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魔王、求婚される5
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「……どういうことだい?」
クリスは訝しげにメイに聞く。
「今までも異世界から召喚した者はいます。
ですが、元の世界に帰った者はいません」
メイは悲しそうに言った。
それについてはなんとなくクリスは理解できた。
転移魔法を使う時、その目的地を知っていなければならないのと似たようなものだろう。そして、おそらく召喚が場ではなくその召喚される者に対して行われる魔法だからだ。
わかりやすくいうと、召喚魔法は条件に合う者をこちら側に連れて来る魔法である。そして、逆はできないということだ。
クリスは自分の世界を知っているので、理屈だけなら転移魔法で帰ることは可能である。
だが、それは同じ世界での話だ。
違う世界同士をどうやって行き来するのか、クリスには見当がつかない。
なるほど、誰も帰れないわけだ。
「ですから、クリス様」
メイはクリスの手を取る。
「魔王を倒したら、私と結婚して、この国で暮らしましょう。けして不自由な思いはさせません」
メイは真剣な目でクリスを見つめた。
クリスは息を吐いて、メイの手を振り払う。
「ごめん、帰る方法なら、見当がついている」
「……え?」
クリスの信じられない言葉に、メイは目を大きく開く。
「……先ほど、元の世界に帰った者はいないと申しましたが?」
メイはクリスの言葉の真偽を問うようにまじまじと見つめた。
「うーん、そうだろうね。けど、5割くらいの確率で、僕には帰る当てがあるんだ」
クリスはちょっと困った顔をしながら、頭を掻く。
「……その当てとは魔王や魔族ですか? だとしたら、それは見当違いです」
「違うよ。そもそも彼らが協力してくれるとは思えないし」
うーんと、唸りながら、クリスは言葉を続ける。
「たぶん、僕が当てにしているものは、僕だけしか当てにできないものなんだ。だから、今まで召喚された者には帰る手段がなかったと思う」
メイが首を傾げる。
「それは魔法ですか?」
「魔法っていえば魔法だけど、僕が使う魔法ではないかな」
メイはますますわからないというように目を瞬く。
「その方法とは?」
「……悪いけど、教えられないな」
クリスは笑って誤魔化した。
クリス、いや、正確にいうとヒオン国国王にしか使えない帰還方法なのだ。
そしてその方法は、ヒオン国の国家機密である。メイには教えられない。
帰る手段があるのにクリスがまだ異世界にいるのは、オークたちの待遇の件を投げ出すわけにはいかないのと、一応、仕事を代わりにしてくれる者の心当たりがあったからだ。
まぁ、時間がかかるほど周りから怒られるし、代わりにしてくれてあるとはいえ、仕事も山積みになりそうだから、さっさと帰りたくはあるが。
いや、すでに時間が経っているので、仕事は溜まっていそうだ。どうしよう、帰る気が失せてくる。
大量の書類の山を思い浮かべて、クリスは遠い目をした。
「クリス様?」
放心したクリスを訝しんで、メイが声をかける。
我にかえって、クリスは首を振って笑顔を作った。
「もう、遅いから、部屋まで送るよ」
「結婚はしてくださらないのですか?」
メイは目を潤ませながら聞く。
まだ、諦めてなかったのかと呆れるが、クリスは少し考えたあと、返事をする。
「僕は帰らなければならないから、この世界にはいられない。
それに君は、僕から見たらまだまだ子どもだから、結婚は承諾できない」
シュンと落ち込むメイの手を、クリスは取った。
「ほら、君の部屋まで行こう?
僕はここについて詳しくないから、案内して?」
そう言うと、クリスとメイは手を繋いで、廊下を進んだ。
クリスは訝しげにメイに聞く。
「今までも異世界から召喚した者はいます。
ですが、元の世界に帰った者はいません」
メイは悲しそうに言った。
それについてはなんとなくクリスは理解できた。
転移魔法を使う時、その目的地を知っていなければならないのと似たようなものだろう。そして、おそらく召喚が場ではなくその召喚される者に対して行われる魔法だからだ。
わかりやすくいうと、召喚魔法は条件に合う者をこちら側に連れて来る魔法である。そして、逆はできないということだ。
クリスは自分の世界を知っているので、理屈だけなら転移魔法で帰ることは可能である。
だが、それは同じ世界での話だ。
違う世界同士をどうやって行き来するのか、クリスには見当がつかない。
なるほど、誰も帰れないわけだ。
「ですから、クリス様」
メイはクリスの手を取る。
「魔王を倒したら、私と結婚して、この国で暮らしましょう。けして不自由な思いはさせません」
メイは真剣な目でクリスを見つめた。
クリスは息を吐いて、メイの手を振り払う。
「ごめん、帰る方法なら、見当がついている」
「……え?」
クリスの信じられない言葉に、メイは目を大きく開く。
「……先ほど、元の世界に帰った者はいないと申しましたが?」
メイはクリスの言葉の真偽を問うようにまじまじと見つめた。
「うーん、そうだろうね。けど、5割くらいの確率で、僕には帰る当てがあるんだ」
クリスはちょっと困った顔をしながら、頭を掻く。
「……その当てとは魔王や魔族ですか? だとしたら、それは見当違いです」
「違うよ。そもそも彼らが協力してくれるとは思えないし」
うーんと、唸りながら、クリスは言葉を続ける。
「たぶん、僕が当てにしているものは、僕だけしか当てにできないものなんだ。だから、今まで召喚された者には帰る手段がなかったと思う」
メイが首を傾げる。
「それは魔法ですか?」
「魔法っていえば魔法だけど、僕が使う魔法ではないかな」
メイはますますわからないというように目を瞬く。
「その方法とは?」
「……悪いけど、教えられないな」
クリスは笑って誤魔化した。
クリス、いや、正確にいうとヒオン国国王にしか使えない帰還方法なのだ。
そしてその方法は、ヒオン国の国家機密である。メイには教えられない。
帰る手段があるのにクリスがまだ異世界にいるのは、オークたちの待遇の件を投げ出すわけにはいかないのと、一応、仕事を代わりにしてくれる者の心当たりがあったからだ。
まぁ、時間がかかるほど周りから怒られるし、代わりにしてくれてあるとはいえ、仕事も山積みになりそうだから、さっさと帰りたくはあるが。
いや、すでに時間が経っているので、仕事は溜まっていそうだ。どうしよう、帰る気が失せてくる。
大量の書類の山を思い浮かべて、クリスは遠い目をした。
「クリス様?」
放心したクリスを訝しんで、メイが声をかける。
我にかえって、クリスは首を振って笑顔を作った。
「もう、遅いから、部屋まで送るよ」
「結婚はしてくださらないのですか?」
メイは目を潤ませながら聞く。
まだ、諦めてなかったのかと呆れるが、クリスは少し考えたあと、返事をする。
「僕は帰らなければならないから、この世界にはいられない。
それに君は、僕から見たらまだまだ子どもだから、結婚は承諾できない」
シュンと落ち込むメイの手を、クリスは取った。
「ほら、君の部屋まで行こう?
僕はここについて詳しくないから、案内して?」
そう言うと、クリスとメイは手を繋いで、廊下を進んだ。
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