その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、料理する2

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「……カレーですか」
「うん、カレーなら何入れても美味しいって聞いたことあるから、この材料でもいけると思う!」

 力強くクリスは言うが、問題は別のところにある。

「……クリス様、カレーには専用のスパイスが必要なことは御存じですか?」

 見たところ、調味料は塩と砂糖と蜂蜜のみで、カレーを作るためのスパイスは見当たらない。
 クリスはキョトンとする。

「これじゃダメなのかい?」
「少なくともカレーを作るのは難しいと思います」

 ジョセフもカレーのスパイスに何が必要なのか知らないが、ここにある調味料でできないことは知っている。

「……チョコレートを刻んで代わりにできないかな?」
「味が全く違いますよね」

 そもそもなぜ調味料は少ないのに、お菓子の種類は充実しているのだろう? クリスがポケットから出したものにはグミや飴、マカロンまである。

「砂糖やミルクが少ないチョコレートは苦いから、代わりとかいけると思うんだけど」
「無理でしょう」

 クリスは数種類のチョコレートをポケットから出した。
 なぜチョコレートの種類はそんなにあるのだろう?

「もともと辛いカレーは好きじゃないから、甘口ということにしよう」
「そういう問題ではありません」

 確かにクリスは辛いのが苦手でカレーも甘口だが、甘口にもほどがある。

「まぁ、意外と似たようなものができるかもしれないよ?」

 クリスはポケットから探し出したナイフでチョコレートを刻み始める。
 こうして、カレーみたいなチョコレートのごった煮の調理は開始されたのだった。



 クリスは野菜を一口大に切っていく。
 幸い、剣や短剣の扱いの修練は積んでいるせいか怪我することはなかったが、ジョセフはそれ以上に気になることがあった。

「クリス様、なぜほとんどの野菜の皮を剥かれないのです?」

 クリスの切った野菜は皮が剥かれてなかったり、芯が残ったままのものばかりだった。
 クリスはキョトンとする。

「え、皮って? じゃがいもとかは剥いているよ?」

 確かにじゃがいもの皮は剥いてある。
 だが、大根や人参の皮は剥いていない。

「……クリス様、大根や人参にも皮はあるのですよ」
「そうなのかい!?」

 目を大きくして驚くところを見るに、本当に知らなかったらしい。
 この様子なら、芯がある野菜も知らないのだろう。
 ジョセフは時間が経てば経つほど加速する不安で頭が痛くなる。

「じゃあ、ジョセフ、どの野菜の皮が残っているか教えてよ!」

 クリスの頼みに、ジョセフは切られた野菜から皮がついたままのものや芯が取れていないものを拾い出し、丁寧に説明する。
 ただ、全部の野菜について知っているわけではなかったため、拾い上げなかったものの中に芯が残ったものがまだあったことに、ジョセフは気づかなかった。

 そして次の過程にいく時に更なる問題があることに気がつく。

「……クリス様、鍋はどこでしょう?」
「……すっかり忘れてた」

 肝心の鍋がないことに料理をほとんどしたことない2人は、直前まで気がつかなかったのである。
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