165 / 179
幕間 魔王の友人2
しおりを挟む
「何馬鹿なことを言っているんだ、あいつ」
「本当にそうよね」
サーニャも同意して頷く。
「というか、そういうことなら、お前はクゥに味方してここに加わった訳じゃないのか?」
「ああ。俺が人間の村を燃やしていたら、あいつが怒って拘束されたんだ。
……ん? そういえば、あいつ、なんで俺を連れて来ているんだ?」
バルトは訳がわからず首を傾げる。
「わからないのにクゥについて行ったのか?」
さすがにマイクが呆れると、バルトはきまり悪そうに頬を掻く。
「魔王からの命令は勇者を探して殺して来いだったから、ちょうど良かったんだよ」
「……確かにちょうどいいな」
バルトがついて来た理由はわかった。だが、クリスがなぜバルトを自分の命をだしにしてまで連れているのかわからない。
それは後で直接聞くことにして、マイクはふと、気になったことを聞く。
「お前、なんでいつも素手でクゥに襲いかかっているんだ?」
通常、魔族は基本的に魔法で戦う。身体強化によって肉弾戦を行う者もいるが、普段から格闘などの鍛錬をしている者はほとんどいないため少数派だ。
特にこの世界の魔族は魔法に頼りきっている者がほとんどで、わざわざ身体強化魔法を使う者はほぼいない。ごくたまに剣を振るう変わり者がいる程度である。
マイクの疑問に、バルトは顔を盛大に顔をしかめる。そして袖を捲りあげてマイクに手首の腕輪を見せる。
「こいつのせいで魔法が使えないんだよ!」
「……ああ、拘魔具か」
マイクは納得する。拘魔具は魔法を使えなくするための魔道具だ。確か、付けた者しか外せない機能もあった気がする。
「おまけにこれを外せと言ったら、今度は魔力を吸い取るやつを付けろと言いやがったんだぞ!」
「……それってこれか?」
カンカンに怒るバルトに、マイクは自分が付けている制御具を見せた。
「そうだよ、それ……ってお前、付けているのか!?」
バルトがマイクの制御具を指指して目をむく。
「俺のいた国では、魔族はこれを付けることが義務付けられていたんだよ」
マイクは簡単に説明する。魔力の強さや制御力によって数や種類は変わるが、通常ヒオン国では、魔族は1つか2つは付けている。
「これって魔力を吸い取るんだろ? 大丈夫なのか?」
「吸い取るって言っても大した量じゃないし、むしろコントロールしやすくなるから便利だぞ」
1度試しに外して暴発させてしまったことのあるマイクははっきり言った。
「ふーん、そうなのか」
興味深そうにバルトは制御具をまじまじと見る。
「けど、確かにこの世界の魔族はしない方がいいかもしれないな」
マイクは腕を下ろしながらポツリと呟く。
「どういう意味だ、それ?」
意外と耳ざといバルトが顔をしかめた。
マイクは軽く息を吐く。
「ここの世界の魔族は、たぶん、俺がいた世界の魔族より全体的に魔力が低いみたいなんだ。だから、俺のいた世界の魔族の基準で作られたこの制御具はきついかもしれない」
頭を掻きながらきまり悪そうにマイクは説明する。
「は? 同じ魔族なのに違うのか?」
「そうだ。例えば俺や俺のいた世界の魔族は1000年生きる上に成熟するまで100年近くかかるけど、ここの魔族はあっという間に成長する上に500年しか生きないだろ? オークだってこちらの世界と俺たちのいた世界の奴とは全然違うし、同じ種族でも違う奴らが多いんだ。
それに兵卒でもなければ、特に鍛錬しているわけでもない俺が、最も強い魔王の配下ってなっている時点で色々おかしいんだよ」
「え? お前、元の世界じゃ弱いのか?」
「弱いってわけじゃないけど、ごく普通の一般魔族であることは確かだな」
余程意外だったのか、バルトの口は顎が落ちるのではないかというほど大きく開いた。
「けど、俺のいた世界の魔族よりコントロールが良かったり暴走しにくかったりするから、ここの魔族にはそもそも制御具は必要なさそうなんだよな。クゥは気づいてないかもしれないけどさ」
「そういえば、あいつは元の世界ではどうなんだ?」
ひょっとしたらクリスも、せいぜい並より上かもしれないと思ったバルトは聞く。
「クゥは元の世界でも別格だったよ。ほとんどの魔族はあいつには敵わないな」
キッパリと断言したマイクに、再びバルトの顎は落ちかけるのだった。
