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魔王、盗まれる6
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クリスはルディアに聞いた。
「ジョセフさんはずっとネズミだったんですけど、戻らなくて大丈夫だったんですか?」
通常、魔法は使用者の意識が途絶えると停止する。睡眠や気絶などでもだ。
だが、ジョセフはルディアの記憶にある限りずっとネズミの姿のままだった。
「ジョセフの場合、姿の維持ではなくて切り替えの方に魔力を使うらしいから、戻らなくても負担はないんだ。それに、変身しても魔法は使えるしね」
「え、そうなんですか?」
驚くルディアにクリスは頷いた。
「僕の服に洗浄の魔法をかけてもらったりしてたからね」
洗浄の魔法とは服に付いた汚れをきれいにする魔法である。これでクリスは清潔な服を毎日着ることができた。
すると、周りからなぜか呆れたような視線がクリスに注がれた。
「なぁ、まさか下着もか?」
「うん、そうだけど?」
替えの下着は用意したが、洗浄の魔法はジョセフにかけてもらっていたクリスは素直に頷く。
「……お前、洗濯くらい自分でやれよ」
ヨハンが心底呆れたように言う。
「え、いや、だって僕、洗浄の魔法、苦手だし」
クリスは慌てて弁明した。
クリスがやると毎回服がぼろぼろになるのだ。それならできる者にやらせた方がいい。
だが、なぜか皆の呆れは緩和されなかった。
その時『クリス様、見つけました』とジョセフの声が聞こえた。
ジョセフが使った特定の者に声を届ける魔法だ。
これ幸いと、クリスは皆に言う。
「ジョセフが見つけたみたいだね。そこに向かおう」
くるりと体の向きを変え、クリスは魔法でジョセフが示す方向に向かう。
誤魔化されたように感じながらも、他の者もクリスについて行った。
「……そういえば、どうやって連絡取っているのよ?」
迷いなく進むクリスに後ろからついて来ているサーニャが聞いた。
「特定の相手に言葉を届ける魔法があるんだ。普通は位置を知っていなきゃなんだけど、相手の髪とか爪とか体の一部を持っていれば、遠く離れても声を届けることができるんだ」
「ああ、じゃあ、あのネズミはあんた髪の毛でも持っているのね」
「いや、昨日血を飲ませたからそれだと思う」
なぜかサーニャが何か言いたげな顔をしたので、クリスは首を傾げる。
「どうしたんだい?」
「……あんたさ、なんで平気で血なんかあげるのよ?」
サーニャが何が言いたいのかわからなくてクリスはきょとんとする。
「……お腹がすいている者がいて自分のところに食べ物があったら、分けるものじゃないかな?」
もちろん自分を犠牲にして飢えては相手も気を遣ったり罪悪感を抱くので、余裕がある場合に限るが。
そもそもクリスは血を飲まないし、あげても問題はないと思う。
「そうじゃなくて、嫌悪感とかないの?」
「え、全然」
不死者の中でも吸血鬼と呼ばれる者はそういう体質なのだ。精気が必要な夢魔や制御具が必要な魔族とたいして変わらない。
なのだが、サーニャは釈然としていないようだ。
「……じゃあ、肉体を食べる奴がいたら、あんたはあげるわけ?」
うーん、とクリスは考える。
「……治療可能な範囲なら」
やらなければいけないこともあるので、さすがに死ぬレベルのものはあげられないが、それでも自己回復できるところならあげることができると思う。
「ダメです!」
すると、メイがいつもよりも強い口調できっぱりと言った。
そしてクリスをキッと睨む。
「クリス様、人々に親切にすることは良いことですが、まず自分を大事になさってください!」
「そうですよ!クリスさんは自分を粗末にし過ぎです!」
なぜかメイに同調して、ルディアも怒っている。
そして、なぜかオークたちも大きく頷いている。
「……大事にしているつもりなんだけどなぁ」
クリスはぼやく。
一応、国王なのでいろいろ気をつけているのだが、そう見えないらしい。
