その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、選択する3

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 ラヌルを見てから数日経った頃、クリスたちは森の中に1軒の洋館を発見した。

「なんだろう、ここ?」

 クリスは首を傾げる。
 洋館の周囲には他に建物はなく、木々がうっそうと生えているだけだった。
 入口の大きさから、オークや巨人のような大きな種族ではなく、人間や魔族のような大きさの種族がすんでいるのだろうと推測できる。
 わからないのは、誰が何のためにこの洋館を建てたのかだった。
 木こりや狩人などが住むには洋館は立派過ぎるし、貴族が住むにはここは不便な気がする。
 どちらにしろ、ここの住人には関わらない方がよさそうだとクリスが判断し、先へ進もうとした。

 その時、洋館の扉がひらいた。
 そこから出てきたのは、痩せすぎ頬のこけた灰色の髪の人間の男だった。貴族が着るような高級そうな服装の上に白衣を羽織っている。
 男はクリスたちを見ると、顔に笑みを張り付けた。
 取ってつけたような作られた笑みで、クリスはどうもこの男に不快感を感じた。

「これはこれは、勇者様一行ではありませんか」

 男の言葉に、クリスは眉をひそめる。

「どこをどう見たら勇者一行だと思うわけ?」

 実際、クリスたちを見て、勇者一行だと思う者はほとんどいないだろう。

「お戯れを。最近、魔王討伐に向かった勇者殿が魔族で、オークたちを連れていることは話題になっているのですよ?」

 クリスは渋面を浮かべる。
 クリスたちのことを知っているのは、メイの国の王たちやシャルルがあった村くらいだ。彼らが積極的にクリスたちのことを話すとは思えない。
 つまり、目の前の男はそれを知り得る地位や立場にいるのだろう。

「だったらなんだい? 僕らに何か用があるのかい?」

 クリスは警戒していた。
 この男とは関わりたくないと本能が告げている。
 男は笑みを深くした。

「長旅でお疲れでしょう? 話を聞かせてくれるついでに、私の家に泊まりませんか?」
「こと……」
「え、いいの!?」

 断ろうとしたクリスの横で、サーニャが身を乗り出した。

「ええ、もちろんです。皆さまの分のベッドもありますよ?」
「やったー! 久々のベッド!」

 大喜びするサーニャに、クリスは脱力感を覚えて反対する気力を無くした。
 こうして、クリスたちは怪しい洋館に泊まることになった。
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