「本当にそうよね」
サーニャも同意して頷く。
「というか、そういうことなら、お前はクゥに味方してここに加わった訳じゃないのか?」
「ああ。俺が人間の村を燃やしていたら、あいつが怒って拘束されたんだ。
……ん? そういえば、あいつ、なんで俺を連れて来ているんだ?」
バルトは訳がわからず首を傾げる。
「わからないのにクゥについて行ったのか?」
さすがにマイクが呆れると、バルトはきまり悪そうに頬を掻く。
「魔王からの命令は勇者を探して殺して来いだったから、ちょうど良かったんだよ」
「……確かにちょうどいいな」
バルトがついて来た理由はわかった。だが、クリスがなぜバルトを自分の命をだしにしてまで連れているのかわからない。
それは後で直接聞くことにして、マイクはふと、気になったことを聞く。
「お前、なんでいつも素手でクゥに襲いかかっているんだ?」
通常、魔族は基本的に魔法で戦う。身体強化によって肉弾戦を行う者もいるが、普段から格闘などの鍛錬をしている者はほとんどいないため少数派だ。
特にこの世界の魔族は魔法に頼りきっている者がほとんどで、わざわざ身体強化魔法を使う者はほぼいない。ごくたまに剣を振るう変わり者がいる程度である。
マイクの疑問に、バルトは顔を盛大に顔をしかめる。そして袖を捲りあげてマイクに手首の腕輪を見せる。
「こいつのせいで魔法が使えないんだよ!」
「……ああ、拘魔具か」
マイクは納得する。拘魔具は魔法を使えなくするための魔道具だ。確か、付けた者しか外せない機能もあった気がする。
「おまけにこれを外せと言ったら、今度は魔力を吸い取るやつを付けろと言いやがったんだぞ!」
「……それってこれか?」
カンカンに怒るバルトに、マイクは自分が付けている制御具を見せた。
「そうだよ、それ……ってお前、付けているのか!?」
バルトがマイクの制御具を指指して目をむく。
「俺のいた国では、魔族はこれを付けることが義務付けられていたんだよ」
マイクは簡単に説明する。魔力の強さや制御力によって数や種類は変わるが、通常ヒオン国では、魔族は1つか2つは付けている。
「これって魔力を吸い取るんだろ? 大丈夫なのか?」
「吸い取るって言っても大した量じゃないし、むしろコントロールしやすくなるから便利だぞ」
1度試しに外して暴発させてしまったことのあるマイクははっきり言った。
「ふーん、そうなのか」
興味深そうにバルトは制御具をまじまじと見る。
「けど、確かにこの世界の魔族はしない方がいいかもしれないな」
マイクは腕を下ろしながらポツリと呟く。
「どういう意味だ、それ?」
意外と耳ざといバルトが顔をしかめた。
マイクは軽く息を吐く。
「ここの世界の魔族は、たぶん、俺がいた世界の魔族より全体的に魔力が低いみたいなんだ。だから、俺のいた世界の魔族の基準で作られたこの制御具はきついかもしれない」
頭を掻きながらきまり悪そうにマイクは説明する。
「は? 同じ魔族なのに違うのか?」
「そうだ。例えば俺や俺のいた世界の魔族は1000年生きる上に成熟するまで100年近くかかるけど、ここの魔族はあっという間に成長する上に500年しか生きないだろ? オークだってこちらの世界と俺たちのいた世界の奴とは全然違うし、同じ種族でも違う奴らが多いんだ。
それに兵卒でもなければ、特に鍛錬しているわけでもない俺が、最も強い魔王の配下ってなっている時点で色々おかしいんだよ」
「え? お前、元の世界じゃ弱いのか?」
「弱いってわけじゃないけど、ごく普通の一般魔族であることは確かだな」
余程意外だったのか、バルトの口は顎が落ちるのではないかというほど大きく開いた。
「けど、俺のいた世界の魔族よりコントロールが良かったり暴走しにくかったりするから、ここの魔族にはそもそも制御具は必要なさそうなんだよな。クゥは気づいてないかもしれないけどさ」
「そういえば、あいつは元の世界ではどうなんだ?」
ひょっとしたらクリスも、せいぜい並より上かもしれないと思ったバルトは聞く。
「クゥは元の世界でも別格だったよ。ほとんどの魔族はあいつには敵わないな」
キッパリと断言したマイクに、再びバルトの顎は落ちかけるのだった。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる