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魔王、人間の王に呼ばれる
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魔王のもとに向かうクリスたちに、なぜか勇者一行が付かず離れずでついてきている。
なぜそうなったのかというと、勇者一行年少2人の要望らしい。
その要望とは、「あいつ(クリス)を倒したい!」という勇者のものと「魔族や亜人族について聞きたい!」というルディアのものだそうだ。
ルディアが質問しに来るのはともかく、勇者がいきなり襲いかかってくるのはかなり迷惑だった。
しかもクリスが寝てる時に来た時もあったのである。その時は、寝起きで機嫌の悪いクリスがうっかり勇者を怪我させそうになった。
「お前、魔族のくせに早く寝過ぎるんだよ!」
後にことを知り、クリスが勇者に文句を言った時、そう返された。
確かに、クリスは日が沈むとさっさと寝てしまう。サーニャやオークたちもそれに戸惑っていた。
仕事がない日は早く寝る主義のクリスだが、これは仕事と思って皆と合わせた方がいいかもしれない。
ルディアの方は、こちらが食事をしている時を見計らって訪ねて来る。時おり、自分の食事を持参してくることもある。
話題はクリスの世界の魔族やエルフ、獣人や魔物についてや魔法についてが多い。
最初は警戒していたサーニャやオークたちも、今では、ルディアに関しては警戒が解けてきた。
ちなみに2人にはたいてい他の3人の仲間のうち、最低1人がついて来る。
基本的にクリスたちが危害を加えないか監視しているようだが、それならまず、勇者を止めてほしい。
そんな奇妙な一行で魔王のところを目指して数日、お互いの名前や顔を覚えた頃、鎧を纏った人間の集団がクリスたちを訪ねて来た。
「この中に勇者殿がいると聞いたが、どこにいる?」
代表なのか、他の者と比べて立派な鎧を着た灰色の髪の男がクリスに尋ねる。
その後ろにいる兵士たちとクリスの後ろにいるオークたちは、お互い警戒しているためか、ピリピリしている。
クリスはオークたちを宥めながら、勇者一行の方を向いた。
「おーい、勇者、呼んでるよー!」
「いや、この場合、勇者ってお前じゃね?」
元の世界の勇者、ヨハンを呼ぶクリスにシャルルは言った。
すると、灰色の髪の男は目を見開いてシャルルを見る。
「もしや、あなた様はシャルル様でいらっしゃいますか?」
「そうだけど、お前は?」
男は優雅にお辞儀をする。
「申し遅れました。私はロベルア国第一騎士団団長、カイト・ミランドといいます。
シャルル様をお持ちということは、あなたが勇者殿でしょうか?」
「違うよ」
「いや、お前だろ」
反射的に答えたクリスに、シャルルがすかさず反論する。
カイトが怪訝そうな顔をした。
「......聖剣に選ばれる方は勇者のはずですが、違う、と」
クリスはため息をつく。
「確かにシャルルは僕を選んだけど、勇者と呼ばれるのは好きじゃない」
「......そういえば、あの村で召喚されたのは、魔族でしたねあなたがそうですか?」
クリスが頷くと、周りの、特に人間の騎士団の緊張感がいっそう険しくなった。なかには武器を構える者もいる。
「やめろ!」
カイトが部下たちに声をかけた。
「しかし......」
「我々の任務は、勇者殿を王宮にお連れすることだ! ここで戦うことではない!」
カイトの言葉に、周りの兵士はしぶしぶ武器を降ろす。
そして再びクリスに頭を下げた。
「どうか、我々と共に王宮に来ていただきたい」
「......断ったら?」
「あなた方は討伐対象となり、我が国の精鋭部隊が派遣されるでしょう」
つまり、退治されたくないならば従えということだ。
クリスは考える。
正直、なるべく早く魔王の元に向かいたいが、精鋭部隊というのがどのくらいの強さなのか未知数だし、いちいち相手していれば時間がかかる。
加えて、クリス1人なら逃げるという選択もあるが、森の中をオークたちと共に逃げるのは難しいし、彼らを見棄てるのはいやだった。
クリスは再びため息をつく。
