その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、共闘する5

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「ここでは珍しいかもしれないけど、僕のいた国ではよくあることだよ。むしろ純血の方が珍しいくらい」
「いや、しかし、エルフと魔族が?」

 ライアの様子からよほどあり得ない組み合わせなのだろう。
 クリスは苦笑する。

「双方とも長生きで魔力の強い種族なんだ。そこまで不思議なことじゃないよ」
「しかし、エルフと魔族では魔力の性質も主義も正反対だろう?」
「魔力はともかく、僕の国では争わずに一緒に暮らしているよ」
「あり得ない……」

 ライアがあまりに頑なに否定するため、さすがにクリスも眉をひそめる。

「世界が違えば文化も風習も違うんだ。世界が違えばあり得ないことはあり得るよ」

 クリスの説明にようやく納得したのか、ライアがゆっくり頷いた。

「わかった。まだ信じられないが、我々を助けてくれたあなたを信じよう」

 クリスは首を傾げる。

「そこまであり得ない組み合わせなのかい?」

 ライアは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「それはそうだろう。森に属し森とともに生きるエルフと魔王につき暴虐を働く魔族が相容れるわけがない」

 クリスはあることに気がつき、納得する。

「僕の世界では君たちのいうような魔王はいないんだ。だから、そんな風に対立してないのかもね」

 ライアは目を見開く。

「あなたの世界には魔王がいないのか?」
「魔王と呼ばれる存在はいるけど、実質は人間以外の種族が暮らす国の国王だよ。人間が勝手に魔王と呼んでいるだけだね」

 ライアは口元に笑みを浮かべた。

「なるほど、それなら確かにあり得ることかもしれないな」
「そういえばあの魔族はどうするんだい?」

 ライアが納得したようなので、クリスは襲撃した魔族の男に目を向けながら聞く。

「無論、今まで散々好き勝手したからな。おそらく死を以て償うことになるだろう」
「そっか……」

 クリスの反応にライアは眉をひそめた。

「なんだ、同族のよしみで許してやれとか言うんじゃないだろうな?」

 クリスは首を横に振る。

「いや、種族とか偏見じゃなくて彼のやった行為をもとに君たちが決めたんなら、僕は何も言わないよ。
 ただ、その判断が彼の死なのが残念なだけだ」
「残念?」

 クリスは苦笑いを浮かべる。

「僕が死刑が嫌いなだけだから気にしないでほしい」

 ライアは片眉を上げたが、何も言わなかった。
 そのわずかな沈黙のあと、男の罵声が辺りに響く。

「ああ、くそっ、なんでこれほどけないんだよ!」

 なんだろうと目を向けると、魔族の男が蔓草をふりほどこうと身をよじっている。

「目が覚めたようだな」

 ライアは魔族の男に近づく。

「おい、お前、無駄な抵抗はよせ」

 魔族の男は肩をビクッとさせた。
 そしてクリスの方を見ると、目を大きくさせる。

「お前、なんで魔族のくせにエルフの味方なんかしてんだよ! さっさとこの草解きやがれ!」

 魔力からその蔓草がクリスの仕業だとわかったらしい。

「やだね」

 クリスは素っ気なく答えた。
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