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魔王の友人6
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「うん、そうする……でも、マイクが、僕がメイを好いていることを反対しないのは意外だね」
クリスはマイクをまじまじと見る。
マイクは気まずそうに頬を搔く。
「確かに相手が人間だから、何も思わないわけじゃない。けど、こういうのは下手に反対しない方がいいというか……邪魔すると危ないというか……」
「ああ、そういうこと」
マイクが何を言いたいのか、察したクリスは納得する。
魔族は「運命の相手」に憧れる傾向が強い。そしてひとたび「運命の相手」であろう者と出会ったら、その相手に激しく執着するのだ。
これが片思いだったら「自分の勘違いだった」ということにして諦めることも可能である。だが、両思いと判明するとその勢いは止まらない。邪魔する者は徹底的に蹴散らし、どんな手段を使っても相手と添い遂げようとするのだ。
そのため、ヒオン国には「魔族の恋路、邪魔するべからず」という格言がある。そのくらい危険なのだ。
「それに、あの子にはなんとなく勝てそうにない気がするんだ」
マイクが思い出していたのは、数日前のクリスに説教するメイの姿だ。その姿を思い浮かべると未だに鳥肌が立つ。
今まで色んな人間を見てきたマイクだが、人間を恐れたことなどなかった。国を代表する剣士も、偉大らしい魔法使いも、怖いと感じたことはなかった。
そんなマイクが、唯一、恐ろしいと感じたのがメイである。そんな少女に逆らう気など起きるはずがなかった。
「メイは強いからね」
マイクの心情を知る由もなく、好きな相手を褒められたと思ったクリスはニコニコと微笑む。
「……そうだな」
苦笑いしながらマイクは頷いた。
たぶん、そんな強い少女だからこそ、クリスを射止めることができたのだろう。
「ああ、それと、もう1つ聞いていいか?」
「なんだい?」
立ち上がりながらクリスは首を傾げる。
「元の世界に戻る手段ってなんだ?」
マイクの質問を聞いた途端に、クリスは渋い顔をする。
「うーん、やっぱり気になるよね」
クリスは腕を組んで悩み出した。
「言いにくい方法なのか?」
マイクの眉間に皺が寄る。
「そういうわけじゃないけど、一応、国家機密だから公言するのはちょっと……」
「ああ、そうなのか」
マイクは納得して頷く。クリスの立場なら確かに国家機密を知っていても不思議ではない。
「けど帰る時、わかることなんじゃないか?」
「それもそうなんだよね」
うーん、と唸りながらしばらく悩んでいたクリスだが、腕組を解いて覚悟を決めたようにマイクをまっすぐ見る。
「うん、マイクには教えるよ。けど、他の皆には言わないでね」
「わかった」
マイクが頷くと、クリスは帰る方法について話す。
すべて話し終わると、マイクは大きく目を見開いた。
「あれにそんな能力があったのか!?」
「うん。他にも色々あるけど、――の能力は国家機密だから話さないよ」
マイクが驚くのも無理はないと思いながら、クリスは釘を刺す。クリスが帰る方法には、ヒオン国のほとんどの国民に知られているある物を使う。マイクももちろんその物を知ってはいたが、公表されている能力以外は国家機密であるため、知られていないのだ。
「一応、聞くけど、本当にあれで帰れるんだよな?」
「うん。この世界に来た時に、繋がりが切れてないか確認したから大丈夫だよ」
クリスと――は離れていても、常に魔力で繋がっている状態なのだ。その繋がりが切れてないなら、帰れる可能性が高い。
何か気になるのか、マイクは少し考えてから、クリスに尋ねた。
「……なぁ、その方法なら、帰る時に国王だってバレるんじゃないか?」
「…………あ」
「また『あ』かよ!」
全くその通りだったため、唖然とするクリスにマイクは叫ぶ。
「え、えっと、なんとか誤魔化すよ」
「できるのかよ」
「……なんとかするよ」
目を盛大に逸らしながら、クリスはそれだけ強固に言った。
