寝てしまったクライヴは夜中に自室のテーブルで目を覚ました。
ギシギシと軋む体に、ガンガンと痛む頭に顔を顰める。

「──くそっ、みっともない······」

酷く痛む頭と胸に広がる不快感に、テーブルに置いてあった水差しからグラスに水を注ぎ勢いよく呷る。
昨夜、自室でイラルドと話終わった後に酒を飲み始めて。
それから記憶がない。

「ティアーリアが······例えイラルドを慕っていても······また俺を好きになって貰えばいいんだ······」

よたよたとソファから腰を上げベッドへとのろのろ移動する。
首元を緩め、ベッドへと突っ伏すと枕をぎゅう、と抱き締めて唸る。

「伯爵から手紙が届いたら······、もう一度······」

そこまで呻いて、クライヴは再度寝息を立てて眠りに落ちた。
もう、自分はティアーリアを諦める事なんて出来ない。
胸を焦がすほどの執愛を、ティアーリアを渇望して止まないこの渇きを癒してくれるのはティアーリア本人だけだ。





翌日、クライヴは酷い頭痛に苛まれ目を覚ます。
ガンガンと痛む自分の頭に低く唸り毒づいた。
記憶を無くしてしまう程酒に酔ってしまう自分が情けなく、こんな事だから自分はティアーリアに愛想を尽かれたのだ、とどんどんと悪い方向に気持ちが落ち込んでいく。

本当にもうティアーリアは自分の事等どうでもよく思っていて、二度と顔を合わせたくない、と思われていたらどうしよう、と自分の考えに泣きそうになる。
こちらからティアーリアに連絡を取ることが出来ない為、頼みの綱は彼女の父親である伯爵のみだ。
伯爵から手紙が届いたらもう一度面会の申し入れをお願いしよう。
例えイラルドを慕っていても構わない。もう一度だけ顔を合わせて話がしたい、と請おう。

まだ、諦めるには早いだろうとクライヴは自分で自分を励ましながら伯爵からの手紙が届くのを今か今かと待ちわびていた。




翌日。
クライヴの元へと待望の手紙が届いた。

「ティアーリア⋯⋯っ、」

急ぎクライヴはその手紙の封を開けると、伯爵からの手紙を取り出す。
手紙に記載されている文章を目で追うと、クライヴは一抹の希望が残された事に目を輝かせる。

「ティアーリアが誤解しているかもしれない⋯⋯!」

伯爵からの手紙には、何故か自分には他の女性を想っているとティアーリアが思っている事、そしてその事から今回の顔合わせを断るという結論に至った事が書かれていて、一度ちゃんと話し合いをすべきである、と書かれていた。

「ああ、良かった⋯⋯!本当に良かった⋯⋯!」

これでもう一度ティアーリアと会う機会が作られる、とクライヴは喜色に満ちた声音を上げる。
相手方のクランディア伯爵家から面会を許可する旨の手紙が送られてきた。
クライヴは急ぎクランディア伯爵家へと面会を希望する旨の手紙を認めると使用人へ伯爵家に急ぎ届けるように伝え、手紙を持たせた。

ティアーリアと会ったら、その時には自分はティアーリアが好きなんだと、子供の頃から探していた女性は君なんだと伝えよう。
それでも──、それでも自分の侍従が好きだと言うのならば仕方ない。
ティアーリアを説得して、もう一度チャンスを貰おう。再度の顔合わせは断られるかもしれないが自分を知ってもらって、最初は友人からでもいい。それでも、自分の事を意識して貰えるように友人として今度は会えるようにお願いしてもらおう。

クライヴはそわそわと落ち着かない気持ちで日々を過ごし、クランディア伯爵家からの返答を待った。




クライヴが面会の申し入れを行ってから5日後。
クランディア伯爵家から了承の返事が届いた。
向こうから定時された候補日は3日間あり、クライヴは自分の予定を確認しつつ、仕事の入っていない2つ目の日にちを記載して手紙を送った。

もうすぐ狩猟祭が始まってしまう。
狩猟祭の準備が始まってしまっては中々時間が取れなくなってしまう、と危惧したクライヴは狩猟祭が始まる前までに何とかティアーリアとやり直したい、と考えたのであった。
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