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魔王、寝込みを襲われる?
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「クソっ、今日も勝てなかった!」
ヨハンは悔しそうに拳で地面を叩く。
数日前に会った魔族の男に戦いを挑んで、敗北したのだ。
魔族の男に会ってからヨハンは連日戦いを挑んでいるが、1度も勝てたことがなかった。
「まあまあ、落ち着きなよ」
グレイが宥めると、ヨハンはグレイを睨み付ける。
「だってさ、あいつ、魔法全く使わないし、絶対手を抜いているだろ! 怒らずにいられるか!」
「それだけ実力差が激しいんだろ? なら、油断している今こそ、勝てるかもしれないじゃないか」
「それで勝ったって意味ないだろ!」
ヨハンは勇者なのだから、魔王に勝たなければならない。それなのに、ただの魔族にすら勝てないのだ。悔しくないはずがなかった。
「……俺、もう1度、あいつに戦いを挑んでくる!」
「え、もう夜になるぞ?」
グレイは驚く。日はとうに沈みかけていた。
「まだなったばかりだろ。それなら、あいつも起きているだろうし」
そう言ってヨハンは魔族やオークたちの元に向かった。
「おい、あの魔族はいるか!?」
ヨハンが魔族の女に聞くと、女は困った顔をした。オークたちも戸惑っている。
「……あいつなら、あそこにいるわよ」
女が指さす方を見ると、木にもたれかかって寝ている魔族の男がいた。
「なんで寝てんだよ!」
「あいつ、日が沈むと結界張って、さっさと寝てしまうのよ」
女が呆れながら答える。
グレイがよく見ると、透明な結界が張ってあるのが確認できた。触れて見ると、並の魔法ではビクともしないくらい強力なものである。
「意識のない魔法の継続には魔石が必要なはずなんだけど、あいつ、持っているのか?」
「ゴミみたいな使用済みの空の魔石ならね。そこに魔力を入れて使っているみたいよ」
「へぇ、そんな使い方があるのか」
グレイは感心する。少なくとも、自分たち人間は聞いたことのない使い方だ。魔族や異種族の住む国は、魔法が人間たちより発展しているのかもしれない。
グレイが今後の参考にしようと周囲を観察していると、ヨハンが聖剣を抜いたのが目に入る。
「ヨハン、何をするつもりだ?」
「ちょっと結界切って起こそうと思ってさ」
「寝てるんだし、明日でよくないか?」
「それじゃ、俺の気が済まないんだよ!」
そう言ってヨハンは魔族の男を囲む結界を聖剣で切りつけた。
ヨハンは悔しそうに拳で地面を叩く。
数日前に会った魔族の男に戦いを挑んで、敗北したのだ。
魔族の男に会ってからヨハンは連日戦いを挑んでいるが、1度も勝てたことがなかった。
「まあまあ、落ち着きなよ」
グレイが宥めると、ヨハンはグレイを睨み付ける。
「だってさ、あいつ、魔法全く使わないし、絶対手を抜いているだろ! 怒らずにいられるか!」
「それだけ実力差が激しいんだろ? なら、油断している今こそ、勝てるかもしれないじゃないか」
「それで勝ったって意味ないだろ!」
ヨハンは勇者なのだから、魔王に勝たなければならない。それなのに、ただの魔族にすら勝てないのだ。悔しくないはずがなかった。
「……俺、もう1度、あいつに戦いを挑んでくる!」
「え、もう夜になるぞ?」
グレイは驚く。日はとうに沈みかけていた。
「まだなったばかりだろ。それなら、あいつも起きているだろうし」
そう言ってヨハンは魔族やオークたちの元に向かった。
「おい、あの魔族はいるか!?」
ヨハンが魔族の女に聞くと、女は困った顔をした。オークたちも戸惑っている。
「……あいつなら、あそこにいるわよ」
女が指さす方を見ると、木にもたれかかって寝ている魔族の男がいた。
「なんで寝てんだよ!」
「あいつ、日が沈むと結界張って、さっさと寝てしまうのよ」
女が呆れながら答える。
グレイがよく見ると、透明な結界が張ってあるのが確認できた。触れて見ると、並の魔法ではビクともしないくらい強力なものである。
「意識のない魔法の継続には魔石が必要なはずなんだけど、あいつ、持っているのか?」
「ゴミみたいな使用済みの空の魔石ならね。そこに魔力を入れて使っているみたいよ」
「へぇ、そんな使い方があるのか」
グレイは感心する。少なくとも、自分たち人間は聞いたことのない使い方だ。魔族や異種族の住む国は、魔法が人間たちより発展しているのかもしれない。
グレイが今後の参考にしようと周囲を観察していると、ヨハンが聖剣を抜いたのが目に入る。
「ヨハン、何をするつもりだ?」
「ちょっと結界切って起こそうと思ってさ」
「寝てるんだし、明日でよくないか?」
「それじゃ、俺の気が済まないんだよ!」
そう言ってヨハンは魔族の男を囲む結界を聖剣で切りつけた。
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