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魔王、喧嘩する15
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「何か人間たちの方で魔族に対する対策をしているとかかな?」
クリスはメイに問いかけると、メイは首を傾げたままうーん、と唸った。
「対策自体はしていると思うのですが、それで魔族の侵略を防げるかというと、心もとないと思います」
確かに魔族と人間では力の差が大きく、魔族が本気で侵略をしたら、できる対策はほとんどないだろう。
「……いや、単純に魔王が国を滅ぼすような命令をしなくなったんだ」
クリスとメイが首を捻っていると、マイクが思いがけないことを言った。
「どういうことだい?」
目を丸くしてクリスがマイクに聞く。
「50年くらい前に国を滅ぼしてから、魔王は特に俺たちに積極的に命令しなくなったんだ。たまに、気まぐれみたいにこの村とか町を襲えって言うことはあったけど、前みたいな団結して行うような襲撃はやらなくなった」
さすがにこれは予想しなかったため、クリスとメイはポカンとする。
「……えっと、魔王がやる気を無くしたとか、すでに目的を達成したとかかい?」
「……正直、魔王が何を考えているか俺も、たぶん他の奴らも知らない。
ただ、どうやらほとんど毎日剣を振っているから、強くなろうとはしていると思う」
「へぇ、剣を……珍しいね」
クリスやヒオン国の騎兵たちは剣や武器の鍛錬をすることもある。だが、基本的に魔族は強力な魔力があるため、一般的に魔族は武器の鍛錬は行わないことが多い。
「あっ、言い忘れていたけど、魔王はたぶん、魔族ではないぞ」
「「え?」」
クリスとメイが同時に声を上げる。特にメイは大きく動揺した。
「ええっと、魔王って魔族から選ばれるのではないのですか?」
「それはわからないけど、あの魔力の感じは魔族とは違う気がするんだよなぁ。魔剣の魔力に紛れてわかりづらいけどさ」
眉をひそめながらマイクは頭を掻く。
「まぁ、魔族の僕が聖剣に選ばれることがあるくらいだからね。魔族じゃない魔王がいてもおかしくないかもね」
「いや、勇者も魔王も種族は関係ないぞ?」
クリスが苦笑してシャルルを持ち上げると、シャルルが不満そうな声で反論した。
「えっ、そうなのか!?」
シャルルの発言に驚きの声を上げたのはマイクだった。
「ああ。勇者も魔王も俺やアンディが心のあり方を見て、気に入った奴を選んでいるんだ。そこに種族は関係ないな」
「アンディって魔剣かい?」
初めて聞く名があったため、クリスが聞く。
「そうだ。同じ神が作った剣なんだけど、なぜか俺とあまり気が合わないんだよなぁ」
不思議そうにシャルルは言うが、聖剣と魔剣という正反対の目的で作られた剣の気が合ったらおかしいと、その場にいた全員が思った。
「……で、種族が関係ないってどういうことなんだ?」
マイクがずれそうになっている話を戻した。
「さっき言ったままだぞ? あくまで大切なのは心のあり方で、種族では選んでないな」
「その割には、人間の勇者が多くないか?」
マイクはまだ納得してないようで、訝しげな顔をしている。
「そんなの、人間が1番多く俺を抜きに来たからだ。あれだけ来ていればふさわしい奴に当たるのも多いってもんだぞ」
呆れたように言うシャルルに、マイクはポカンとする。
「……聖剣は人間の味方じゃないのか?」
「いつ俺が人間の味方だって言ったんだ?
