その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する20

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「魔王にも忠誠を誓っている者がいるんだね」
「強さに憧れる者は多いのよ。人間に恨みを持つ者も多いしね。ツバイなんかその筆頭よ」
「それもそうだね」

 確かにクリス自身も父の強さに憧れている。同じような者がいても不思議ではない。
 それに、人間に理不尽に襲撃された者もいてもおかしくはない。

「それにしても、大変ね。魔王様にあなたの情報が伝わってしまったのだから」
「まぁ、そうかもね」

 確かに今までは魔王たちが、クリスが聖剣の持ち主になったことを知らなかったから無事だったのだろう。だが、これからはクリスを集中的に狙ってくる。覚悟した方がいいかもしれない。

「……話は済んだか?」

 後ろで黙って立っていたライアがクリスに聞いた。

「うーん、聞きたいことはいっぱいあるけど、全部聞くときりがないからね」

 クリスが苦笑して言うと、ライアは頷く。

「そうか。なら、彼らをこちらに渡して貰ってもいいか?」

 クリスは目を伏せた。

「やっぱり、彼らも……」

 いい淀むクリスに、何を言いたいのか察したライアは頷く。

「生かしたところでこちらの味方となるとは到底思えないしな。隙を見て反撃されたら、犠牲になる者も多い」
「わかっているよ。けど……」

 唇を噛むクリスに幹部の女は微笑む。

「いいのよ。覚悟していたんだから」
「でも……」
「負けたら殺されるのが当たり前なんだから。死ぬのは嫌だけど、仕方ないわ」
「わかっているんだ、それは」

 クリスは苛立ったように髪をかきむしる。
 確かに彼らの言い分は正しい。そして自分の言い分がただの感情論だということもクリスは理解している。
 幹部の女はフッと笑った。

「あなたは本当に優しいのね。けど、その優しさは私たちに向けるべきではないわ」
「……そうだね」

 クリスが悲しそうな顔で頷くと、幹部の2人はエルフたちによって立たされる。
 その2人の背中に見て、クリスは聞き忘れたことがあったことを思い出す。

「僕の名前はクリス。君の名前は?」

 幹部の女は驚いたように振り返って微笑する。

「私はレンリよ。こっちはダガン」
「わかった。レンリ、色々教えてくれてありがとう!」

 幹部の女、レンリは笑みを深めると前を向いて歩き出す。
 そして振り返ることはなかった。
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