45 / 179
魔王、求婚される5
しおりを挟む
「……どういうことだい?」
クリスは訝しげにメイに聞く。
「今までも異世界から召喚した者はいます。
ですが、元の世界に帰った者はいません」
メイは悲しそうに言った。
それについてはなんとなくクリスは理解できた。
転移魔法を使う時、その目的地を知っていなければならないのと似たようなものだろう。そして、おそらく召喚が場ではなくその召喚される者に対して行われる魔法だからだ。
わかりやすくいうと、召喚魔法は条件に合う者をこちら側に連れて来る魔法である。そして、逆はできないということだ。
クリスは自分の世界を知っているので、理屈だけなら転移魔法で帰ることは可能である。
だが、それは同じ世界での話だ。
違う世界同士をどうやって行き来するのか、クリスには見当がつかない。
なるほど、誰も帰れないわけだ。
「ですから、クリス様」
メイはクリスの手を取る。
「魔王を倒したら、私と結婚して、この国で暮らしましょう。けして不自由な思いはさせません」
メイは真剣な目でクリスを見つめた。
クリスは息を吐いて、メイの手を振り払う。
「ごめん、帰る方法なら、見当がついている」
「……え?」
クリスの信じられない言葉に、メイは目を大きく開く。
「……先ほど、元の世界に帰った者はいないと申しましたが?」
メイはクリスの言葉の真偽を問うようにまじまじと見つめた。
「うーん、そうだろうね。けど、5割くらいの確率で、僕には帰る当てがあるんだ」
クリスはちょっと困った顔をしながら、頭を掻く。
「……その当てとは魔王や魔族ですか? だとしたら、それは見当違いです」
「違うよ。そもそも彼らが協力してくれるとは思えないし」
うーんと、唸りながら、クリスは言葉を続ける。
「たぶん、僕が当てにしているものは、僕だけしか当てにできないものなんだ。だから、今まで召喚された者には帰る手段がなかったと思う」
メイが首を傾げる。
「それは魔法ですか?」
「魔法っていえば魔法だけど、僕が使う魔法ではないかな」
メイはますますわからないというように目を瞬く。
「その方法とは?」
「……悪いけど、教えられないな」
クリスは笑って誤魔化した。
クリス、いや、正確にいうとヒオン国国王にしか使えない帰還方法なのだ。
そしてその方法は、ヒオン国の国家機密である。メイには教えられない。
帰る手段があるのにクリスがまだ異世界にいるのは、オークたちの待遇の件を投げ出すわけにはいかないのと、一応、仕事を代わりにしてくれる者の心当たりがあったからだ。
まぁ、時間がかかるほど周りから怒られるし、代わりにしてくれてあるとはいえ、仕事も山積みになりそうだから、さっさと帰りたくはあるが。
いや、すでに時間が経っているので、仕事は溜まっていそうだ。どうしよう、帰る気が失せてくる。
大量の書類の山を思い浮かべて、クリスは遠い目をした。
「クリス様?」
放心したクリスを訝しんで、メイが声をかける。
我にかえって、クリスは首を振って笑顔を作った。
「もう、遅いから、部屋まで送るよ」
「結婚はしてくださらないのですか?」
メイは目を潤ませながら聞く。
まだ、諦めてなかったのかと呆れるが、クリスは少し考えたあと、返事をする。
「僕は帰らなければならないから、この世界にはいられない。
それに君は、僕から見たらまだまだ子どもだから、結婚は承諾できない」
シュンと落ち込むメイの手を、クリスは取った。
「ほら、君の部屋まで行こう?
僕はここについて詳しくないから、案内して?」
そう言うと、クリスとメイは手を繋いで、廊下を進んだ。
クリスは訝しげにメイに聞く。
「今までも異世界から召喚した者はいます。
ですが、元の世界に帰った者はいません」
メイは悲しそうに言った。
それについてはなんとなくクリスは理解できた。
転移魔法を使う時、その目的地を知っていなければならないのと似たようなものだろう。そして、おそらく召喚が場ではなくその召喚される者に対して行われる魔法だからだ。
わかりやすくいうと、召喚魔法は条件に合う者をこちら側に連れて来る魔法である。そして、逆はできないということだ。
クリスは自分の世界を知っているので、理屈だけなら転移魔法で帰ることは可能である。
だが、それは同じ世界での話だ。
違う世界同士をどうやって行き来するのか、クリスには見当がつかない。
なるほど、誰も帰れないわけだ。
「ですから、クリス様」
メイはクリスの手を取る。
「魔王を倒したら、私と結婚して、この国で暮らしましょう。けして不自由な思いはさせません」
メイは真剣な目でクリスを見つめた。
クリスは息を吐いて、メイの手を振り払う。
「ごめん、帰る方法なら、見当がついている」
「……え?」
クリスの信じられない言葉に、メイは目を大きく開く。
「……先ほど、元の世界に帰った者はいないと申しましたが?」
メイはクリスの言葉の真偽を問うようにまじまじと見つめた。
「うーん、そうだろうね。けど、5割くらいの確率で、僕には帰る当てがあるんだ」
クリスはちょっと困った顔をしながら、頭を掻く。
「……その当てとは魔王や魔族ですか? だとしたら、それは見当違いです」
「違うよ。そもそも彼らが協力してくれるとは思えないし」
うーんと、唸りながら、クリスは言葉を続ける。
「たぶん、僕が当てにしているものは、僕だけしか当てにできないものなんだ。だから、今まで召喚された者には帰る手段がなかったと思う」
メイが首を傾げる。
「それは魔法ですか?」
「魔法っていえば魔法だけど、僕が使う魔法ではないかな」
メイはますますわからないというように目を瞬く。
「その方法とは?」
「……悪いけど、教えられないな」
クリスは笑って誤魔化した。
クリス、いや、正確にいうとヒオン国国王にしか使えない帰還方法なのだ。
そしてその方法は、ヒオン国の国家機密である。メイには教えられない。
帰る手段があるのにクリスがまだ異世界にいるのは、オークたちの待遇の件を投げ出すわけにはいかないのと、一応、仕事を代わりにしてくれる者の心当たりがあったからだ。
まぁ、時間がかかるほど周りから怒られるし、代わりにしてくれてあるとはいえ、仕事も山積みになりそうだから、さっさと帰りたくはあるが。
いや、すでに時間が経っているので、仕事は溜まっていそうだ。どうしよう、帰る気が失せてくる。
大量の書類の山を思い浮かべて、クリスは遠い目をした。
「クリス様?」
放心したクリスを訝しんで、メイが声をかける。
我にかえって、クリスは首を振って笑顔を作った。
「もう、遅いから、部屋まで送るよ」
「結婚はしてくださらないのですか?」
メイは目を潤ませながら聞く。
まだ、諦めてなかったのかと呆れるが、クリスは少し考えたあと、返事をする。
「僕は帰らなければならないから、この世界にはいられない。
それに君は、僕から見たらまだまだ子どもだから、結婚は承諾できない」
シュンと落ち込むメイの手を、クリスは取った。
「ほら、君の部屋まで行こう?
僕はここについて詳しくないから、案内して?」
そう言うと、クリスとメイは手を繋いで、廊下を進んだ。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる