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魔王、盗まれる11
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クリスとヨハンは口をあんぐり開けた。
「お前たちがなんのために旅しているか知らねぇけどさ、俺がいたら役に立つだろ? こう見えて有能なんだからな!
だからお前たちについて行ってやるよ!」
どこに根拠があるかわからないが、少年は胸を反らして自信満々に言った。
クリスとヨハンは顔を見合わせる。
「……ついて来るのは別に構わないけど、盗賊たちのところへ戻らなくて大丈夫なのかい?」
とりあえず、クリスが聞いてみる。
「もちろん! すっごいお宝持って行けば逆に誉めてもらえるし!」
少年は目をキラキラさせて言った。
何を根拠にしているかわからないが、クリスたちについて行けば宝にありつけると思っているらしい。
「……えっと、たぶん、僕らについて行っても、宝とか手に入らないと思うよ?」
クリスは少年に言った。
「え、そうなのか?」
「うん。そもそも、僕らが何の目的で旅しているかわかる?」
少年は首を横に振る。
オークと魔族だけならまだしもそこに人間もいると、旅の目的は見当もつかなかった。
「僕らは魔王の配下の待遇改善のために、魔王のところに行くところなんだ」
少年の目と口がこれでもかと限界まで見開かれる。
「いや、おれはお前だけだからな?
俺たちは魔王を倒すために旅をしているんだ」
ヨハンが付け足す。
「……ま、待て待て待て!?
なんでお前たちがそんなことを!?
それって勇者の仕事じゃねーか!?」
少年が目を見開いたまま、慌てて言った。
「何言っている! クリスは俺が選んだ勇者だ!」
「シャルル、ややこしくなるから黙って」
シャルルが余計なことを言ったので、クリスが注意する。
「は!? え!? まさか、それ、聖剣!?
は!? あれ!? お前、魔族だよな!?」
少年は混乱している。
「こいつは魔族だが、俺が選んだ勇者だ!」
シャルルは相変わらず、主張を変えない。
クリスはため息をついた。
「……僕は別の世界から来た魔族なんだ。
そのせいか、なぜかシャルルに選ばれてしまったんだよね……」
「いや、お前だから選んだんだけど」
遠い目をするクリスに、シャルルが反論する。
「まぁ、シャルルの気の迷いはともかく……」
「気の迷いって……」
クリスの言いぐさに、シャルルは絶句する。
それに構わず、クリスは言葉を続けた。
「魔王に彼の配下の待遇改善と、ついでに世界の滅亡防止のために交渉に行くんだけど、ついてくるかい?」
「断る」
少年はあっさりと前言を撤回した。
少年の顔色は真っ青を通り越して白くなっている。
「そうかい?」
「いや、だって頭おかしいだろ!? 魔王に交渉とか馬鹿じゃねーの!?
つーか、なんで世界の滅亡防止の方がついでなんだよ!?」
「こいつ、いっつもなんでか『ついで』って言うんだよ」
いきり立つ少年に、ヨハンが困った顔で言った。
「だって、本当に世界滅亡したいかわからないし、なんでしたいかもわからないんだから、それについて聞いてからでいいでしょ?」
クリスが口を尖らせる。
「……魔王って世界を滅亡させる奴じゃねーの?」
少年が首を傾げた。
クリスは苦笑する。
「少なくとも、僕がいた世界で魔王と呼ばれていた者たちは、誰も世界を滅亡させたり、征服したりなんかしなかったよ」
むしろ、人間と関わらず静かに暮らしていたいと思っていたのだ。
なのになぜか人間たちに誤解されていた。
「魔王って何人もいるのか?」
ヨハンがクリスに尋ねた。
「今の王で5代目だよ」
ちなみに今の王はクリスである。
そんなことは露知らず、ヨハンは「へぇ、そうなのか」と頷く。
「……じゃあ、がんばれよ。お前たちが無事なように遠くから祈っとくから」
少年が手を振る。
もうついて行く気は全くないようだ。
クリスとヨハンは苦笑して、ジョセフは無表情で、少年のもとを去った。
「お前たちがなんのために旅しているか知らねぇけどさ、俺がいたら役に立つだろ? こう見えて有能なんだからな!
