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魔王の友人4
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――また、マイクがクリスと共に行くようになってから数日経った頃。
その日の夜にマイクはクリスを尋ねた。
日がすでに沈んでいて、皆各自好きに過ごしている。そんな中、クリスは木の根元に寄りかかって寝ていた。
「やっぱり寝てるか」
人間の国を訪ねて知ったことだが、ヒオン国には時計がない。一応、朝と昼と夜と夜中にそれぞれ1回鐘が鳴るがそれだけだ。時計を作る技術がないというわけではないが、なぜか存在しないのだ。
そんな国の昼に活動する者たちは、日が昇る少し前に起き、日が沈む頃に就寝する生活を送っている。
ちなみに夜は、不死者や陽の光に弱い魔物などが生活していて、意外と賑わっている。夜しか営業しない店も多い。
マイクも以前はクリスのように早く寝ていたが、人間の国を訪れたり異世界で生活しているうちに、夜も遅くまで起きているようになった。
それはともかく、今はクリスと2人で話したいため起こすことにする。
「おい、起きろ」
寝る時に築いている障壁の外から声をかける。だが、クリスはピクリとも動かない。
中に入れないかと障壁に触れるが弾かれてしまう。よほど睡眠の邪魔はされたくないようだ。
「……仕方ないか」
マイクはため息をついて強硬手段に出ることにする。手に魔力を込めて障壁に向かって放つ。
ドーンと大きな音が辺りに響いた。
クリスの眉がピクリと反応する。
効果があったため、マイクは続けて魔力の球を障壁にぶつけて音を出す。
ピクピクとクリスの眉が苛立ったように動く。
14回目でようやくクリスの目がうっすら開けられた。
「よし、起きた……」
寝ぼけ眼のクリスに睨まれたマイクの顔が凍りつく。
「うるさい」
今まで聞いたことのないような冷酷な声をかけられて、マイクの背筋に悪寒が走る。
寝ぼけたままのクリスの手に魔力が収束される。
そしてそれがマイクに向かって放たれる。
マイクは間一髪で何とか本能的に避けた。
恐る恐る振り向くと、後ろの木に大きな窪みが出来ていた。
「……危ねぇ!?」
制御具には意識がはっきりしないで魔法を使った際に威力を抑える効果がある。そのおかげでこれで済んでいるが、それでもうっかり当たったらどうなるかを想像したマイクは冷や汗をかく。
再びクリスに目を向けると、また夢の世界へ旅立とうと瞼を閉じかけていた。
「こら、寝るなー!」
……その後、なんとかクリスを起こすまでに、マイクは何度も襲撃を受けた。
後に「あれほど命の危険を感じたことはなかった」と語ったそうだ。
その日の夜にマイクはクリスを尋ねた。
日がすでに沈んでいて、皆各自好きに過ごしている。そんな中、クリスは木の根元に寄りかかって寝ていた。
「やっぱり寝てるか」
人間の国を訪ねて知ったことだが、ヒオン国には時計がない。一応、朝と昼と夜と夜中にそれぞれ1回鐘が鳴るがそれだけだ。時計を作る技術がないというわけではないが、なぜか存在しないのだ。
そんな国の昼に活動する者たちは、日が昇る少し前に起き、日が沈む頃に就寝する生活を送っている。
ちなみに夜は、不死者や陽の光に弱い魔物などが生活していて、意外と賑わっている。夜しか営業しない店も多い。
マイクも以前はクリスのように早く寝ていたが、人間の国を訪れたり異世界で生活しているうちに、夜も遅くまで起きているようになった。
それはともかく、今はクリスと2人で話したいため起こすことにする。
「おい、起きろ」
寝る時に築いている障壁の外から声をかける。だが、クリスはピクリとも動かない。
中に入れないかと障壁に触れるが弾かれてしまう。よほど睡眠の邪魔はされたくないようだ。
「……仕方ないか」
マイクはため息をついて強硬手段に出ることにする。手に魔力を込めて障壁に向かって放つ。
ドーンと大きな音が辺りに響いた。
クリスの眉がピクリと反応する。
効果があったため、マイクは続けて魔力の球を障壁にぶつけて音を出す。
ピクピクとクリスの眉が苛立ったように動く。
14回目でようやくクリスの目がうっすら開けられた。
「よし、起きた……」
寝ぼけ眼のクリスに睨まれたマイクの顔が凍りつく。
「うるさい」
今まで聞いたことのないような冷酷な声をかけられて、マイクの背筋に悪寒が走る。
寝ぼけたままのクリスの手に魔力が収束される。
そしてそれがマイクに向かって放たれる。
マイクは間一髪で何とか本能的に避けた。
恐る恐る振り向くと、後ろの木に大きな窪みが出来ていた。
「……危ねぇ!?」
制御具には意識がはっきりしないで魔法を使った際に威力を抑える効果がある。そのおかげでこれで済んでいるが、それでもうっかり当たったらどうなるかを想像したマイクは冷や汗をかく。
再びクリスに目を向けると、また夢の世界へ旅立とうと瞼を閉じかけていた。
「こら、寝るなー!」
……その後、なんとかクリスを起こすまでに、マイクは何度も襲撃を受けた。
後に「あれほど命の危険を感じたことはなかった」と語ったそうだ。
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