その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する15

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「いいところ、なのか?」

 ヨハンは渋い顔で首を傾げる。

「まぁ、君はまだ幼……若いんだし、これから経験を積めばいいんじゃないかな」
「今、幼いって言おうとしなかったか?」

 ヨハンが咎めるが、クリスは笑って誤魔化した。

「……お前からしたら確かにそうかもしれないけどな。俺、後1年で成人するんだぞ?」
「え……あ、そういえばそうなんだね」

 うっかりしていたが、ヨハンは17歳なのである。人間の成人年齢は18歳らしいのでもうすぐなのだ。

「確かに僕もヨハンくらいの見た目の時に成人したからなぁ」

 魔族の成人年齢は80歳なのだが、確かに見た目はヨハンに近いくらいだった。

「……お前なら、まだ成人前でも通じると思うぞ?」

 その言葉にクリスはムッとする。

「これでも成人して300年以上経っているんだけど」

 確かに今だに初対面の相手から未成年扱いされることもあるが、見た目の年齢が止まるのが早かっただけでとっくの昔に成人しているのだ。

「あ、ごめん、悪かった」

 クリスの様子が剣呑なのを感じたのか、ヨハンが謝る。
 クリスもさすがに大人げなかったと思い、頷いて許した。

「……なぁ、俺くらいの頃のお前ってどんなだったんだ?」

 おそるおそるヨハンが聞いてきたので、クリスは考える。

「うーん、17歳の頃ならまだ小さかったからよく覚えてないな。その頃は魔力もよく暴走させていたとかよく聞くけど」
「暴走……? いや、そうじゃなくて」

 気になったこともあったようだが、年齢の方ではないようだ。

「見た目の方かい?そうだね……その頃は今よりずっと弱かったな」
「ええ!」

 ヨハンがあまりに驚くので、クリスはキョトンとする。

「そんなに意外かい?」
「いや、だってお前が弱いところなんて上手く想像できないっていうか……」
「僕だって初めから強かったわけじゃないんだよ」

 クリスは首を左右に振っているヨハンに苦笑する。

「そうかもしれないけどさ」
「それに、死んだ父に比べるとまだ弱いみたいだし」

 まだ納得していないヨハンに更なる衝撃的なことを言った。

「え、ええええ!!?」
「……驚き過ぎじゃないかい?」

 あまりの驚きっぷりにクリスは若干引く。

「これが驚かずにいれるか! てか、父親ってそんなに強かったのか!?」
「うん。武術の腕は代々僕らの家系を知っている者から言わせると、1番だって」

 ちなみに知っている者とはグリムと宰相で竜のキャロルである。2人 (?)とも初代国王の頃からこの国にいるため、国王5人全員を知っているのだ。

「僕は父には結局1勝もできなかったんだよね。父の剣は本気を出すと全く見えないくらい速かったし」
「そんなに強い奴がいたのか……」

 ヨハンが唸っている姿を見て、クリスはふと思い出す。

「そういえば、君くらいの時に家出したんだよね」
「家出!?」

 また驚いているヨハンにクリスは苦笑する。

「そんなに驚くことかい?」
「え、だってお前が家出ってイメージができないから……」
「僕だって君みたいな時期あったんだよ」

 あの時はなかなか強くなれない苛立ちと、このまま王になって大丈夫なのかという不安で逃げ出したくなり、国の中を当てもなく放浪したのだ。
 後から父は国の外を旅したことがあると聞き「ここでも父に負けているのか」と悔しがった。それも今ではいい思い出だ。

「その家出の経験のおかげでいろんなことが知れたから、後悔はしていないよ」

 そしてクリスはヨハンを真っ直ぐ見る。

「ヨハンも今はそういう時期なんじゃないかな」
「そういう時期?」
「上手くいかないことが多いけど、それが全部後の糧になる時期」

 ヨハンが目を瞬く。

「そう、なのか?」
「うん。だから落ち込んでもいいけど、立ち上がろうか。皆が待っているだろうし」

 クリスが手を差し出すと、ヨハンは戸惑いながらも掴み、立ち上がった。
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