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魔王、一騎打ちをする2
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(魔法か……)
クリスはそう判断する。
ルディアから聞いたが、人間は詠唱や紋様を用いて魔法を使うことが多いらしい。
クリスも試しにやってみたら、手間と時間がかかるが、驚くほど制御しやすかった。今まで人間の魔法使いが、なんでブツブツ言ってんだろうとか思っていたが、ちゃんと意味のあることだったようだ。
ただ、大仰で少し恥ずかしかったが。
「焼き尽くせ! ファイア・バード!」
スザクの右手から放たれたのは、クリスの半身ほどもある大きな鳥の形をした炎だった。
炎の鳥はまっすぐクリスに向かって来る。
クリスは右手に軽く魔力を込めた。
そして炎の鳥を手の甲で、ペチッとはたき落とす。
炎の鳥はあっさりと霧散した。
「……!?」
スザクは目を見開いて固まる。
(このくらいなら、これで十分だからね)
魔法の威力というのは、魔力の密度に比例する。
先ほどの炎の鳥は込められた魔力もそこそこ高かったが、範囲が広過ぎた。なので簡単にはたき落とせた。
クリスは右手に魔力を込め、火の玉を作った。
手の平ほどの大きさのそれを床に落ちているスザクが使っていた剣にぶつける。
刃が炎に当たり、ドロッと溶けた。
「……!?」
スザクが大きくしていた目をさらに見開く。
クリスは火の魔法が不得意だが、それはどう調整しても、何でも燃やし尽くしてしまうからだ。なので調理などには全く向いてないが、威嚇や攻撃手段としては申し分なかった。
「う、うおおお!」
スザクは今度は素手で掴みかかってくる。
それを見たクリスはシャルルを床に置く。
そして素早く片腕を抱え込むと体を捻り、スザクを投げ飛ばした。
「うぐっ」
背中から着地したスザクは呻き声を上げる。
「そろそろ諦めたら?」
倒れたスザクを全身を使って押さえ込みながらクリスが聞いた。
「まだ、まだ死ぬまで諦めん!」
「で、君が死んだら、僕らを騎士団団長殺しの犯人として追うのかい?」
もがいていたスザクの動きがピタッと止まる。
クリスはため息をついた。
「その反応は、当たりみたいだね」
クリスの目は今までないくらい冷ややかだ。
クリスは魔族であるが、異世界の者であり、聖剣に選ばれた者なのだ。
そんなクリスを殺すには「魔族だから」という理由だけでは弱いのだろう。殺せば「聖剣に選ばれた者を殺した」と批判されかねない。
それに異世界の魔族だから、同じ世界の魔族が聖剣を持つより抵抗はない。
しかもクリスは人間を助けたことはあっても害したことはなかった。
だからこそ、クリス、もしくはその仲間が、誰かを殺すなり怪我させるなりするよう仕向けたかったのだろう。
「たくさんの人間を害した魔族」もしくは「偉い人間を殺した魔族」なら他国にも批判されずに、むしろ協力を得て、クリスを殺すことができるのだから。
その可能性を考えたクリスは、サーニャとオークたちを結界に入れて安全を図ると共にこちらからも攻撃できないようにした。
それと、念のために、絶対に自分から攻撃しないように気をつけた。
その結果、クリスが出した怪我人は、兵士たちが軽い火傷を負った程度で、そもそもクリスを襲わなければしなかったものだけである。
クリスは王の方を見た。
「悪いけど、君たちの企みに乗る気はない。
僕だけならともかく、サーニャやオークたちも危ない目に遭わせることだから」
クリスは協力を頼んだ時、サーニャやオークたちの安全を誓ったのだ。
それは魔王に対してだけではなく、道中での安全を含んでいるつもりだった。
「君たちが僕たちに何もしなければ、こちらからも何もしないと誓おう。
けど、懲りずに僕と僕の仲間に手を出すなら……」
クリスに睨まれた王は心臓を氷の手で鷲掴みされたように感じ、ガタガタ震えだす。
クリスが放ってたのはスザクが放っていたのよりも激しく、冷たい殺気だった。
「ただでは済まさない」
王は耐えきれず尻餅をついた。
クリスはそう判断する。
ルディアから聞いたが、人間は詠唱や紋様を用いて魔法を使うことが多いらしい。
クリスも試しにやってみたら、手間と時間がかかるが、驚くほど制御しやすかった。今まで人間の魔法使いが、なんでブツブツ言ってんだろうとか思っていたが、ちゃんと意味のあることだったようだ。
ただ、大仰で少し恥ずかしかったが。
「焼き尽くせ! ファイア・バード!」
スザクの右手から放たれたのは、クリスの半身ほどもある大きな鳥の形をした炎だった。
炎の鳥はまっすぐクリスに向かって来る。
クリスは右手に軽く魔力を込めた。
そして炎の鳥を手の甲で、ペチッとはたき落とす。
炎の鳥はあっさりと霧散した。
「……!?」
スザクは目を見開いて固まる。
(このくらいなら、これで十分だからね)
魔法の威力というのは、魔力の密度に比例する。
先ほどの炎の鳥は込められた魔力もそこそこ高かったが、範囲が広過ぎた。なので簡単にはたき落とせた。
クリスは右手に魔力を込め、火の玉を作った。
手の平ほどの大きさのそれを床に落ちているスザクが使っていた剣にぶつける。
刃が炎に当たり、ドロッと溶けた。
「……!?」
スザクが大きくしていた目をさらに見開く。
クリスは火の魔法が不得意だが、それはどう調整しても、何でも燃やし尽くしてしまうからだ。なので調理などには全く向いてないが、威嚇や攻撃手段としては申し分なかった。
「う、うおおお!」
スザクは今度は素手で掴みかかってくる。
それを見たクリスはシャルルを床に置く。
そして素早く片腕を抱え込むと体を捻り、スザクを投げ飛ばした。
「うぐっ」
背中から着地したスザクは呻き声を上げる。
「そろそろ諦めたら?」
倒れたスザクを全身を使って押さえ込みながらクリスが聞いた。
「まだ、まだ死ぬまで諦めん!」
「で、君が死んだら、僕らを騎士団団長殺しの犯人として追うのかい?」
もがいていたスザクの動きがピタッと止まる。
クリスはため息をついた。
「その反応は、当たりみたいだね」
クリスの目は今までないくらい冷ややかだ。
クリスは魔族であるが、異世界の者であり、聖剣に選ばれた者なのだ。
そんなクリスを殺すには「魔族だから」という理由だけでは弱いのだろう。殺せば「聖剣に選ばれた者を殺した」と批判されかねない。
それに異世界の魔族だから、同じ世界の魔族が聖剣を持つより抵抗はない。
しかもクリスは人間を助けたことはあっても害したことはなかった。
だからこそ、クリス、もしくはその仲間が、誰かを殺すなり怪我させるなりするよう仕向けたかったのだろう。
「たくさんの人間を害した魔族」もしくは「偉い人間を殺した魔族」なら他国にも批判されずに、むしろ協力を得て、クリスを殺すことができるのだから。
その可能性を考えたクリスは、サーニャとオークたちを結界に入れて安全を図ると共にこちらからも攻撃できないようにした。
それと、念のために、絶対に自分から攻撃しないように気をつけた。
その結果、クリスが出した怪我人は、兵士たちが軽い火傷を負った程度で、そもそもクリスを襲わなければしなかったものだけである。
クリスは王の方を見た。
「悪いけど、君たちの企みに乗る気はない。
僕だけならともかく、サーニャやオークたちも危ない目に遭わせることだから」
クリスは協力を頼んだ時、サーニャやオークたちの安全を誓ったのだ。
それは魔王に対してだけではなく、道中での安全を含んでいるつもりだった。
「君たちが僕たちに何もしなければ、こちらからも何もしないと誓おう。
けど、懲りずに僕と僕の仲間に手を出すなら……」
クリスに睨まれた王は心臓を氷の手で鷲掴みされたように感じ、ガタガタ震えだす。
クリスが放ってたのはスザクが放っていたのよりも激しく、冷たい殺気だった。
「ただでは済まさない」
王は耐えきれず尻餅をついた。
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