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魔王、一騎打ちをする3
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王の様子を見て満足したのか、クリスは笑みを作った。
「わかったら、街の外で仲間を襲っている兵士たちを撤退させてくれるかい?」
「は、はひ……」
だが、今の王にはクリスの穏やかそうな笑みも肉食獣の笑みに等しかった。
ちょっとやり過ぎたかもと思いつつ、とりあえずこの国からの脅威は取り除けたようなので、クリスは良しとする。
もう、この王宮には用がないので、クリスは立ち去ろうとした。
「お待ちなさい!」
クリスの背中に甲高い声がかけられた。
振り返ると、薄紅色のドレスを着た、ふんわりとした白に近い金髪と大きな紫色の瞳で、人間の十代半ばくらいの少女がいた。
少女は固い表情のまま、クリスに近づく。
「メイ、危ないから、下がりなさい!」
王が悲鳴を上げる。
「お父様は、黙ってて!」
少女、メイはピシャリと言った。
メイはクリスに頭を下げる。
「先ほどは父や配下の者が失礼しました、勇者様」
勇者と呼ばれて、クリスは微妙な顔をしたが指摘せず、代わりにこう言った。
「僕としては、今後、僕たちを襲わなければ、それでいいよ」
すると、メイは顔を上げて、微笑む。
「お優しいのですね。よかったら、名前を聞かせてもらえませんか?」
「クリス……」
「ではクリス様、折り入ってお願いがあるのですが……」
「なんだい?」
クリスが首を傾げると、メイがガシッとクリスの手を両手で掴んだ。
それはもう、絶対に逃がさないという気迫を感じるくらいの勢いだった。
「私と結婚してください!」
「……へ?」
全く想像しなかったお願いに、クリスの口から間の抜けた声が出た。
「わかったら、街の外で仲間を襲っている兵士たちを撤退させてくれるかい?」
「は、はひ……」
だが、今の王にはクリスの穏やかそうな笑みも肉食獣の笑みに等しかった。
ちょっとやり過ぎたかもと思いつつ、とりあえずこの国からの脅威は取り除けたようなので、クリスは良しとする。
もう、この王宮には用がないので、クリスは立ち去ろうとした。
「お待ちなさい!」
クリスの背中に甲高い声がかけられた。
振り返ると、薄紅色のドレスを着た、ふんわりとした白に近い金髪と大きな紫色の瞳で、人間の十代半ばくらいの少女がいた。
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「クリス……」
「ではクリス様、折り入ってお願いがあるのですが……」
「なんだい?」
クリスが首を傾げると、メイがガシッとクリスの手を両手で掴んだ。
それはもう、絶対に逃がさないという気迫を感じるくらいの勢いだった。
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