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魔王、刺される3
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「そういえば、お前、怪我大丈夫なのか?」
笑いが収まったあと、子どもの1人が聞く。
「それなら、もう治ったよ」
クリスが答えると、また、周りがシンと静かになる。
そして子どもたちがざわざわしだした。
「……あの怪我が?」
「僕は回復魔法が使えるから、あれくらいなら、あっという間に治るよ」
クリスが答えると、ざわめきがさらに大きくなる。
「魔法使えるの!?」
「しかも回復魔法って珍しいんだろ!?」
「何にも言ってなかった……ってことは無詠唱!?」
口々に出てくる言葉に、クリスは圧倒される。
(そっか、人間だと魔法使える方が少数なんだ)
魔族の場合は魔法を使えない方がまれなので忘れていた。
回復魔法も自己回復なら魔族は大抵使えるし、無詠唱も当たり前だが、人間にとつては珍しいのだろう。
「えーと、こう見えても魔法が得意なんだ。そんじょそこらの魔族には負けないよ」
実際に攻撃力という意味ではクリスはどの魔族よりも強い魔法が使える。威力が強過ぎる上に細かいコントロールが下手で、生活で使う魔法はうまくできないが。
リンがクリスをじっと見た。
「……お兄さん、魔王を倒してくれる?」
クリスは困った顔をする。
「……魔王が話し合いもできない奴なら」
えー、と子どもたちから不平不満が上がるが、そこは譲れなかった。
「……まぁ、話し合いができても、何発か殴るくらいはしようかな」
そう付け加えたのは、リンの父のことで少し怒っているからかも知れない。
魔王に勝ってねー、がんばれー、と言われながら、クリスは子どもたちと別れた。
服に血が付いたままだということをすっかり忘れて買い物を再開したため、人々に騒がれたのは、また、別の話。
「あら? その服の血、どうしたの?」
サーニャがクリスの服の血に気がついて聞いてくる。
「まぁ、ちょっとね」
クリスは適当に誤魔化した。
皆の様子を見るために置いていったジョセフが憤っているので、肩に乗せて撫でてなだめる。
「俺より先に、お前に怪我させた奴がいるのか!?」
勇者が驚きながら割り込んできた。
「……君で怪我するつもりはないけど」
ちなみに、この世界に来て、真っ先にクリスに怪我させたのは森の木の枝である。
ただ、油断していたとはいえ、生き物で怪我をさせたのはリンが初めてなので、確かにすごいことかも知れない。
「クリス様ー!」
その時、街の方から誰かが走ってきた。
こちらに向かって来たのは、白に近い金髪に、紫色の瞳の女の子だった。
「メイ!?」
驚くクリスに、メイは体当たりするように抱きついた。
「クリス様、私諦めたくはありません! なので、一緒に行かせてください!」
「……君と結婚するつもりはないけど」
目をキラキラさせるメイに、クリスの顔はひきつる。
「ええ、ですが、それは私が未成年だからでしょう?」
メイは力強い笑みを浮かべる。
「だったら、返事は3年後にお願いします! それなら、問題ないでしょう?」
(強い……)
クリスは彼女の強さを見誤っていた。
メイはクリスが必死になって考えた理由など、吹き飛ばす強さを持っていた。
その後も野宿だとか風呂に入れないとかいろいろ言ってみたが、メイの決心はぴくりともしない。
結局、クリスが根負けし、メイを連れて行くことになった。
こうして、クリスの旅に新たな仲間が加わったのだった。
笑いが収まったあと、子どもの1人が聞く。
「それなら、もう治ったよ」
クリスが答えると、また、周りがシンと静かになる。
そして子どもたちがざわざわしだした。
「……あの怪我が?」
「僕は回復魔法が使えるから、あれくらいなら、あっという間に治るよ」
クリスが答えると、ざわめきがさらに大きくなる。
「魔法使えるの!?」
「しかも回復魔法って珍しいんだろ!?」
「何にも言ってなかった……ってことは無詠唱!?」
口々に出てくる言葉に、クリスは圧倒される。
(そっか、人間だと魔法使える方が少数なんだ)
魔族の場合は魔法を使えない方がまれなので忘れていた。
回復魔法も自己回復なら魔族は大抵使えるし、無詠唱も当たり前だが、人間にとつては珍しいのだろう。
「えーと、こう見えても魔法が得意なんだ。そんじょそこらの魔族には負けないよ」
実際に攻撃力という意味ではクリスはどの魔族よりも強い魔法が使える。威力が強過ぎる上に細かいコントロールが下手で、生活で使う魔法はうまくできないが。
リンがクリスをじっと見た。
「……お兄さん、魔王を倒してくれる?」
クリスは困った顔をする。
「……魔王が話し合いもできない奴なら」
えー、と子どもたちから不平不満が上がるが、そこは譲れなかった。
「……まぁ、話し合いができても、何発か殴るくらいはしようかな」
そう付け加えたのは、リンの父のことで少し怒っているからかも知れない。
魔王に勝ってねー、がんばれー、と言われながら、クリスは子どもたちと別れた。
服に血が付いたままだということをすっかり忘れて買い物を再開したため、人々に騒がれたのは、また、別の話。
「あら? その服の血、どうしたの?」
サーニャがクリスの服の血に気がついて聞いてくる。
「まぁ、ちょっとね」
クリスは適当に誤魔化した。
皆の様子を見るために置いていったジョセフが憤っているので、肩に乗せて撫でてなだめる。
「俺より先に、お前に怪我させた奴がいるのか!?」
勇者が驚きながら割り込んできた。
「……君で怪我するつもりはないけど」
ちなみに、この世界に来て、真っ先にクリスに怪我させたのは森の木の枝である。
ただ、油断していたとはいえ、生き物で怪我をさせたのはリンが初めてなので、確かにすごいことかも知れない。
「クリス様ー!」
その時、街の方から誰かが走ってきた。
こちらに向かって来たのは、白に近い金髪に、紫色の瞳の女の子だった。
「メイ!?」
驚くクリスに、メイは体当たりするように抱きついた。
「クリス様、私諦めたくはありません! なので、一緒に行かせてください!」
「……君と結婚するつもりはないけど」
目をキラキラさせるメイに、クリスの顔はひきつる。
「ええ、ですが、それは私が未成年だからでしょう?」
メイは力強い笑みを浮かべる。
「だったら、返事は3年後にお願いします! それなら、問題ないでしょう?」
(強い……)
クリスは彼女の強さを見誤っていた。
メイはクリスが必死になって考えた理由など、吹き飛ばす強さを持っていた。
その後も野宿だとか風呂に入れないとかいろいろ言ってみたが、メイの決心はぴくりともしない。
結局、クリスが根負けし、メイを連れて行くことになった。
こうして、クリスの旅に新たな仲間が加わったのだった。
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