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魔王、選択する18
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その後、皆もちらほらと集まり朝食が開始された。
出てきたのは昨日の夕食に比べると質素だったが、果実と肉、たまにパンの食事よりはずっときちんとした料理だったため、皆、嬉しそうに食べている。
イリエがいなかったのとメイがいろいろと気遣ってくれたため、クリスもリラックスして朝食を食べることができた。
クリスはその後少年たちに頼み、改造魔物となったものたちへ食事を届けた。
一応、生肉や生野菜も用意したが人気はなく、ほとんど食べられていない。食事は人間の時と同じようだ。
クリスは残飯を彼らの世話を任せていたジョセフと共に片付けると、身を引き締める。
これから他の少年たちに今までのことと今後のことを話さなければならないからだ。
クリスが案内されたのは粗末なベッドがいくつも並ぶ部屋で、調度品はほとんど置かれていなかった。
そこに十数人の子供がそれぞれの格好で座っている。
彼らがクリスに向ける目には、不審や恐れの色が濃かった。
それに構わず、クリスは真剣な顔で話し始める。
「ここに集まってもらったのは、君たちに話があるからだ」
何人かがビクッと肩を震わせたが、クリスは気にしないようにして話し続ける。
クリスはイリエが今までしていたこと、改造された彼らのこと、昨日メイと話した今後君たちをどうするのかなどを話す。
途中、特にイリエがしていたことについて話した時ざわざわとしたが、最終的には皆黙って聞いてくれた。
話し終わると、クリスは息をついた。思った以上に緊張していたらしい。
「……嘘つき」
少年たちの1人がポツリとそう呟いた。
クリスが目をやると、その少年は真っ直ぐ見返して来る。
「嘘つき! 旦那様が悪い人なわけないんだ! お前みたいな魔族の方がずっと悪い奴じゃないか!」
その1人を皮切りに、少年たちは騒ぎだした。
「そうだ、そうだ!」
「魔族が言うことなんて信じられねぇ!」
「あんないい方が、悪いことをするわけがない!」
子供たちから次々罵声を浴びるクリスは「あ、やっぱりこうなるか」と達観していた。
魔族が人間にとって脅威である現状ではイリエよりクリスの方が信頼できないだろう。
それにイリエは少年たちにとって「良い主人」だったらしく、その主人を悪く言うのはどう考えても心証が悪い。
それでも本当のことを言ったのは彼らに対し誠実でいたかったのと嘘をつきたくなかったからだ。
なので信じてもらえないのも罵声を浴びるのも予想できたため、心の準備はできていた。
まぁ、ダメージはゼロではないが。
「いろいろ言いたいことはわかるけど、一旦落ち着いて」
「これが落ち着けるか!」
「お前、旦那様をどうした!」
「そんな変な怪物がいるんなら見せろ!」
クリスが宥めたが逆効果だった。
どうやらクリスがイリエに何かしたかもしれないという憶測まで漂っている。
実際、殴ったので間違いではないが、あれくらいなら大した怪我すらしていないだろう。
それに改造魔物たちを見せることをクリスは躊躇していた。
確かにそれが信じてもらうには1番手っ取り早いが、見せたところでパニックになる気がするし、彼らを見世物みたいにするのは気が引けた。
だからクリスは強引に進めることにした。
クリスは両手に魔力を込め、叩く。
パンッと魔法で増幅された音が部屋に響いた。
少年たちは驚き、シンッと静かになる。
クリスは1人の少年に近づき、首輪に手をかける。
「動かないで」
「ひっ!?」
少年はひきつった悲鳴を上げたが、逃げることはなかった。というより、恐怖のあまり固まっている。
クリスは人差し指に火の魔法を使い、少年の首輪を素早く切断した。
クリスの火の魔法は何でも灰にしてしまうが、こういった部分的に切断するには優秀である。
クリスは少年の首輪を外す。
首輪を外された少年は呆気に取られていた。
出てきたのは昨日の夕食に比べると質素だったが、果実と肉、たまにパンの食事よりはずっときちんとした料理だったため、皆、嬉しそうに食べている。
イリエがいなかったのとメイがいろいろと気遣ってくれたため、クリスもリラックスして朝食を食べることができた。
クリスはその後少年たちに頼み、改造魔物となったものたちへ食事を届けた。
一応、生肉や生野菜も用意したが人気はなく、ほとんど食べられていない。食事は人間の時と同じようだ。
クリスは残飯を彼らの世話を任せていたジョセフと共に片付けると、身を引き締める。
これから他の少年たちに今までのことと今後のことを話さなければならないからだ。
クリスが案内されたのは粗末なベッドがいくつも並ぶ部屋で、調度品はほとんど置かれていなかった。
そこに十数人の子供がそれぞれの格好で座っている。
彼らがクリスに向ける目には、不審や恐れの色が濃かった。
それに構わず、クリスは真剣な顔で話し始める。
「ここに集まってもらったのは、君たちに話があるからだ」
何人かがビクッと肩を震わせたが、クリスは気にしないようにして話し続ける。
クリスはイリエが今までしていたこと、改造された彼らのこと、昨日メイと話した今後君たちをどうするのかなどを話す。
途中、特にイリエがしていたことについて話した時ざわざわとしたが、最終的には皆黙って聞いてくれた。
話し終わると、クリスは息をついた。思った以上に緊張していたらしい。
「……嘘つき」
少年たちの1人がポツリとそう呟いた。
クリスが目をやると、その少年は真っ直ぐ見返して来る。
「嘘つき! 旦那様が悪い人なわけないんだ! お前みたいな魔族の方がずっと悪い奴じゃないか!」
その1人を皮切りに、少年たちは騒ぎだした。
「そうだ、そうだ!」
「魔族が言うことなんて信じられねぇ!」
「あんないい方が、悪いことをするわけがない!」
子供たちから次々罵声を浴びるクリスは「あ、やっぱりこうなるか」と達観していた。
魔族が人間にとって脅威である現状ではイリエよりクリスの方が信頼できないだろう。
それにイリエは少年たちにとって「良い主人」だったらしく、その主人を悪く言うのはどう考えても心証が悪い。
それでも本当のことを言ったのは彼らに対し誠実でいたかったのと嘘をつきたくなかったからだ。
なので信じてもらえないのも罵声を浴びるのも予想できたため、心の準備はできていた。
まぁ、ダメージはゼロではないが。
「いろいろ言いたいことはわかるけど、一旦落ち着いて」
「これが落ち着けるか!」
「お前、旦那様をどうした!」
「そんな変な怪物がいるんなら見せろ!」
クリスが宥めたが逆効果だった。
どうやらクリスがイリエに何かしたかもしれないという憶測まで漂っている。
実際、殴ったので間違いではないが、あれくらいなら大した怪我すらしていないだろう。
それに改造魔物たちを見せることをクリスは躊躇していた。
確かにそれが信じてもらうには1番手っ取り早いが、見せたところでパニックになる気がするし、彼らを見世物みたいにするのは気が引けた。
だからクリスは強引に進めることにした。
クリスは両手に魔力を込め、叩く。
パンッと魔法で増幅された音が部屋に響いた。
少年たちは驚き、シンッと静かになる。
クリスは1人の少年に近づき、首輪に手をかける。
「動かないで」
「ひっ!?」
少年はひきつった悲鳴を上げたが、逃げることはなかった。というより、恐怖のあまり固まっている。
クリスは人差し指に火の魔法を使い、少年の首輪を素早く切断した。
クリスの火の魔法は何でも灰にしてしまうが、こういった部分的に切断するには優秀である。
クリスは少年の首輪を外す。
首輪を外された少年は呆気に取られていた。
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