その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、喧嘩する15

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「えっ? あ、ああ、ごめん……」

 クリスは頬を少し赤らめながら、慌ててメイを解放する。

「い、いえ、嫌ではありませんでしたから……」

 それどころかかなり嬉しかったのだが、さすがに羞恥心に限界がきたため、離してもらったのだ。
 顔を赤くしてもだもだする2人に、マイクは呆れる。
 その視線に気づいたメイが軽く咳払いをした。

「それでクリス様、怪我は大丈夫でしたか?」

 メイはずっと気になっていたことを聞く。今までタイミングを逃していたのだ。

「うん、もう、すっかり良くなったよ」

 クリスは笑顔で答えた。

「へぇ、簡単には治せないような怪我を負わせたつもりだったんだけどな……」

 マイクが感心する。クリスが受けたのは炎の刃だ。火傷というのは回復魔法では簡単には治らないため、焼けた部分を削る必要がある。
 やっぱりナイフも使い慣れているのかと感心したマイクの耳に、とんでもない発言が飛び込んできた。

「焼けた部分は引きちぎったから、すぐに治ったよ」

 メイとマイク、2人の顔が同時に硬直した。

「え、えっと、ナイフとかで削ったんじゃないのか?」
「ナイフを出すのが面倒だったし、どうせ回復するならいいかなって思ってね」

 クリスはニコニコと笑っている。
 マイクが何気なく周囲を見渡すと、ちぎったものらしい肉片が落ちていて、その前近くに顔色の悪い魔族の女がうずくまっていた。口を押さえる魔族の女の背中を、オークがさすっている。

「……なんか、内蔵みたいなのも混じってないか?」
「うっかりちぎっちゃってね。でも、ちゃんと回復したよ!」

 にっこりとクリスは笑うが、笑い事ではない。

「……クリス様」

 その時の地の底から響くような声が、人間の少女から発せられたことに、マイクが気づくのに時間がかかった。
 背中が冷や汗でびっしょりと濡れる。

「ん? メイどうかしたのかい?」

 呑気に首を傾げるクリスに、少女はクワッと目を見開いて口を大きく開ける。

「何馬鹿なことをやっているんですかー!」



 ……その後、メイの苛烈な説教に手も足も出ないクリスを見て、マイクはこの少女と仲良くできるかはわからないが、怒らせることはしないでおこうと誓った。
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