その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する6

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「くそっ、同じ魔族のくせにエルフどもと心中しようってのか!?」
「それ、どういう意味だい?」

 聞き逃してはいけないものを感じて、クリスは眉をひそめた。

「魔王の命令で今回でエルフどもが従わなかったら、幹部の奴がここの奴らを皆殺しにすることになっているんだ。敵対されたら面倒だからってさ」
「なっ……!?」

 あまりに身勝手な物言いにライアは絶句する。

「は? なんだいそれは?」

 クリスの声に剣呑さが露になる。

「わかっただろ? なら俺を解放して魔王に従い……ブハッ!?」

 男が全部言い終わる前に、ライアはその頬を殴りつけていた。

「ふざけるな! 誰がそんな奴に従うか!」

 ライアの顔は怒りに満ちている。
 口の中が切れたのか、男は血が混じった唾液をペッと吐き出す。

「正気か? 言っとくが幹部の奴らは俺なんかよりずっと強いぞ? お前らなんか簡単に殺せるぞ?」
「それでも従うことは我らの誇りが許さない」

 ライアは毅然として言った後、クリスに頭を下げた。

「我々はここで徹底的に抗うつもりだ。だがこれ以上、無関係のあなたを巻き込むわけにはいかない。どうか、幹部とやらが来る前にこの村を出て行ってくれないか?」
「やだ。僕はここに残って一緒に戦う」

 ライアは信じられなくて目を瞬く。

「しかし、あなたはこの村を助ける義理はないだろう?」
「だからって見捨てるのは後味悪いし、僕は魔王のやり方が気に入らないんだ」

 全く意見を変えるつもりのないクリスに、ライアは苦笑いする。

「あなたはずいぶんとお人好しのようだ。だが正直、あなたが居てくれると心強い。
 それでは改めて、クリスよ、我々に協力してくれないか?」
「もちろん!」

 クリスは笑顔で答えた。

 こうして、クリスはエルフたちと共に魔王の幹部たちと戦うことになった。



 クリスは仲間たちのところに戻ると、エルフたちと話したことを伝えた。

「幹部と戦う!? あんた、正気なの!?」

 サーニャが目を見開いて叫ぶ。

「正気だよ。別に冗談を言っているわけじゃない」

 クリスが答えると、サーニャは頭を抱えた。

「あー、あんたがこんな冗談言う奴じゃなかったわ……」
「それで僕は戦うけど、君たちはちょっと離れたところで避難で大丈夫かい?」

 クリスが聞くと、サーニャは頷く。

「当たり前でしょ。死にたくないもの」

 オークたちも申し訳なさそうに頷いている。

「嫌です! 私も何か手伝います!」

 そんな中、1人異議をとなえる者がいた。

「……メイ、君が僕たちと共に戦う理由はないんだよ」
「それ、クリス様も一緒ですよね」

 言い返されてクリスは反論できない。

「……わかったよ。じゃあ、エルフたちのもとで後方支援の手伝いを頼めるかい?」
「はい!」

 メイは嬉しそうに頷いた。

「そういえば、幹部ってそんなに強いのかい?」

 クリスは気になったのでサーニャに聞く。

「強いわよ! 同じ魔族なのにこんなに違うのかってほど!
 あんたなんかより……あ、いや」

 勢い良く言っていた言葉が小さくなっていた。

「うん。あんたなら大丈夫だった」

 サーニャはなぜか遠い目をする。

「別に無理に持ち上げなくていいよ」
「……いや、正直、私、あんたより強い魔族見たことなかったわ。うん、あんたなら大丈夫」

 褒められているのに、なぜか呆れられているように感じるのはなんでだろう?

 その時、エルフたちの方が騒がしくなった。
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