その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王誕生(?)秘話5

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 だが、虐殺が起こるよりはるかにましであり、多くて百年の平和は保たれる。そのため、勇者のことは人の形をした災害のように思うことにし、そのための対策に力をいれることになった。

 まず、勇者が来たら速やかに国民を避難させ、兵士たちは国民に危害が加えられないように勇者の相手をし、国王がいる城へ誘導する。この時、兵士たちは危なくなったら、速やかに用意してある煙幕や魔道具を使って逃げ、犠牲者はなるべく出さないようにする。

 そして最後に国王が勇者の相手をし、圧勝して取引を持ちかける。

 その後、勇者を転移魔法などで国境付近へ移動させる。

 これを勇者が諦めるまで繰り返すのだ。

 そのため、国王になる可能性がある者はこれでもかというほど厳しい鍛練が課せられ、最終的に国で1、2を争うほど強くなるのだった。

「まぁ、だから、王に勝てなくても落ち込むことではないんだよね」

 と、実際に国で1、2の実力を持つクリスは言った。
 ヨハンはむぅと唸った後、ふと、気がついたように聞く。

「そういえば、魔王……じゃなくて、国王ってどうやって選ばれるんだ?」
「グリムっていう初代国王が作らせた剣が選ぶよ」

 クリスが答えると、ヨハンが目を丸くした。

「へぇ、勇者みたいに抜くのか?」
「いや、普通に口頭で名指しだよ」

 クリスの答えに、一瞬、シンと場が静まる。

「……口頭って口があるのか?」
「いや、ないけど、しゃべるよ。毎年講演会も開いているし」
「剣が講演会!?」

 ヨハンが驚いているが、なぜかわからず、クリスは首を傾げる。

「そんなにおかしいかい?」
「いや、だって剣だぞ!?」
「そうだけど国ができてからすぐくらいからいるから、話題とか豊富だよ。講演会は毎回大人気だし」

 実際、グリムの話は面白いのだ。クリスは幼少のころから勉強のためによく話を聞いたが、毎回退屈しなかった。

「いや、そうじゃなくて……」

 ヨハンはどう言えばいいかわからずモヤモヤした。

「……それはともかく、今の魔王ってどのような方なんですか?」

 メイが横から、クリスが逸らそうとしていた話題を戻してきた。
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