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魔王、背中を押す5
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「な、なんで火が消えてないんだ?」
ヨハンは火に気が付くと、驚いた声を上げる。
「燃え移ったものは、魔法を使った者の意識がなくなっても消えないよ」
魔道具とかで薪に火を付けた場合、魔道具の火を消しても薪の火は消えないのと同じだろう。
「向こうの方はルディアが少しずつ消しているから、僕はこっちの方を消すことにしたんだ」
聞いたところ、ルディアは大抵の属性の魔法が使えるそうだ。もちろん、水魔法も。これは人間ではすごいことらしい。
「じゃあ、お前も水魔法が使えるのか?」
「え……まぁ、うん」
煮え切らないクリスの返事に、ヨハンは眉を寄せる。
「なんか問題あるのか?」
「……実は、水魔法はあまり使ったことがないんだよね」
クリスは気まずそうに言った。
昔、クリスが小さい頃、覚えたての水魔法で水鉄砲をしたら城壁を貫いてしまい、それでこっぴどく怒られて以来、あまり使わないようにしていたからだ。
「……おい、大丈夫なのか?」
「大丈夫、大丈夫」
ヨハンには強がってそう答えたが、内心、少し不安だった。
「じゃあ、消火するから、一応、避難して」
「避難の必要があるのかよ!」
ツッコミをいれつつも、ヨハンはクリスから距離を取る。
ヨハンが離れたのを確認すると、クリスは水魔法に集中する。
水魔法には空中や近くにある水を操るものと、魔力を直接水に変えるものがある。
空中の水を操る方が簡単だし、魔力を水に変える方は誰でも適正があるわけではなく、難易度が高い。
だが、今回は魔力を水に変える方を使うことにした。空気の乾燥を防ぐためだ。
クリスは燃えている家や木の上に魔力を集め、それを水に変える。
そして、それを落とした。
バッシャーンという音と共に、下にあった家や木にかかり火を消す。
それを何回も繰り返す。
まどろっこしい方法だが、放水状に水をかけるとクリスの場合、水圧でさらなる損害を与えかねない。
「ふぅ」
最後の火のついた家の消火を終えると、慣れない魔法で少し疲れたクリスは息を吐く。
だが、まだやることがあるので、クリスは男に近づいた。
クリスはズボンのポケットを探る。
「……あった」
取り出したのは、細かな装飾がある腕輪だった。クリスはそれを男の腕に取り付ける。
「なんだ、それ?」
消火が終わったことを確認したヨハンがクリスに近づいて聞く。
「これは拘魔具。魔法を使えなくする魔道具だよ」
クリスの腕の制御具にも似ているが、こちらは完全に魔法が使えなくなるものだ。
拘魔具は本来、魔力が高い者が魔力に頼らずに体を鍛えるために作られたそうだ。
だが、魔力の高い者を拘束するのにも便利なので、罪人にも使われたりするようになり、さらに犯罪にまで使われるようになったため、使用には国の許可が必要になった。
クリスの場合は本来の目的である、魔力に頼らない体作りのために渡されていた。
まぁ、あまり使わないのでポケットに入れっぱなしだったが。
「さて、後は……」
クリスはまた、ポケットを漁る。
今度取り出したのは、植物の種だった。
それを男に投げつけると、種子はみるみる成長し、蔓草となって男を拘束した。
「……なんか、魔王みたいだな」
ヨハンの何気ない言葉にクリスはわずかに動揺する。
「……え、どこが?」
なんとか平静を繕ってクリスは聞く。
「いや、魔王もこういう魔法を使ってたからさ……」
「魔王以外でもこの魔法を使える者はいるよ」
「まぁ、そうだろうな」
ヨハンは1つ頷くいて納得したようなので、クリスは気づかれないように息を吐いた。
なるべくこの魔法は使わないようにしよう。
「う、うう……」
そうしているうちに、魔族の男は目を覚ました。
ヨハンは火に気が付くと、驚いた声を上げる。
「燃え移ったものは、魔法を使った者の意識がなくなっても消えないよ」
魔道具とかで薪に火を付けた場合、魔道具の火を消しても薪の火は消えないのと同じだろう。
「向こうの方はルディアが少しずつ消しているから、僕はこっちの方を消すことにしたんだ」
聞いたところ、ルディアは大抵の属性の魔法が使えるそうだ。もちろん、水魔法も。これは人間ではすごいことらしい。
「じゃあ、お前も水魔法が使えるのか?」
「え……まぁ、うん」
煮え切らないクリスの返事に、ヨハンは眉を寄せる。
「なんか問題あるのか?」
「……実は、水魔法はあまり使ったことがないんだよね」
クリスは気まずそうに言った。
昔、クリスが小さい頃、覚えたての水魔法で水鉄砲をしたら城壁を貫いてしまい、それでこっぴどく怒られて以来、あまり使わないようにしていたからだ。
「……おい、大丈夫なのか?」
「大丈夫、大丈夫」
ヨハンには強がってそう答えたが、内心、少し不安だった。
「じゃあ、消火するから、一応、避難して」
「避難の必要があるのかよ!」
ツッコミをいれつつも、ヨハンはクリスから距離を取る。
ヨハンが離れたのを確認すると、クリスは水魔法に集中する。
水魔法には空中や近くにある水を操るものと、魔力を直接水に変えるものがある。
空中の水を操る方が簡単だし、魔力を水に変える方は誰でも適正があるわけではなく、難易度が高い。
だが、今回は魔力を水に変える方を使うことにした。空気の乾燥を防ぐためだ。
クリスは燃えている家や木の上に魔力を集め、それを水に変える。
そして、それを落とした。
バッシャーンという音と共に、下にあった家や木にかかり火を消す。
それを何回も繰り返す。
まどろっこしい方法だが、放水状に水をかけるとクリスの場合、水圧でさらなる損害を与えかねない。
「ふぅ」
最後の火のついた家の消火を終えると、慣れない魔法で少し疲れたクリスは息を吐く。
だが、まだやることがあるので、クリスは男に近づいた。
クリスはズボンのポケットを探る。
「……あった」
取り出したのは、細かな装飾がある腕輪だった。クリスはそれを男の腕に取り付ける。
「なんだ、それ?」
消火が終わったことを確認したヨハンがクリスに近づいて聞く。
「これは拘魔具。魔法を使えなくする魔道具だよ」
クリスの腕の制御具にも似ているが、こちらは完全に魔法が使えなくなるものだ。
拘魔具は本来、魔力が高い者が魔力に頼らずに体を鍛えるために作られたそうだ。
だが、魔力の高い者を拘束するのにも便利なので、罪人にも使われたりするようになり、さらに犯罪にまで使われるようになったため、使用には国の許可が必要になった。
クリスの場合は本来の目的である、魔力に頼らない体作りのために渡されていた。
まぁ、あまり使わないのでポケットに入れっぱなしだったが。
「さて、後は……」
クリスはまた、ポケットを漁る。
今度取り出したのは、植物の種だった。
それを男に投げつけると、種子はみるみる成長し、蔓草となって男を拘束した。
「……なんか、魔王みたいだな」
ヨハンの何気ない言葉にクリスはわずかに動揺する。
「……え、どこが?」
なんとか平静を繕ってクリスは聞く。
「いや、魔王もこういう魔法を使ってたからさ……」
「魔王以外でもこの魔法を使える者はいるよ」
「まぁ、そうだろうな」
ヨハンは1つ頷くいて納得したようなので、クリスは気づかれないように息を吐いた。
なるべくこの魔法は使わないようにしよう。
「う、うう……」
そうしているうちに、魔族の男は目を覚ました。
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