13 / 39
第十三話
しおりを挟む散々自棄酒を煽り、無茶な酔い方をして寝てしまったクライヴは夜中に自室のテーブルで目を覚ました。
ギシギシと軋む体に、ガンガンと痛む頭に顔を顰める。
「──くそっ、みっともない······」
酷く痛む頭と胸に広がる不快感に、テーブルに置いてあった水差しからグラスに水を注ぎ勢いよく呷る。
昨夜、自室でイラルドと話終わった後に酒を飲み始めて。
それから記憶がない。
「ティアーリアが······例えイラルドを慕っていても······また俺を好きになって貰えばいいんだ······」
よたよたとソファから腰を上げベッドへとのろのろ移動する。
首元を緩め、ベッドへと突っ伏すと枕をぎゅう、と抱き締めて唸る。
「伯爵から手紙が届いたら······、もう一度······」
そこまで呻いて、クライヴは再度寝息を立てて眠りに落ちた。
もう、自分はティアーリアを諦める事なんて出来ない。
胸を焦がすほどの執愛を、ティアーリアを渇望して止まないこの渇きを癒してくれるのはティアーリア本人だけだ。
翌日、クライヴは酷い頭痛に苛まれ目を覚ます。
ガンガンと痛む自分の頭に低く唸り毒づいた。
記憶を無くしてしまう程酒に酔ってしまう自分が情けなく、こんな事だから自分はティアーリアに愛想を尽かれたのだ、とどんどんと悪い方向に気持ちが落ち込んでいく。
本当にもうティアーリアは自分の事等どうでもよく思っていて、二度と顔を合わせたくない、と思われていたらどうしよう、と自分の考えに泣きそうになる。
こちらからティアーリアに連絡を取ることが出来ない為、頼みの綱は彼女の父親である伯爵のみだ。
伯爵から手紙が届いたらもう一度面会の申し入れをお願いしよう。
例えイラルドを慕っていても構わない。もう一度だけ顔を合わせて話がしたい、と請おう。
まだ、諦めるには早いだろうとクライヴは自分で自分を励ましながら伯爵からの手紙が届くのを今か今かと待ちわびていた。
翌日。
クライヴの元へと待望の手紙が届いた。
「ティアーリア⋯⋯っ、」
急ぎクライヴはその手紙の封を開けると、伯爵からの手紙を取り出す。
手紙に記載されている文章を目で追うと、クライヴは一抹の希望が残された事に目を輝かせる。
「ティアーリアが誤解しているかもしれない⋯⋯!」
伯爵からの手紙には、何故か自分には他の女性を想っているとティアーリアが思っている事、そしてその事から今回の顔合わせを断るという結論に至った事が書かれていて、一度ちゃんと話し合いをすべきである、と書かれていた。
「ああ、良かった⋯⋯!本当に良かった⋯⋯!」
これでもう一度ティアーリアと会う機会が作られる、とクライヴは喜色に満ちた声音を上げる。
相手方のクランディア伯爵家から面会を許可する旨の手紙が送られてきた。
クライヴは急ぎクランディア伯爵家へと面会を希望する旨の手紙を認めると使用人へ伯爵家に急ぎ届けるように伝え、手紙を持たせた。
ティアーリアと会ったら、その時には自分はティアーリアが好きなんだと、子供の頃から探していた女性は君なんだと伝えよう。
それでも──、それでも自分の侍従が好きだと言うのならば仕方ない。
ティアーリアを説得して、もう一度チャンスを貰おう。再度の顔合わせは断られるかもしれないが自分を知ってもらって、最初は友人からでもいい。それでも、自分の事を意識して貰えるように友人として今度は会えるようにお願いしてもらおう。
クライヴはそわそわと落ち着かない気持ちで日々を過ごし、クランディア伯爵家からの返答を待った。
クライヴが面会の申し入れを行ってから5日後。
クランディア伯爵家から了承の返事が届いた。
向こうから定時された候補日は3日間あり、クライヴは自分の予定を確認しつつ、仕事の入っていない2つ目の日にちを記載して手紙を送った。
もうすぐ狩猟祭が始まってしまう。
狩猟祭の準備が始まってしまっては中々時間が取れなくなってしまう、と危惧したクライヴは狩猟祭が始まる前までに何とかティアーリアとやり直したい、と考えたのであった。
73
お気に入りに追加
2,724
あなたにおすすめの小説
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?
柚木ゆず
恋愛
こんなことがあるなんて、予想外でした。
わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。
元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?
あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる