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魔王、人間の王に呼ばれる5
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クリスが取り出した黒い物体は遠隔会話器、略して遠話器という。これはペアになっているものを持っている者同士で離れたところからでも会話できる魔道具である。
クリスは手に持っているものとペアである白い遠話器をサーニャに渡していた。
ちなみにクリスがこれをポケットに入れていたのは本当にたまたまである。
クリスのズボンの大きなポケットは空間拡張の魔法が付いていて、ポケットの入口さえ入ればなんでも、いくらでも入れられる。それをいいことにクリスはなんでもかんでも入れて整理せず放っといていた。
この遠話器も何かに必要だったか、なんかでもらったかしたものを入れっぱなしにして忘れていた。
そしてサーニャたちとの連絡手段が必要になり、もしかしてと思って探ってみたら見つけたというわけである。
閑話休題。
「さっきから、人間の奴らがこっちを攻撃してくるんだけど、どうするのよ!」
「あー、やっぱり……」
「やっぱりって何よ!」
「その可能性あると思って結界張ったから」
もし、クリスが聖剣を持っていることを人間の王が気にくわないなら、攻撃される可能性が高いとクリスは思っていたのだ。
だが、サーニャの不満はそこではなかった。
「それならなんでこっちも攻撃できないようにしているのよ!」
クリスの結界は内外双方の攻撃を阻むもので、サーニャたちに、もし攻撃されても結界が破れてないなら、こちらからは攻撃しないように言ってあったのだ。
クリスがサーニャたちの結界の気配をたどる。
確かに攻撃されているが、結界に全く損傷はない。
「結界は無事みたいだね」
「そうだけど」
「じゃあ、そのまま我慢してて」
「はぁ!?」
さらに文句を言おうとするサーニャを黙殺し、クリスは遠話器のスイッチを切る。
「僕の仲間たちは皆無事だよ。もちろん、人質としては誰1人捕まってないよ」
クリスが王に笑いかけると、王の顔はひきつる。
「待て!」
王とクリスの間に口を挟んだのは王の横に控えていた側近の1人で、甲冑を纏って茶色い口髭を生やした壮年の男だった。
男はクリスを睨む。
「貴様は本当に自分が聖剣にふさわしいと思っているのか!?」
「いや、全然」
にべもないクリスの返事に広間に沈黙が漂う。
男が咳払いした。
「ならば聖剣を手放しても良かろう」
「それが……」
「いやだ!」
男の言葉に異をとなえたのは、クリスではなくシャルルだった。
「俺はこいつを気に入ったんだ! 誰が離れるか!」
そうなのだ。
クリスがいくら自分がふさわしくないと説得しても、シャルルは納得してくれない。
強行手段で置いて行こうとしたらあまりにもうるさくわめくので、結局連れて行くことになるのだった。
「うむ、そうか……」
男が何か考え、王に向き合う。
「私が彼と戦い、彼が聖剣にふさわしくないと証明するのはいかがでしょう?」
男の提案に王は目を見開く。
「スザク、お前……」
「彼は魔法で兵士たちを倒しましたが、1度も剣を抜いていません。剣が使えないのであれば、聖剣は無用の長物と化すでしょう。
つまり、聖剣にはふさわしくないと」
「いや、剣の腕は関係ないから」
シャルルが反論したが、スザクは構わず続ける。
「ならば近衛騎士団団長である私が彼と戦い、彼の剣の腕を確かめましょう。
魔王との戦いに置いて、聖剣は欠かせないものですから……」
「なるほどな……」
王の顔は生気を取り戻していた。
「お主、それでは余に、自身が聖剣にふさわしいことを証明してみよ!」
「「えー」」
クリスとシャルルは同時に不満の声を上げた。
「まさか勇者とあろう者が、逃げるなんてことするわけないな」
スザクの嫌味に「そもそも勇者じゃない」と反論したくなったクリスだが、ふと、「ここで圧倒的に勝てば、こいつら、こっちに手を出さなくなるのではないか」という考えが浮かぶ。
