その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、襲撃する6

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 ――そして今に至る。
 クゥの自己紹介に周囲の人間たちは騒然となった。

「勇者? あの男が?」
「ふざけてんのか?」
「あれが聖剣?」
「いや、偽物かもしれないぞ」

 そのざわめきを一刀両断する叫びが響いた。

「ばかやろう!! 俺が偽物なわけないだろうが!!」

 一瞬、大広間はシンっと静まる。
 ハナンもどこから声がしたのかわからずキョロキョロする。

「な、なんだ今のは!?」
「誰が言ったんだ!?」

 戸惑う者たちに空気を読まない叫びが再び発せられた。

「俺だよ、俺!! 聖剣シャルルだ!!」

 ハナンは顎が落ちそうになる。その声はクゥが持っている剣から発せられていたからだ。

「け、剣が喋っただと……!?」
「そういえば、聖剣は話すと聞いたことがある」
「ってことは本物!?」
「いや、聖剣が自分のことを聖剣というか!?」

 広間の人間たちも騒めく。

「あほ!! 俺が嘘つくわけないだろ!!
 俺は聖剣で、こいつは俺が選んだ勇者だ!!」

 その言葉に人間たちはさらに騒ぎ出す。

「あの男が勇者だって!?」
「どう見ても強くなさそうだぞ!?」
「でもしゃべる剣なんて聖剣くらいしかないんだろ!?」
「じゃあ、本物の勇者なのか!?」

 ダンッという鋭い音が広間に響き、騒々しい衆目を鎮めた。
 音の発した方を見ると、国王が不機嫌な顔で勇者を睨んでいる。

「勇者よ、何用で参った?」

 その言葉に、なぜかクゥは一瞬だけ苦笑を浮かべた。
 だがすぐに顔を真剣なものにする。

「君が僕を殺そうとしたって聞いたから、文句を言いに来たんだよ」

 再び周囲は騒めくが、すぐに国王がダンッと足で地面を叩いて黙らせる。

「ほう、それは知らんな。何かの間違いではないか?」

 しらばっくれる国王にクゥは軽く眉をひそめる。

「別には責めるつもりはないよ。でも、これだけは言わせて欲しい……」

 そしてクゥはスっと息を吸ってから、国王を鋭く睨んだ。

「せめて嫌がっている者に殺させるんじゃなくて、ちゃんと僕に殺意を持っている奴に殺しに行かせろ!!」

 ハナンは脱力して地面に突っ伏した。

「……おーい、大丈夫か?」

 マイクが心配してハナンに声をかける。

「大、丈夫じゃないわよ!! なんで怒るところがそこなわけ!? あいつ頭おかしいんじゃないの!?」
「それは俺も思う」

 マイクは深く頷いてから、首を傾げて考える。

「うーん、あいつ、立場が立場だったから、自分は命を狙われるのが当然って考えているところがあるからなぁ」
「は!? どういう立場よ!?」

 ハナンは唖然とする。

「正直、俺なら絶対やりたくない立場だな……あいつ、よくやっているよ」

 遠い目をするマイクを見て、ハナンはそれ以上追求するのをやめた。

 再び広間に目をやると、目を点にしたりポカンと口を開けている人間が大勢いた。
 国王も目を見開いてあんぐりと口を開けている。
 一方、クゥは自分の言っていることのどこがおかしかったのかよくわかっていないようで、しきりに首を傾げている。

「……それで、自分に殺意を持っている者なら、お前は大人しく殺されるのか?」

 何とか驚きから立ち直った国王がクゥに聞いた。

「まさか。返り討ちにするよ」

 「何を当たり前のことを?」という顔でクゥは答えるが、周囲の者たちは納得していない。

「それはともかく僕を殺すなら、暗殺じゃなくて、今正々堂々と挑んで来なよ。ちょうど、たくさん集まって来たし」

 騒ぎを聞きつけて集まる兵士たちを見て、クゥが挑発する。
 国王は目を見開く。

「自ら殺されに来たのか?」
「もちろん、全員返り討ちにするけどね。コソコソしたのは好きじゃないんだ」

 クゥは口の端を上げて、力強い笑みを浮かべる。
 そんなクゥを国王は声高に笑った。

「おもしろい!! それではお前が勇者にふさわしいか試させてもらおう!! 行け!!」

 国王の命令をうけて、兵士たちはクゥに襲いかかって来た。
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