140 / 179
幕間 魔王と買い物2
しおりを挟む
街で買い物をするのはクリスとサーニャ、メイの3人とネズミの姿のジョセフに決まった。
オークたちは買い物に興味はなく、改造魔物たちはその姿を見られたくないため行かないそうだ。ちなみにバルトは今朝クリスに襲いかかったため、気絶している。
「この石ってこんな使い方もあるのね……」
サーニャは手に持った石をまじまじと見る。それはクリスが幻覚魔法を入れた空の魔石だった。この石を使うことで、サーニャは魔族の特徴である角が見えなくなっている。
「絶対に失くさないでね。騒ぎになるから」
クリスがサーニャに念を押すと、彼女は口を尖らせる。
「わかっているわよ! そんなうっかりはしないわよ!」
「そう願うよ」
そうこうしているうちに、一行は街の城壁に着いた。
魔王の支配している領土と近いせいか、今までのどんな街よりも高く頑丈そうなものだった。
門をくぐると、知っている者たちがいた。
「あれ、ヨハンたちも来ていたのかい?」
クリスが声をかけると、ヨハンたち勇者一行もこちらを見る。
「あ、お前たちも買い物か? ん? 珍しいな。 サーニャも一緒なのか?」
「そうよ」
サーニャが答えるとルディアが目を丸くする。
「え、サーニャさん、角はどうしたのですか?」
驚くルディアにクリスは慌てる。
「ルディア、もうちょっと小声で!」
はっとしてルディアは周りを見渡す。幸い、こちらに注意を向けている者はいなかった。
「ん? 角ならあるだろ?」
ヨハンが訳がわからず首を傾げる。聖剣の力によって、クリスの幻覚魔法が効いていないのだ。
クリスは簡単に幻覚魔法を使っていることを説明する。
「なるほど、それなら普通に買い物ができますね」
そして良いことを思いついたのか、顔を輝かせる。
「そうだ! クリスさんたちも私たちと一緒に買い物をしませんか?」
「君たちと? 別に構わないけど、なぜだい?」
クリスは目を少し見開いてルディアに尋ねる。
「今まで別々に行動していましたけど、私たち目的地は同じですよね? なら、今までのように付かず離れずで行動するより、一緒に行動した方がいいと思うのです」
確かにルディアの言うことはもっともだ。これまでお昼前の鍛練を共にしながら、昼食後には離れていた方が不自然だった。
だが、エレナがものすごく嫌そうな顔をしたのを見て、クリスは首を横に振る。
「せっかくだけど、今まで通りでいいかな」
「そうですか? わかりました」
不思議そうに首を傾げるルディアを見て、クリスは苦笑した。
「まぁ、今日一緒に回るのはいいんじゃないかな?サーニャとメイもいるし」
今日の買い物についてみたいに、クリスにわからない女性の事情もルディアやエレナならわかるだろう。
一緒に買い物をすることは反対じゃなかったらしく、エレナの表情は変わらなかった。
「そうですね」
ルディアは頷く。
すると、クリスに体格のいい男2人がすれ違うように近づく。
ぶつかりそうだったため、クリスは一歩横に動いて避けようとしたが、相手も同じ方向へ動いたので肩が軽くぶつかった。
「うぉ、痛てぇ!」
スキンヘッドの男が大袈裟に喚いて倒れる。
「うわー、これは折れたかもな」
もう1人の長髪の男が口元をニヤニヤしながらクリスを睨んだ。
オークたちは買い物に興味はなく、改造魔物たちはその姿を見られたくないため行かないそうだ。ちなみにバルトは今朝クリスに襲いかかったため、気絶している。
「この石ってこんな使い方もあるのね……」
サーニャは手に持った石をまじまじと見る。それはクリスが幻覚魔法を入れた空の魔石だった。この石を使うことで、サーニャは魔族の特徴である角が見えなくなっている。
「絶対に失くさないでね。騒ぎになるから」
クリスがサーニャに念を押すと、彼女は口を尖らせる。
「わかっているわよ! そんなうっかりはしないわよ!」
「そう願うよ」
そうこうしているうちに、一行は街の城壁に着いた。
魔王の支配している領土と近いせいか、今までのどんな街よりも高く頑丈そうなものだった。
門をくぐると、知っている者たちがいた。
「あれ、ヨハンたちも来ていたのかい?」
クリスが声をかけると、ヨハンたち勇者一行もこちらを見る。
「あ、お前たちも買い物か? ん? 珍しいな。 サーニャも一緒なのか?」
「そうよ」
サーニャが答えるとルディアが目を丸くする。
「え、サーニャさん、角はどうしたのですか?」
驚くルディアにクリスは慌てる。
「ルディア、もうちょっと小声で!」
はっとしてルディアは周りを見渡す。幸い、こちらに注意を向けている者はいなかった。
「ん? 角ならあるだろ?」
ヨハンが訳がわからず首を傾げる。聖剣の力によって、クリスの幻覚魔法が効いていないのだ。
クリスは簡単に幻覚魔法を使っていることを説明する。
「なるほど、それなら普通に買い物ができますね」
そして良いことを思いついたのか、顔を輝かせる。
「そうだ! クリスさんたちも私たちと一緒に買い物をしませんか?」
「君たちと? 別に構わないけど、なぜだい?」
クリスは目を少し見開いてルディアに尋ねる。
「今まで別々に行動していましたけど、私たち目的地は同じですよね? なら、今までのように付かず離れずで行動するより、一緒に行動した方がいいと思うのです」
確かにルディアの言うことはもっともだ。これまでお昼前の鍛練を共にしながら、昼食後には離れていた方が不自然だった。
だが、エレナがものすごく嫌そうな顔をしたのを見て、クリスは首を横に振る。
「せっかくだけど、今まで通りでいいかな」
「そうですか? わかりました」
不思議そうに首を傾げるルディアを見て、クリスは苦笑した。
「まぁ、今日一緒に回るのはいいんじゃないかな?サーニャとメイもいるし」
今日の買い物についてみたいに、クリスにわからない女性の事情もルディアやエレナならわかるだろう。
一緒に買い物をすることは反対じゃなかったらしく、エレナの表情は変わらなかった。
「そうですね」
ルディアは頷く。
すると、クリスに体格のいい男2人がすれ違うように近づく。
ぶつかりそうだったため、クリスは一歩横に動いて避けようとしたが、相手も同じ方向へ動いたので肩が軽くぶつかった。
「うぉ、痛てぇ!」
スキンヘッドの男が大袈裟に喚いて倒れる。
「うわー、これは折れたかもな」
もう1人の長髪の男が口元をニヤニヤしながらクリスを睨んだ。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる