その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、寝込みを襲われる?

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「クソっ、今日も勝てなかった!」

 ヨハンは悔しそうに拳で地面を叩く。
 数日前に会った魔族の男に戦いを挑んで、敗北したのだ。
 魔族の男に会ってからヨハンは連日戦いを挑んでいるが、1度も勝てたことがなかった。

「まあまあ、落ち着きなよ」

 グレイが宥めると、ヨハンはグレイを睨み付ける。

「だってさ、あいつ、魔法全く使わないし、絶対手を抜いているだろ! 怒らずにいられるか!」
「それだけ実力差が激しいんだろ? なら、油断している今こそ、勝てるかもしれないじゃないか」
「それで勝ったって意味ないだろ!」

 ヨハンは勇者なのだから、魔王に勝たなければならない。それなのに、ただの魔族にすら勝てないのだ。悔しくないはずがなかった。

「……俺、もう1度、あいつに戦いを挑んでくる!」
「え、もう夜になるぞ?」

 グレイは驚く。日はとうに沈みかけていた。

「まだなったばかりだろ。それなら、あいつも起きているだろうし」

 そう言ってヨハンは魔族やオークたちの元に向かった。



「おい、あの魔族はいるか!?」

 ヨハンが魔族の女に聞くと、女は困った顔をした。オークたちも戸惑っている。

「……あいつなら、あそこにいるわよ」

 女が指さす方を見ると、木にもたれかかって寝ている魔族の男がいた。

「なんで寝てんだよ!」
「あいつ、日が沈むと結界張って、さっさと寝てしまうのよ」

 女が呆れながら答える。
 グレイがよく見ると、透明な結界が張ってあるのが確認できた。触れて見ると、並の魔法ではビクともしないくらい強力なものである。

「意識のない魔法の継続には魔石が必要なはずなんだけど、あいつ、持っているのか?」
「ゴミみたいな使用済みの空の魔石ならね。そこに魔力を入れて使っているみたいよ」
「へぇ、そんな使い方があるのか」

 グレイは感心する。少なくとも、自分たち人間は聞いたことのない使い方だ。魔族や異種族の住む国は、魔法が人間たちより発展しているのかもしれない。
 グレイが今後の参考にしようと周囲を観察していると、ヨハンが聖剣を抜いたのが目に入る。

「ヨハン、何をするつもりだ?」
「ちょっと結界切って起こそうと思ってさ」
「寝てるんだし、明日でよくないか?」
「それじゃ、俺の気が済まないんだよ!」

 そう言ってヨハンは魔族の男を囲む結界を聖剣で切りつけた。
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