その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する12

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(なんだ、こいつは!?)

 ダガンはヨハンの時以上に警戒した。
 クリスと呼ばれた者は魔力の感じから間違いなく魔族なのだが、この人間の味方をしているようだ。
 いや、それだけなら変わった魔族で済む。ダガンが脅威を感じたのはそこではない。

 ダガンは周りを見渡す。風の障壁はまだ消滅してなかった。
 つまりこの男は風の障壁をものともせず、ここに来たことになる。
 それはある意味勇者と名乗る人間よりも脅威だ。それほど力ある魔族だということだから。
 そして先ほどの魔法。ダガンがとっさに防いでも飛ばされてしまった。そのくらいのスピードと威力だった。
 そんな魔法を使う者として格上である相手にダガンは緊張する。
 だが、驚いたのはあることに気づいた時だった。

「なぜ魔族のお前が聖剣を持っている!?」

 男が持っていた剣は魔王から聞いていた聖剣だった。つまりこの男が勇者ということになる。
 魔族の者が勇者など聞いたことがない。

「さぁ、なんでだろうね」

 男は苦笑いしながら首を傾げるが、目線はこちらを外さない。特に体に力を入れているわけではないようだが、隙がなかった。

(……こいつに俺は勝てるのか?)

 ダガンは自問自答する。ここまで勝てる未来が見えない相手は魔王以外で初めてだった。

 それでも何もせずに降参することが嫌で剣を構える。
 男もゆっくりと剣を構えた。
 まだ何も剣を交わしていないのに、ダガンのこめかみに汗が伝う。
 身体強化魔法があるから大丈夫だと言い聞かせても、不安は拭えない。

 そしてこちらから手を出すのを躊躇っていたことを見透かされたからか、男の方から動いた。
 ほんの数瞬で詰め寄られてとっさに身体強化魔法を駆使して防ぐことができた。
 だが、剣を交わすことたった6回、一際大きい金属音と共にダガンの剣は大きく宙を舞う。
 あまりの呆気なさに呆然とするダガンの首元に剣先が突き付けられる。

「嘘だ……」

 反撃しようとしたが、足元から伸びてきた蔓草によってあっという間に身動きを封じられてしまった。
 尚も抵抗しようとするダガンに、男が魔法を放つ。
 大した威力のない雷魔法だったが、ダガンを気絶させるには十分である。
 最後まで男に敵わなかったことを悔いながら、ダガンの意識は途絶えた。
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