「わかった。君たちに付いていくよ」
「ありがとうございます」
こうして、クリスたちはロベルア国の王宮に向かうことになった。
なぜそうなったのかというと、勇者一行年少2人の要望らしい。
その要望とは、「あいつ(クリス)を倒したい!」という勇者のものと「魔族や亜人族について聞きたい!」というルディアのものだそうだ。
ルディアが質問しに来るのはともかく、勇者がいきなり襲いかかってくるのはかなり迷惑だった。
しかもクリスが寝てる時に来た時もあったのである。その時は、寝起きで機嫌の悪いクリスがうっかり勇者を怪我させそうになった。
「お前、魔族のくせに早く寝過ぎるんだよ!」
後にことを知り、クリスが勇者に文句を言った時、そう返された。
確かに、クリスは日が沈むとさっさと寝てしまう。サーニャやオークたちもそれに戸惑っていた。
仕事がない日は早く寝る主義のクリスだが、これは仕事と思って皆と合わせた方がいいかもしれない。
ルディアの方は、こちらが食事をしている時を見計らって訪ねて来る。時おり、自分の食事を持参してくることもある。
話題はクリスの世界の魔族やエルフ、獣人や魔物についてや魔法についてが多い。
最初は警戒していたサーニャやオークたちも、今では、ルディアに関しては警戒が解けてきた。
ちなみに2人にはたいてい他の3人の仲間のうち、最低1人がついて来る。
基本的にクリスたちが危害を加えないか監視しているようだが、それならまず、勇者を止めてほしい。
そんな奇妙な一行で魔王のところを目指して数日、お互いの名前や顔を覚えた頃、鎧を纏った人間の集団がクリスたちを訪ねて来た。
「この中に勇者殿がいると聞いたが、どこにいる?」
代表なのか、他の者と比べて立派な鎧を着た灰色の髪の男がクリスに尋ねる。
その後ろにいる兵士たちとクリスの後ろにいるオークたちは、お互い警戒しているためか、ピリピリしている。
クリスはオークたちを宥めながら、勇者一行の方を向いた。
「おーい、勇者、呼んでるよー!」
「いや、この場合、勇者ってお前じゃね?」
元の世界の勇者、ヨハンを呼ぶクリスにシャルルは言った。
すると、灰色の髪の男は目を見開いてシャルルを見る。
「もしや、あなた様はシャルル様でいらっしゃいますか?」
「そうだけど、お前は?」
男は優雅にお辞儀をする。
「申し遅れました。私はロベルア国第一騎士団団長、カイト・ミランドといいます。
シャルル様をお持ちということは、あなたが勇者殿でしょうか?」
「違うよ」
「いや、お前だろ」
反射的に答えたクリスに、シャルルがすかさず反論する。
カイトが怪訝そうな顔をした。
「......聖剣に選ばれる方は勇者のはずですが、違う、と」
クリスはため息をつく。
「確かにシャルルは僕を選んだけど、勇者と呼ばれるのは好きじゃない」
「......そういえば、あの村で召喚されたのは、魔族でしたねあなたがそうですか?」
クリスが頷くと、周りの、特に人間の騎士団の緊張感がいっそう険しくなった。なかには武器を構える者もいる。
「やめろ!」
カイトが部下たちに声をかけた。
「しかし......」
「我々の任務は、勇者殿を王宮にお連れすることだ! ここで戦うことではない!」
カイトの言葉に、周りの兵士はしぶしぶ武器を降ろす。
そして再びクリスに頭を下げた。
「どうか、我々と共に王宮に来ていただきたい」
「......断ったら?」
「あなた方は討伐対象となり、我が国の精鋭部隊が派遣されるでしょう」
つまり、退治されたくないならば従えということだ。
クリスは考える。
正直、なるべく早く魔王の元に向かいたいが、精鋭部隊というのがどのくらいの強さなのか未知数だし、いちいち相手していれば時間がかかる。
加えて、クリス1人なら逃げるという選択もあるが、森の中をオークたちと共に逃げるのは難しいし、彼らを見棄てるのはいやだった。
クリスは再びため息をつく。
「わかった。君たちに付いていくよ」
「ありがとうございます」
こうして、クリスたちはロベルア国の王宮に向かうことになった。
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