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魔王の友人8
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「クリス様が、魔王……?」
メイは目を見開いてポカンとする。
「正しくは国王なんだけどね。
ヒオン国国王クリス・リデル・ヒオン……それが僕なんだ。信じられないかもしれないけど……」
瞬きを忘れて驚くメイに、この後どう説明すればいいか、クリスは頭を悩ませる。
そんなクリスの心配を他所に、メイは柔らかく微笑んだ。
「信じます」
今度はクリスがポカンとする。
「え、信じるのかい?」
メイは力強く頷いた。
「はい、クリス様がこのようなことで嘘をつかれるとは思いませんから」
クリスはその答えを聞いて心の中の凝り固まっていたものが融けていくのを感じた。自分で思っていたよりも、隠していることに罪悪感を感じていたらしい。
「信じてくれてありがとう。それと、今まで黙ってて、ごめん」
「いえ……ヨハンさんたちの手前、言いにくいことでしょうから」
謝るクリスにメイは苦笑する。
そしてふと、真顔になって首を傾げた。
「そういえば、なぜ、ヨハンさんたちはクリス様を元の世界の魔王と気が付かないのでしょう?」
至極当然の疑問なので、今度はクリスが苦笑する。
「仕事中は仮面を被って口調も変えているから、わからなくても無理はないと思うよ」
「そうなのですか」
メイは納得して頷くが、また首を傾げる。
「口調を変えるのはともかく、なぜ仮面をしているのですか?」
これも当然の疑問だが、クリスは凍りついた。
「ええっと、それは……」
仮面を付けている理由に、国王の一族はなぜか代々童顔かつ小柄なため、威厳を少しでも上げるためにしているというものと、市井に遊びに行く時に顔を知られていると面倒なことになるというのがある。
どちらにしろ大した理由じゃない上に、残念ながらあまり格好良くない。
好きな相手に格好付けたいクリスは、答えるべきか少し悩む。
そのクリスの様子を見て、メイがハッとする。
「すいません、言いづらいことでししたら、答えなくて大丈夫です」
「あ、ああ、うん……」
バツの悪そうな顔をするメイに、クリスは曖昧に頷いた。
思わずメイの勘違いに乗ってしまい、また性懲りも無く隠し事をしてしまったことに罪悪感を覚えた。
まぁ、それについては後々教えればいいかと、自分を納得させてから、クリスは口を開く。
「メイ、このことなんだけど、皆には黙っていてくれないかい?」
「皆って……サーニャさんたちにもですか?」
目をぱちくりさせるメイにクリスは頷く。
「うん、この世界では僕の身分なんて関係ないし、いつも通り過ごしたいからね」
すると、メイはなぜか目を輝かせた。
「それでは、2人だけの秘密ってことですね!」
「マイクとジョセフも知っているよ」
2人だけ知っている訳ではないのでクリスが訂正すると、メイはプクッと頬を膨らませる。
「その2人は元々知っていたので数には入れません! なのでこれは2人だけの秘密なのです!」
「……えーっと、そうなのかい?」
「そうなのです!」
「……わかったよ」
クリスがメイの勢いに押されて肯定すると、メイが嬉しそうに笑った。
正直、クリスにはその理屈は良くわからない。
だが、メイが喜ぶならそれでもいいかと、クリスは苦笑するのだった。
メイは目を見開いてポカンとする。
「正しくは国王なんだけどね。
ヒオン国国王クリス・リデル・ヒオン……それが僕なんだ。信じられないかもしれないけど……」
瞬きを忘れて驚くメイに、この後どう説明すればいいか、クリスは頭を悩ませる。
そんなクリスの心配を他所に、メイは柔らかく微笑んだ。
「信じます」
今度はクリスがポカンとする。
「え、信じるのかい?」
メイは力強く頷いた。
「はい、クリス様がこのようなことで嘘をつかれるとは思いませんから」
クリスはその答えを聞いて心の中の凝り固まっていたものが融けていくのを感じた。自分で思っていたよりも、隠していることに罪悪感を感じていたらしい。
「信じてくれてありがとう。それと、今まで黙ってて、ごめん」
「いえ……ヨハンさんたちの手前、言いにくいことでしょうから」
謝るクリスにメイは苦笑する。
そしてふと、真顔になって首を傾げた。
「そういえば、なぜ、ヨハンさんたちはクリス様を元の世界の魔王と気が付かないのでしょう?」
至極当然の疑問なので、今度はクリスが苦笑する。
「仕事中は仮面を被って口調も変えているから、わからなくても無理はないと思うよ」
「そうなのですか」
メイは納得して頷くが、また首を傾げる。
「口調を変えるのはともかく、なぜ仮面をしているのですか?」
これも当然の疑問だが、クリスは凍りついた。
「ええっと、それは……」
仮面を付けている理由に、国王の一族はなぜか代々童顔かつ小柄なため、威厳を少しでも上げるためにしているというものと、市井に遊びに行く時に顔を知られていると面倒なことになるというのがある。
どちらにしろ大した理由じゃない上に、残念ながらあまり格好良くない。
好きな相手に格好付けたいクリスは、答えるべきか少し悩む。
そのクリスの様子を見て、メイがハッとする。
「すいません、言いづらいことでししたら、答えなくて大丈夫です」
「あ、ああ、うん……」
バツの悪そうな顔をするメイに、クリスは曖昧に頷いた。
思わずメイの勘違いに乗ってしまい、また性懲りも無く隠し事をしてしまったことに罪悪感を覚えた。
まぁ、それについては後々教えればいいかと、自分を納得させてから、クリスは口を開く。
「メイ、このことなんだけど、皆には黙っていてくれないかい?」
「皆って……サーニャさんたちにもですか?」
目をぱちくりさせるメイにクリスは頷く。
「うん、この世界では僕の身分なんて関係ないし、いつも通り過ごしたいからね」
すると、メイはなぜか目を輝かせた。
「それでは、2人だけの秘密ってことですね!」
「マイクとジョセフも知っているよ」
2人だけ知っている訳ではないのでクリスが訂正すると、メイはプクッと頬を膨らませる。
「その2人は元々知っていたので数には入れません! なのでこれは2人だけの秘密なのです!」
「……えーっと、そうなのかい?」
「そうなのです!」
「……わかったよ」
クリスがメイの勢いに押されて肯定すると、メイが嬉しそうに笑った。
正直、クリスにはその理屈は良くわからない。
だが、メイが喜ぶならそれでもいいかと、クリスは苦笑するのだった。
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