「わかった」
かくして、クリスはこの国の近衛騎士団団長と戦うことになった。
クリスは手に持っているものとペアである白い遠話器をサーニャに渡していた。
ちなみにクリスがこれをポケットに入れていたのは本当にたまたまである。
クリスのズボンの大きなポケットは空間拡張の魔法が付いていて、ポケットの入口さえ入ればなんでも、いくらでも入れられる。それをいいことにクリスはなんでもかんでも入れて整理せず放っといていた。
この遠話器も何かに必要だったか、なんかでもらったかしたものを入れっぱなしにして忘れていた。
そしてサーニャたちとの連絡手段が必要になり、もしかしてと思って探ってみたら見つけたというわけである。
閑話休題。
「さっきから、人間の奴らがこっちを攻撃してくるんだけど、どうするのよ!」
「あー、やっぱり……」
「やっぱりって何よ!」
「その可能性あると思って結界張ったから」
もし、クリスが聖剣を持っていることを人間の王が気にくわないなら、攻撃される可能性が高いとクリスは思っていたのだ。
だが、サーニャの不満はそこではなかった。
「それならなんでこっちも攻撃できないようにしているのよ!」
クリスの結界は内外双方の攻撃を阻むもので、サーニャたちに、もし攻撃されても結界が破れてないなら、こちらからは攻撃しないように言ってあったのだ。
クリスがサーニャたちの結界の気配をたどる。
確かに攻撃されているが、結界に全く損傷はない。
「結界は無事みたいだね」
「そうだけど」
「じゃあ、そのまま我慢してて」
「はぁ!?」
さらに文句を言おうとするサーニャを黙殺し、クリスは遠話器のスイッチを切る。
「僕の仲間たちは皆無事だよ。もちろん、人質としては誰1人捕まってないよ」
クリスが王に笑いかけると、王の顔はひきつる。
「待て!」
王とクリスの間に口を挟んだのは王の横に控えていた側近の1人で、甲冑を纏って茶色い口髭を生やした壮年の男だった。
男はクリスを睨む。
「貴様は本当に自分が聖剣にふさわしいと思っているのか!?」
「いや、全然」
にべもないクリスの返事に広間に沈黙が漂う。
男が咳払いした。
「ならば聖剣を手放しても良かろう」
「それが……」
「いやだ!」
男の言葉に異をとなえたのは、クリスではなくシャルルだった。
「俺はこいつを気に入ったんだ! 誰が離れるか!」
そうなのだ。
クリスがいくら自分がふさわしくないと説得しても、シャルルは納得してくれない。
強行手段で置いて行こうとしたらあまりにもうるさくわめくので、結局連れて行くことになるのだった。
「うむ、そうか……」
男が何か考え、王に向き合う。
「私が彼と戦い、彼が聖剣にふさわしくないと証明するのはいかがでしょう?」
男の提案に王は目を見開く。
「スザク、お前……」
「彼は魔法で兵士たちを倒しましたが、1度も剣を抜いていません。剣が使えないのであれば、聖剣は無用の長物と化すでしょう。
つまり、聖剣にはふさわしくないと」
「いや、剣の腕は関係ないから」
シャルルが反論したが、スザクは構わず続ける。
「ならば近衛騎士団団長である私が彼と戦い、彼の剣の腕を確かめましょう。
魔王との戦いに置いて、聖剣は欠かせないものですから……」
「なるほどな……」
王の顔は生気を取り戻していた。
「お主、それでは余に、自身が聖剣にふさわしいことを証明してみよ!」
「「えー」」
クリスとシャルルは同時に不満の声を上げた。
「まさか勇者とあろう者が、逃げるなんてことするわけないな」
スザクの嫌味に「そもそも勇者じゃない」と反論したくなったクリスだが、ふと、「ここで圧倒的に勝てば、こいつら、こっちに手を出さなくなるのではないか」という考えが浮かぶ。
「わかった」
かくして、クリスはこの国の近衛騎士団団長と戦うことになった。
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