その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、質問責めに合う5

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「ごめん、どういうこと?」

 クリスはルディアに聞く。

「聖剣の能力については、その1つ前の先代の勇者かその子孫から伝えられるんです。
 けれど、2つ前の勇者が失踪したので、先代勇者は聖剣の能力を正しく教えられなかったんです」
「失踪?」
「はい。その勇者は聖剣を残していなくなりました。おそらく、魔王に殺されたかと……」
「そんなはずない!」

 クリスは強く否定した。
 今まで穏やかだったクリスが声を荒げたので、ルディアは驚く。
 その様子にクリスは慌てた。

「ごめん。けど、王が殺したっていうのはあり得ないんだ」
「それは……なぜですか?」

 さすがに違和感を覚えて、ルディアは聞く。
 クリスは少し考え、やがて決心したように顔を上げた。

「君たちには半分くらいバレているからいうけど、王は勇者を殺さない。殺してもなんの利もないからね」
「何それ、どういうことよ!?」

 クリスの言葉に、今まで黙っていた矢筒を背負った女が問い詰める。

「そのままの意味だよ。勇者が来ると、王は自分の髪を渡して、自分を倒したことにするよう言う。そして国境付近に転移させる。それを勇者が諦めるまで繰り返すんだ」

 勇者一行は言葉を失った。

「……なぜ、そのようなことを?」

 ルディアがなんとか質問をする。

「勇者がなるべく来ないようにするためだよ。勇者が死んだら、次の勇者が来るだけだからね」
「……それなら、お前らが人間に手を出さなければいいんじゃないか?」

 勇者の反論に、クリスの中の何かが切れる。

「僕らから、君たち人間を攻めたことはない!」

 クリスは憤っていた。

「君たちが勝手に僕らを、僕の国を敵視しているんだ! こっちは、ただ、平和に暮らしているだけなのに……」

 毎回毎回被せられる濡れ衣に、クリスはうんざりしていた。
 それだけならまだしも、勇者による傷害や窃盗で国民が傷つけられるのは許せなかった。
 怒りのまままくし立てたクリスは呼吸を整える。

「君たちは、僕らの国がなんのために作られたかわかるかい?」

 クリスは勇者たちに聞く。
 勇者たちはお互いの顔を見合った。

「……魔族たちが世界を征服するために作られたと、私たちは聞いています」
「違う」

 ルディアの答えをクリスはきっぱり否定する。

「僕らの国は、人間と戦わないために作られたんだ」

 そしてクリスは語り出した。
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