その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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幕間 魔王と買い物6

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「……そういえば、メイとあいつって結局どうなったの?」

 パンケーキを食べ終え、パフェを半ばまで食べたところでサーニャはメイに聞く。
 メイは飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

「な、なんで今、そのようなことを聞くのですか!?」
「いや、だってあいつに聞いても誤魔化されるだけだし……」

 慌てふためくメイにサーニャはニヤニヤして言う。

「その感じはやっぱりあの後、何かあったんでしょ? ほら、正直に白状しちゃいなさいよ」

 実はサーニャが買い物について来たのは、メイにその辺りを聞きたかったというのもあった。
 ルディアとエレナも興味はあるようで、メイをじっと見る。

「……残念ですが、関係が変わったわけではないのですよ」

 メイは渋々白状した。

「嘘でしょ?」

 サーニャが目を見開いて驚いたのを見て、メイは苦笑する。

「はい。……ただ、3年後に告白してくれるそうです」

 そう言うメイは頬を赤らめてはにかんだ。

「3年後? 何で?」

 意味がわからなかったらしく、サーニャは首を傾げる。

「私が成人するまで待つからですよ」

 メイが答えると、サーニャは呆れた顔をした。

「そんなの待たないで、さっさと付き合えばいいのに……」
「クリス様は真面目な方ですから」

 苦笑するメイを見て、サーニャは唸る。

「うーん、私たちは成人年齢とか特にないからなぁ……」
「え、そうなんですか!?」

 驚くメイにサーニャは頷く。

「うん。だいたい20歳前後で見た目の年齢が止まるから、それくらいで大人扱いされるけど、はっきり決まってはいないわね」
「……クリス様は魔族の成人年齢は80歳だとおっしゃってましたが……」

 首を傾げるメイにサーニャは軽く息を吐く。

「……あいつ、説明してないのね。
 それはあいつのいた世界の魔族のことよ。ここの魔族は1000年も生きないし、成長も途中までは人間と変わらないわよ」
「世界によって同じ魔族でも違うのですか?」

 驚くメイにサーニャは頷いた。

「らしいわよ。オークもあっちだと、私たちと同じように話すらしいしね」
「向こうに帰ったら、そのオークたちにも会ってみたいですね」

 ルディアがのんびりとココアを飲みながら言う。

「そういえば、お二人はどうやって元の世界に帰るつもりなのですか?」

 気になったメイがルディアとエレナに尋ねると、2人はきょとんとした。

「……魔王を倒したら、帰してくれるんじゃないの?」

 エレナが訝しげに聞くと、メイが困ったように首を横に振る。

「この世界では異世界から誰かを呼ぶ魔法はありますが、元の世界に戻す魔法はないのですよ」

 衝撃の事実に、2人は固まった。

「え、ええ!? 帰る方法はないのですか!?」
「お、落ち着いてください!」

 動揺するルディアに、メイが慌てる。

「落ち着けないわよ! ……つまり、あの王様は帰すつもりなんてないのに、私たちを呼んだわけ!?」
「す、すいません……」

 思わずエレナがメイに迫ったが、彼女の父があの王であることを思い出す。なんとなく気まずくて、エレナは身を引いた。

「……それで、帰る方法がないって本当なの?」
「はい……少なくとも、私が知る限りでは、ありません」

 申し訳なさそうにメイは目を伏せる。
 だが、何かを思い出したように顔を上げた。

「……ただ、クリス様には何らかの帰る方法があるそうです」
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