その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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幕間 魔王と買い物2

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 街で買い物をするのはクリスとサーニャ、メイの3人とネズミの姿のジョセフに決まった。
 オークたちは買い物に興味はなく、改造魔物たちはその姿を見られたくないため行かないそうだ。ちなみにバルトは今朝クリスに襲いかかったため、気絶している。

「この石ってこんな使い方もあるのね……」

 サーニャは手に持った石をまじまじと見る。それはクリスが幻覚魔法を入れた空の魔石だった。この石を使うことで、サーニャは魔族の特徴である角が見えなくなっている。

「絶対に失くさないでね。騒ぎになるから」

 クリスがサーニャに念を押すと、彼女は口を尖らせる。

「わかっているわよ! そんなうっかりはしないわよ!」
「そう願うよ」

 そうこうしているうちに、一行は街の城壁に着いた。
 魔王の支配している領土と近いせいか、今までのどんな街よりも高く頑丈そうなものだった。
 門をくぐると、知っている者たちがいた。

「あれ、ヨハンたちも来ていたのかい?」

 クリスが声をかけると、ヨハンたち勇者一行もこちらを見る。

「あ、お前たちも買い物か? ん? 珍しいな。 サーニャも一緒なのか?」
「そうよ」

 サーニャが答えるとルディアが目を丸くする。

「え、サーニャさん、角はどうしたのですか?」

 驚くルディアにクリスは慌てる。

「ルディア、もうちょっと小声で!」

 はっとしてルディアは周りを見渡す。幸い、こちらに注意を向けている者はいなかった。

「ん? 角ならあるだろ?」

 ヨハンが訳がわからず首を傾げる。聖剣の力によって、クリスの幻覚魔法が効いていないのだ。
 クリスは簡単に幻覚魔法を使っていることを説明する。

「なるほど、それなら普通に買い物ができますね」

 そして良いことを思いついたのか、顔を輝かせる。

「そうだ! クリスさんたちも私たちと一緒に買い物をしませんか?」
「君たちと? 別に構わないけど、なぜだい?」

 クリスは目を少し見開いてルディアに尋ねる。

「今まで別々に行動していましたけど、私たち目的地は同じですよね? なら、今までのように付かず離れずで行動するより、一緒に行動した方がいいと思うのです」

 確かにルディアの言うことはもっともだ。これまでお昼前の鍛練を共にしながら、昼食後には離れていた方が不自然だった。
 だが、エレナがものすごく嫌そうな顔をしたのを見て、クリスは首を横に振る。

「せっかくだけど、今まで通りでいいかな」
「そうですか? わかりました」

 不思議そうに首を傾げるルディアを見て、クリスは苦笑した。

「まぁ、今日一緒に回るのはいいんじゃないかな?サーニャとメイもいるし」

 今日の買い物についてみたいに、クリスにわからない女性の事情もルディアやエレナならわかるだろう。
 一緒に買い物をすることは反対じゃなかったらしく、エレナの表情は変わらなかった。

「そうですね」

 ルディアは頷く。
 すると、クリスに体格のいい男2人がすれ違うように近づく。
 ぶつかりそうだったため、クリスは一歩横に動いて避けようとしたが、相手も同じ方向へ動いたので肩が軽くぶつかった。

「うぉ、痛てぇ!」

 スキンヘッドの男が大袈裟に喚いて倒れる。

「うわー、これは折れたかもな」

 もう1人の長髪の男が口元をニヤニヤしながらクリスを睨んだ。
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