無理そうだな、と思いながらも、この意外と頑固な友人は意見を変えそうにないため、マイクは黙っているのだった。
クリスはマイクをまじまじと見る。
マイクは気まずそうに頬を搔く。
「確かに相手が人間だから、何も思わないわけじゃない。けど、こういうのは下手に反対しない方がいいというか……邪魔すると危ないというか……」
「ああ、そういうこと」
マイクが何を言いたいのか、察したクリスは納得する。
魔族は「運命の相手」に憧れる傾向が強い。そしてひとたび「運命の相手」であろう者と出会ったら、その相手に激しく執着するのだ。
これが片思いだったら「自分の勘違いだった」ということにして諦めることも可能である。だが、両思いと判明するとその勢いは止まらない。邪魔する者は徹底的に蹴散らし、どんな手段を使っても相手と添い遂げようとするのだ。
そのため、ヒオン国には「魔族の恋路、邪魔するべからず」という格言がある。そのくらい危険なのだ。
「それに、あの子にはなんとなく勝てそうにない気がするんだ」
マイクが思い出していたのは、数日前のクリスに説教するメイの姿だ。その姿を思い浮かべると未だに鳥肌が立つ。
今まで色んな人間を見てきたマイクだが、人間を恐れたことなどなかった。国を代表する剣士も、偉大らしい魔法使いも、怖いと感じたことはなかった。
そんなマイクが、唯一、恐ろしいと感じたのがメイである。そんな少女に逆らう気など起きるはずがなかった。
「メイは強いからね」
マイクの心情を知る由もなく、好きな相手を褒められたと思ったクリスはニコニコと微笑む。
「……そうだな」
苦笑いしながらマイクは頷いた。
たぶん、そんな強い少女だからこそ、クリスを射止めることができたのだろう。
「ああ、それと、もう1つ聞いていいか?」
「なんだい?」
立ち上がりながらクリスは首を傾げる。
「元の世界に戻る手段ってなんだ?」
マイクの質問を聞いた途端に、クリスは渋い顔をする。
「うーん、やっぱり気になるよね」
クリスは腕を組んで悩み出した。
「言いにくい方法なのか?」
マイクの眉間に皺が寄る。
「そういうわけじゃないけど、一応、国家機密だから公言するのはちょっと……」
「ああ、そうなのか」
マイクは納得して頷く。クリスの立場なら確かに国家機密を知っていても不思議ではない。
「けど帰る時、わかることなんじゃないか?」
「それもそうなんだよね」
うーん、と唸りながらしばらく悩んでいたクリスだが、腕組を解いて覚悟を決めたようにマイクをまっすぐ見る。
「うん、マイクには教えるよ。けど、他の皆には言わないでね」
「わかった」
マイクが頷くと、クリスは帰る方法について話す。
すべて話し終わると、マイクは大きく目を見開いた。
「あれにそんな能力があったのか!?」
「うん。他にも色々あるけど、――の能力は国家機密だから話さないよ」
マイクが驚くのも無理はないと思いながら、クリスは釘を刺す。クリスが帰る方法には、ヒオン国のほとんどの国民に知られているある物を使う。マイクももちろんその物を知ってはいたが、公表されている能力以外は国家機密であるため、知られていないのだ。
「一応、聞くけど、本当にあれで帰れるんだよな?」
「うん。この世界に来た時に、繋がりが切れてないか確認したから大丈夫だよ」
クリスと――は離れていても、常に魔力で繋がっている状態なのだ。その繋がりが切れてないなら、帰れる可能性が高い。
何か気になるのか、マイクは少し考えてから、クリスに尋ねた。
「……なぁ、その方法なら、帰る時に国王だってバレるんじゃないか?」
「…………あ」
「また『あ』かよ!」
全くその通りだったため、唖然とするクリスにマイクは叫ぶ。
「え、えっと、なんとか誤魔化すよ」
「できるのかよ」
「……なんとかするよ」
目を盛大に逸らしながら、クリスはそれだけ強固に言った。
無理そうだな、と思いながらも、この意外と頑固な友人は意見を変えそうにないため、マイクは黙っているのだった。
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