そうこうしているうちに、ジョセフが示してきたところが近づいて来た。
「ジョセフさんはずっとネズミだったんですけど、戻らなくて大丈夫だったんですか?」
通常、魔法は使用者の意識が途絶えると停止する。睡眠や気絶などでもだ。
だが、ジョセフはルディアの記憶にある限りずっとネズミの姿のままだった。
「ジョセフの場合、姿の維持ではなくて切り替えの方に魔力を使うらしいから、戻らなくても負担はないんだ。それに、変身しても魔法は使えるしね」
「え、そうなんですか?」
驚くルディアにクリスは頷いた。
「僕の服に洗浄の魔法をかけてもらったりしてたからね」
洗浄の魔法とは服に付いた汚れをきれいにする魔法である。これでクリスは清潔な服を毎日着ることができた。
すると、周りからなぜか呆れたような視線がクリスに注がれた。
「なぁ、まさか下着もか?」
「うん、そうだけど?」
替えの下着は用意したが、洗浄の魔法はジョセフにかけてもらっていたクリスは素直に頷く。
「……お前、洗濯くらい自分でやれよ」
ヨハンが心底呆れたように言う。
「え、いや、だって僕、洗浄の魔法、苦手だし」
クリスは慌てて弁明した。
クリスがやると毎回服がぼろぼろになるのだ。それならできる者にやらせた方がいい。
だが、なぜか皆の呆れは緩和されなかった。
その時『クリス様、見つけました』とジョセフの声が聞こえた。
ジョセフが使った特定の者に声を届ける魔法だ。
これ幸いと、クリスは皆に言う。
「ジョセフが見つけたみたいだね。そこに向かおう」
くるりと体の向きを変え、クリスは魔法でジョセフが示す方向に向かう。
誤魔化されたように感じながらも、他の者もクリスについて行った。
「……そういえば、どうやって連絡取っているのよ?」
迷いなく進むクリスに後ろからついて来ているサーニャが聞いた。
「特定の相手に言葉を届ける魔法があるんだ。普通は位置を知っていなきゃなんだけど、相手の髪とか爪とか体の一部を持っていれば、遠く離れても声を届けることができるんだ」
「ああ、じゃあ、あのネズミはあんた髪の毛でも持っているのね」
「いや、昨日血を飲ませたからそれだと思う」
なぜかサーニャが何か言いたげな顔をしたので、クリスは首を傾げる。
「どうしたんだい?」
「……あんたさ、なんで平気で血なんかあげるのよ?」
サーニャが何が言いたいのかわからなくてクリスはきょとんとする。
「……お腹がすいている者がいて自分のところに食べ物があったら、分けるものじゃないかな?」
もちろん自分を犠牲にして飢えては相手も気を遣ったり罪悪感を抱くので、余裕がある場合に限るが。
そもそもクリスは血を飲まないし、あげても問題はないと思う。
「そうじゃなくて、嫌悪感とかないの?」
「え、全然」
不死者の中でも吸血鬼と呼ばれる者はそういう体質なのだ。精気が必要な夢魔や制御具が必要な魔族とたいして変わらない。
なのだが、サーニャは釈然としていないようだ。
「……じゃあ、肉体を食べる奴がいたら、あんたはあげるわけ?」
うーん、とクリスは考える。
「……治療可能な範囲なら」
やらなければいけないこともあるので、さすがに死ぬレベルのものはあげられないが、それでも自己回復できるところならあげることができると思う。
「ダメです!」
すると、メイがいつもよりも強い口調できっぱりと言った。
そしてクリスをキッと睨む。
「クリス様、人々に親切にすることは良いことですが、まず自分を大事になさってください!」
「そうですよ!クリスさんは自分を粗末にし過ぎです!」
なぜかメイに同調して、ルディアも怒っている。
そして、なぜかオークたちも大きく頷いている。
「……大事にしているつもりなんだけどなぁ」
クリスはぼやく。
一応、国王なのでいろいろ気をつけているのだが、そう見えないらしい。
そうこうしているうちに、ジョセフが示してきたところが近づいて来た。
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