その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する8

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「ヨハン、ここで何をしているんだい?」

 クリスがヨハンたちに近づくと、ヨハンは目を見開く。

「クリス!? なんでここにいるんだ?」
「それ、僕が聞いているんだけど?」
「いや、なんか村っぽいところがあったから寄ってなんか買おうと思ったんだ。けど、なんか住人に警戒されているみたいで、逃げられているんだよなぁ」

 なんでだろ、と首を傾げるヨハンにクリスは苦笑した。

「ここは人間をよく思わない種族の村なんだよ」
「え、何の種族ですか!?」

 ルディアが目を輝かせ質問するが、クリスはスルーする。

「そういう訳で君たちはさっさと先に進んだら?」

 そう提案するクリスにヨハンは訝しむ。

「……お前はどうするんだ?」
「ちょっと用事ができたから、この村に残るよ」
「じゃあ、俺たちも残る!」

 拳を握り断言するヨハンに、クリスは目を瞬く。

「え、なんで?」
「お前が何の意味もなく残る方が不自然だろ? つまり、なんかこの村で起こるかもしれないってことだ! なら俺も手助けがしたい!」
「……別に普通に滞在するのかもしれないよ?」

 反論するが、ヨハンは首を横に振る。

「お前だけならともかく、オークたちやメイも一緒だろ? お前が皆を放っといて滞在するのはあり得ないからな。そんな集団を歓迎する奴はそんなにいないはずだ」

 ヨハンの言う通り、オークだけ、人間だけならともかく、それらのバラバラの種族が入り交じったクリスたちを受け入れる者はほぼいないだろう。
 だが、それを覆すような反論材料がクリスにはあった。

「僕が聖剣に選ばれたから歓迎されたのかもしれないよ?」

 そう、この「聖剣に選ばれた者」というのは、魔族とか以外に本来歓迎されやすい要素なのだ。ただ、今回はクリスのような魔族が選ばれたというイレギュラーで、あまり意味を成していないが。

「う、それは……」

 ヨハンが口ごもる。

「あー、もう、まどろっこしい!」

 エレナが髪をかきむしった。

「この村に何か起こるの、 それとも何も起こらないのどっちなわけ!? それともあんたが何か企んでいるの!?」

 いきり立つエレナにクリスはため息を吐く。まぁ、彼らなら伝えても問題はないだろう。

「この村に魔王の幹部の魔族が来るらしいんだ」

 クリスの言葉にヨハンたちは息を飲む。

「幹部ってどんな奴? 強い、のか?」

 ヨハンがクリスに聞く。

「サーニャ曰く強いらしいよ」
「でも、お前なら勝てるだろ?」
「さあ?」

 クリスは首を傾げる。
 サーニャは勝てると言っていたが、相性などもあるため、正直わからなかった。

「なら、俺も手伝う!」

 ヨハンが宣言した。
 クリスは少し考える。
 ヨハンの持つ聖剣の能力を使えば、典型的な魔法重視の魔族は簡単に倒せるだろう。
 あとの4人も人間にしては高い戦力らしいので、魔族相手でも工夫すれば役に立つかもしれない。
 断る理由はなかった。

「わかった。けど、僕やこの村の者の言うことを聞けるかい?」
「なんであんたたちの言うことを聞かないといけないのよ?」

 エレナが口を尖らせる。

「聞けないなら足手まといになる可能性が高いからね」
「まるで私たちだけじゃ勝てないみたいに言うのね!」
「うん、そう言っている」

 クリスが肯定すると、エレナは唖然とした。
 それには構わず、クリスは1番冷静に判断できそうな者に目を向ける。

「ガルム、ヨハン以外で魔族と真正面から戦って勝てる者はいると思うかい?」

 ガルムは唸ると、首を横に振る。

「無理だろうな。我々の攻撃は防がれてしまうだろうし、魔法に優れたルディアでも魔族の魔法に勝てるかは怪しいだろう」
「うん。だけど君たちは基本真正面からしか戦ってないよね? それなら勝てるものも勝てないよ」

 ガルム以外の3人は目を泳がせる。
 確かにクリスの言う通りだった。

「けど、四六時中周りに障壁を張っている魔族なんていないんだ。だからそういう隙に魔法や矢は当てられるし、魔法を過信している魔族は、攻撃中は背中ががら空きなことが多い。
 つまり、やり方を工夫すれば君たちでも魔族は倒せるんだ」
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