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魔王、料理する4
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「……なんなの、これ?」
皿に盛られた料理を見たサーニャの第一声がこれだ。
深めの皿には茶色い汁に野菜と肉が浮かんでいて、ものすごく甘ったるい匂いがしている。
他の者も黙っているが、同じ心境だろう。
「たぶん、グラッセ……かな?」
「たぶんって何よ!?」
クリスの答えにサーニャは目を剥く。
「まぁ、見た目アレだけど意外といけるかもよ?」
「いやいやいや、どう見ても不安しかないでしょ!」
「うーん、砂糖いっぱい入れたからなんとかなると思ったんだけど」
「その理屈は何!?」
他の者たちもサーニャの言葉に頷いている。
「ともかく、私は絶対食べないから!」
「えー……」
クリスは不服そうにするが、サーニャの言うことはもっともだと思った。
「わかった、まず僕が食べるから」
そう言ってクリスはスプーンを持ち、例の怪しい料理を掬い、口に運ぶ。
口に入れて、クリスは少し眉をひそめた。
「……野菜、もう少し煮れば良かったね」
始めに出た感想がそれだったので、皆顔を合わせた。
「確かに少し砂糖を入れすぎたかもしれないけど、食べれないこともないよ?」
そう言って普通に食べ始めたクリスを見て、皆はおそるおそるスプーンをつかんで料理を口に入れる。
その中でジョセフだけは何らかの危機を感じて動かなかった。
「うわっ、何これ……甘っ!」
一口食べたサーニャが悶絶し、他の者も口を押さえて呻く。
その様子を見て、作った本人のクリスは「あれ?」というように首を傾げる。
ジョセフは冷や汗をかく。
(そういえば、クリス様は甘味ならいくら甘くてもいけるのだった……!)
昔「甘過ぎてヤバい」という噂の菓子が出た時、クリスはその菓子をいくつも普通に平らげたという伝説を作ったことを思い出す。
――その後、不満そうなクリスを尻目に「クリスは料理禁止」という決まりが満場一致で決まったことはいうまでもない。
皿に盛られた料理を見たサーニャの第一声がこれだ。
深めの皿には茶色い汁に野菜と肉が浮かんでいて、ものすごく甘ったるい匂いがしている。
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「うわっ、何これ……甘っ!」
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ジョセフは冷や汗をかく。
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昔「甘過ぎてヤバい」という噂の菓子が出た時、クリスはその菓子をいくつも普通に平らげたという伝説を作ったことを思い出す。
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