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魔王、巻き込まれる
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ツバイが魔王のもとにたどり着いた頃、クリスたちも面倒事に遭遇していた。
森の中を歩いていて、騎士団に遭遇したのだ。
「お前たちか! 姫を拐った邪悪な魔族どもは!」
中央に居た金髪の髪と濃い藍色の瞳を持つ十代半ばくらいの少年がクリスたちに向かって叫ぶ。
「姫?」
クリスは一瞬「誰のことだっけ?」と首を傾げた。だが「げっ!?」とメイが今まで聞いたことのない声を洩らしたので、彼女がとある国の姫だったことを思い出す。
「ロベルア王国のメイ姫のことだ! 忘れたとは言わせぬぞ!」
「うん。今、思い出した」
「ふざけるな!」
少年は怒るが、別にクリスはふざけた訳ではない。ただ、メイが姫であることを忘れていただけだ。
「ともかく、勇者を騙る魔族よ! 大人しくメイをこちらに渡して貰おうか! さもないと、ただでは済まさないぞ!」
「……知り合いかい?」
少年が憤っている中、クリスは小声でメイに話しかける。
「はい。隣の国の王子で、何回か求婚されたことがあります」
全く動じていないクリスたちに少年は更に怒りを募らせた。
「そこ、何をこそこそと……ってメイ!?」
クリスが話しているのがメイだと気付き、少年は目を丸くする。
「おお! メイよ! このカルヴァニア王国のユートが助けに参りましたぞ!」
「必要ありません!」
少年、ユートの申し出をメイはキッパリと拒絶した。
「私は自分の意思でクリス様についていっているのです! 助けてもらう必要なんてありません!」
「な、なんと……」
衝撃を受けたユートはクリスを睨む。
「おのれ、邪悪な魔族め! メイに何か洗脳でもしたのか!?」
「いや、何もしてないけど」
クリスは即座に否定したが、ユートは聞いていなかった。
「おい、魔族! メイをかけて私と勝負しろ! そして私が勝ったらメイを渡して貰おうか!」
そう言ってクリスの前に立ちはだかる。
「ええ……」
クリスが困惑していると、誰かがクリスの服の裾を引く。
目を向けると、メイがこちらを真っ直ぐ見て裾をギュッと掴んでいた。その目が「帰りたくない」と言っているように見える。
クリスは軽く息を吐く。
「わかった。その勝負を受けるよ」
魔王にクリスの情報が伝わった以上、この先は今まで以上に危険かもしれない。それに彼女を巻き込むのはどうなのかとクリスは迷っていた。
だが、尊重すべきなのはメイの意識だ。
彼女がついていくというのなら、クリスは今まで以上に仲間を守ればいいだけだ。
クリスがユートの前でゆっくりとシャルルを抜き構えると、ユートは即座に素早く剣を抜く。
そして間髪入れずに斬りかかってきた。
「うおぉ!」
そうやって叩き込んだ必殺の一撃は、クリスの剣によって軽々遮られる。
続けて何度もユートは斬擊を繰り出すが、そのすべてをクリスは捌いた。
「くっ!」
それでもユートは諦めず、勢いよく剣を振り下ろした。
次の瞬間、その剣は手から離れて宙を舞う。
呆然としているユートの喉元にクリスの持つシャルルの切っ先が真っ直ぐ狙いを澄ましていた。
「僕の勝ちだね」
青い顔で冷や汗をかくユートにクリスは勝利を告げた。
森の中を歩いていて、騎士団に遭遇したのだ。
「お前たちか! 姫を拐った邪悪な魔族どもは!」
中央に居た金髪の髪と濃い藍色の瞳を持つ十代半ばくらいの少年がクリスたちに向かって叫ぶ。
「姫?」
クリスは一瞬「誰のことだっけ?」と首を傾げた。だが「げっ!?」とメイが今まで聞いたことのない声を洩らしたので、彼女がとある国の姫だったことを思い出す。
「ロベルア王国のメイ姫のことだ! 忘れたとは言わせぬぞ!」
「うん。今、思い出した」
「ふざけるな!」
少年は怒るが、別にクリスはふざけた訳ではない。ただ、メイが姫であることを忘れていただけだ。
「ともかく、勇者を騙る魔族よ! 大人しくメイをこちらに渡して貰おうか! さもないと、ただでは済まさないぞ!」
「……知り合いかい?」
少年が憤っている中、クリスは小声でメイに話しかける。
「はい。隣の国の王子で、何回か求婚されたことがあります」
全く動じていないクリスたちに少年は更に怒りを募らせた。
「そこ、何をこそこそと……ってメイ!?」
クリスが話しているのがメイだと気付き、少年は目を丸くする。
「おお! メイよ! このカルヴァニア王国のユートが助けに参りましたぞ!」
「必要ありません!」
少年、ユートの申し出をメイはキッパリと拒絶した。
「私は自分の意思でクリス様についていっているのです! 助けてもらう必要なんてありません!」
「な、なんと……」
衝撃を受けたユートはクリスを睨む。
「おのれ、邪悪な魔族め! メイに何か洗脳でもしたのか!?」
「いや、何もしてないけど」
クリスは即座に否定したが、ユートは聞いていなかった。
「おい、魔族! メイをかけて私と勝負しろ! そして私が勝ったらメイを渡して貰おうか!」
そう言ってクリスの前に立ちはだかる。
「ええ……」
クリスが困惑していると、誰かがクリスの服の裾を引く。
目を向けると、メイがこちらを真っ直ぐ見て裾をギュッと掴んでいた。その目が「帰りたくない」と言っているように見える。
クリスは軽く息を吐く。
「わかった。その勝負を受けるよ」
魔王にクリスの情報が伝わった以上、この先は今まで以上に危険かもしれない。それに彼女を巻き込むのはどうなのかとクリスは迷っていた。
だが、尊重すべきなのはメイの意識だ。
彼女がついていくというのなら、クリスは今まで以上に仲間を守ればいいだけだ。
クリスがユートの前でゆっくりとシャルルを抜き構えると、ユートは即座に素早く剣を抜く。
そして間髪入れずに斬りかかってきた。
「うおぉ!」
そうやって叩き込んだ必殺の一撃は、クリスの剣によって軽々遮られる。
続けて何度もユートは斬擊を繰り出すが、そのすべてをクリスは捌いた。
「くっ!」
それでもユートは諦めず、勢いよく剣を振り下ろした。
次の瞬間、その剣は手から離れて宙を舞う。
呆然としているユートの喉元にクリスの持つシャルルの切っ先が真っ直ぐ狙いを澄ましていた。
「僕の勝ちだね」
青い顔で冷や汗をかくユートにクリスは勝利を告げた。
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