だからお前たちについて行ってやるよ!」
どこに根拠があるかわからないが、少年は胸を反らして自信満々に言った。
クリスとヨハンは顔を見合わせる。
「……ついて来るのは別に構わないけど、盗賊たちのところへ戻らなくて大丈夫なのかい?」
とりあえず、クリスが聞いてみる。
「もちろん! すっごいお宝持って行けば逆に誉めてもらえるし!」
少年は目をキラキラさせて言った。
何を根拠にしているかわからないが、クリスたちについて行けば宝にありつけると思っているらしい。
「……えっと、たぶん、僕らについて行っても、宝とか手に入らないと思うよ?」
クリスは少年に言った。
「え、そうなのか?」
「うん。そもそも、僕らが何の目的で旅しているかわかる?」
少年は首を横に振る。
オークと魔族だけならまだしもそこに人間もいると、旅の目的は見当もつかなかった。
「僕らは魔王の配下の待遇改善のために、魔王のところに行くところなんだ」
少年の目と口がこれでもかと限界まで見開かれる。
「いや、おれはお前だけだからな?
俺たちは魔王を倒すために旅をしているんだ」
ヨハンが付け足す。
「……ま、待て待て待て!?
なんでお前たちがそんなことを!?
それって勇者の仕事じゃねーか!?」
少年が目を見開いたまま、慌てて言った。
「何言っている! クリスは俺が選んだ勇者だ!」
「シャルル、ややこしくなるから黙って」
シャルルが余計なことを言ったので、クリスが注意する。
「は!? え!? まさか、それ、聖剣!?
は!? あれ!? お前、魔族だよな!?」
少年は混乱している。
「こいつは魔族だが、俺が選んだ勇者だ!」
シャルルは相変わらず、主張を変えない。
クリスはため息をついた。
「……僕は別の世界から来た魔族なんだ。
そのせいか、なぜかシャルルに選ばれてしまったんだよね……」
「いや、お前だから選んだんだけど」
遠い目をするクリスに、シャルルが反論する。
「まぁ、シャルルの気の迷いはともかく……」
「気の迷いって……」
クリスの言いぐさに、シャルルは絶句する。
それに構わず、クリスは言葉を続けた。
「魔王に彼の配下の待遇改善と、ついでに世界の滅亡防止のために交渉に行くんだけど、ついてくるかい?」
「断る」
少年はあっさりと前言を撤回した。
少年の顔色は真っ青を通り越して白くなっている。
「そうかい?」
「いや、だって頭おかしいだろ!? 魔王に交渉とか馬鹿じゃねーの!?
つーか、なんで世界の滅亡防止の方がついでなんだよ!?」
「こいつ、いっつもなんでか『ついで』って言うんだよ」
いきり立つ少年に、ヨハンが困った顔で言った。
「だって、本当に世界滅亡したいかわからないし、なんでしたいかもわからないんだから、それについて聞いてからでいいでしょ?」
クリスが口を尖らせる。
「……魔王って世界を滅亡させる奴じゃねーの?」
少年が首を傾げた。
クリスは苦笑する。
「少なくとも、僕がいた世界で魔王と呼ばれていた者たちは、誰も世界を滅亡させたり、征服したりなんかしなかったよ」
むしろ、人間と関わらず静かに暮らしていたいと思っていたのだ。
なのになぜか人間たちに誤解されていた。
「魔王って何人もいるのか?」
ヨハンがクリスに尋ねた。
「今の王で5代目だよ」
ちなみに今の王はクリスである。
そんなことは露知らず、ヨハンは「へぇ、そうなのか」と頷く。
「……じゃあ、がんばれよ。お前たちが無事なように遠くから祈っとくから」
少年が手を振る。
もうついて行く気は全くないようだ。
クリスとヨハンは苦笑して、ジョセフは無表情で、少年のもとを去った。
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