俺は世界の滅亡に抗うための剣だ。その世界には、人間だけじゃなくて魔族や他の種族も含まれているんだぞ?」
あまりに意外な話だったため、マイクの目と口が大きく開いた。
「あっ、ということは、魔剣が滅ぼす対象の中には魔族も含まれているのかい?」
「もちろん、そうだぞ」
クリスとシャルルのやり取りに、マイクはさらに顎が外れるのではないかと思うほど、口を大きく開く。
「なるほどね……」
クリスは逆に納得していた。魔王が魔族の配下を大事にしないのは、魔王にとって配下は守る存在ではないからだ。魔剣もおそらく、そういう者を選んでいるのだろう。
「……あの、クリス様……お話中のところ申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか?」
メイが顔を赤くしながら、おずおずと小声で言う。
「なんだい?」
首を傾げるクリスにメイは小さく叫んだ。
「そろそろ離してくれませんか!?」
クリスはずっと片手でメイを抱きしめていたままだった。
クリスはメイに問いかけると、メイは首を傾げたままうーん、と唸った。
「対策自体はしていると思うのですが、それで魔族の侵略を防げるかというと、心もとないと思います」
確かに魔族と人間では力の差が大きく、魔族が本気で侵略をしたら、できる対策はほとんどないだろう。
「……いや、単純に魔王が国を滅ぼすような命令をしなくなったんだ」
クリスとメイが首を捻っていると、マイクが思いがけないことを言った。
「どういうことだい?」
目を丸くしてクリスがマイクに聞く。
「50年くらい前に国を滅ぼしてから、魔王は特に俺たちに積極的に命令しなくなったんだ。たまに、気まぐれみたいにこの村とか町を襲えって言うことはあったけど、前みたいな団結して行うような襲撃はやらなくなった」
さすがにこれは予想しなかったため、クリスとメイはポカンとする。
「……えっと、魔王がやる気を無くしたとか、すでに目的を達成したとかかい?」
「……正直、魔王が何を考えているか俺も、たぶん他の奴らも知らない。
ただ、どうやらほとんど毎日剣を振っているから、強くなろうとはしていると思う」
「へぇ、剣を……珍しいね」
クリスやヒオン国の騎兵たちは剣や武器の鍛錬をすることもある。だが、基本的に魔族は強力な魔力があるため、一般的に魔族は武器の鍛錬は行わないことが多い。
「あっ、言い忘れていたけど、魔王はたぶん、魔族ではないぞ」
「「え?」」
クリスとメイが同時に声を上げる。特にメイは大きく動揺した。
「ええっと、魔王って魔族から選ばれるのではないのですか?」
「それはわからないけど、あの魔力の感じは魔族とは違う気がするんだよなぁ。魔剣の魔力に紛れてわかりづらいけどさ」
眉をひそめながらマイクは頭を掻く。
「まぁ、魔族の僕が聖剣に選ばれることがあるくらいだからね。魔族じゃない魔王がいてもおかしくないかもね」
「いや、勇者も魔王も種族は関係ないぞ?」
クリスが苦笑してシャルルを持ち上げると、シャルルが不満そうな声で反論した。
「えっ、そうなのか!?」
シャルルの発言に驚きの声を上げたのはマイクだった。
「ああ。勇者も魔王も俺やアンディが心のあり方を見て、気に入った奴を選んでいるんだ。そこに種族は関係ないな」
「アンディって魔剣かい?」
初めて聞く名があったため、クリスが聞く。
「そうだ。同じ神が作った剣なんだけど、なぜか俺とあまり気が合わないんだよなぁ」
不思議そうにシャルルは言うが、聖剣と魔剣という正反対の目的で作られた剣の気が合ったらおかしいと、その場にいた全員が思った。
「……で、種族が関係ないってどういうことなんだ?」
マイクがずれそうになっている話を戻した。
「さっき言ったままだぞ? あくまで大切なのは心のあり方で、種族では選んでないな」
「その割には、人間の勇者が多くないか?」
マイクはまだ納得してないようで、訝しげな顔をしている。
「そんなの、人間が1番多く俺を抜きに来たからだ。あれだけ来ていればふさわしい奴に当たるのも多いってもんだぞ」
呆れたように言うシャルルに、マイクはポカンとする。
「……聖剣は人間の味方じゃないのか?」
「いつ俺が人間の味方だって言ったんだ?
俺は世界の滅亡に抗うための剣だ。その世界には、人間だけじゃなくて魔族や他の種族も含まれているんだぞ?」
あまりに意外な話だったため、マイクの目と口が大きく開いた。
「あっ、ということは、魔剣が滅ぼす対象の中には魔族も含まれているのかい?」
「もちろん、そうだぞ」
クリスとシャルルのやり取りに、マイクはさらに顎が外れるのではないかと思うほど、口を大きく開く。
「なるほどね……」
クリスは逆に納得していた。魔王が魔族の配下を大事にしないのは、魔王にとって配下は守る存在ではないからだ。魔剣もおそらく、そういう者を選んでいるのだろう。
「……あの、クリス様……お話中のところ申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか?」
メイが顔を赤くしながら、おずおずと小声で言う。
「なんだい?」
首を傾げるクリスにメイは小さく叫んだ。
「そろそろ離してくれませんか!?」
クリスはずっと片手でメイを抱きしめていたままだった。
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