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魔王、喧嘩する5
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そこは山の奥深く、木々に囲まれたところにある小さな村だった。
断崖絶壁に囲まれたその村は、飛行魔法でも使わないと辿り着けなかっただろう。そんな辺鄙なところに彼らは住んでいた。
マイクがそこを発見したのは本当にたまたまである。単純に人間の国を見飽きたマイクは、崖の上に何があるか知りたかっただけだったのだ。
「こんなところに客人とは珍しい」
そう言って魔族の長は突然訪問したマイクを笑って迎えた。
住んでいたのは魔族がほとんどで、人間との関わりはなく、ただ、穏やかに暮らしているだけであった。
外から来たマイクが珍しくて、好奇の視線に晒されることもあったが、皆暖かく居心地がよい村だった。
それなのに、ある日、その幸せは壊されたのだ。
人間たちの手によって――。
バチバチと何かが弾ける音でマイクは目を覚ました。
窓を見ると、朝日にしては不自然なオレンジ色や赤い光が揺れている。
(まさか、火事か……!?)
寝ぼけた頭を無理矢理覚醒させ、マイクは消火をしなければと家を飛び出す。
マイクが住んでいたのは古い空き家で、村の皆の好意で住み易いよう改装したものだった。見た目は小さな古い小屋で、明かりを付けなければ誰かが住んでいるようには見えない。
だからこそ、マイクは無事だったのだろう。
外に出たマイクの瞳に映ったのは、マイクの家以外の住居という住居に火が付き、外に出た者たちが襲われている光景だった。
「徹底的に切り刻め! でないと再生するぞ!」
愕然とするマイクの耳に飛び込んだのは、そんな慈悲など欠片もない命令と村人たちの悲鳴。
「おい、何やっているんだ!」
魔族の子供を斬ろうとした者をマイクは風の魔法で吹き飛ばし、夜目が効くように魔法を駆使して相手を睨み付けた。
見た目や魔力の感じから、その者は剣を持った人間の男だった。
(人間……?)
なぜここに人間が、とか、なぜここを襲撃しているのか、という疑問がマイクの頭の中でぐるぐる回る。
「なんだお前、抵抗するのか?」
人間の男は体勢を立て直しながらマイクを睨む。
その間にも別の者が子供とマイクを襲おうと向かって来た。
「くっ!?」
マイクは一瞬で子供と自分を囲む障壁を作り、攻撃を防ぐ。
「マイク兄ちゃん……」
子供がマイクに泣きそうになりながらしがみつく。
そうしている間も周囲の炎はあかあかと燃え、村の者たちは凶刃の犠牲になっていった。
断崖絶壁に囲まれたその村は、飛行魔法でも使わないと辿り着けなかっただろう。そんな辺鄙なところに彼らは住んでいた。
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「こんなところに客人とは珍しい」
そう言って魔族の長は突然訪問したマイクを笑って迎えた。
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「徹底的に切り刻め! でないと再生するぞ!」
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見た目や魔力の感じから、その者は剣を持った人間の男だった。
(人間……?)
なぜここに人間が、とか、なぜここを襲撃しているのか、という疑問がマイクの頭の中でぐるぐる回る。
「なんだお前、抵抗するのか?」
人間の男は体勢を立て直しながらマイクを睨む。
その間にも別の者が子供とマイクを襲おうと向かって来た。
「くっ!?」
マイクは一瞬で子供と自分を囲む障壁を作り、攻撃を防ぐ。
「マイク兄ちゃん……」
子供がマイクに泣きそうになりながらしがみつく。
そうしている間も周囲の炎はあかあかと燃え、村の者たちは凶刃の犠牲になっていった。
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