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魔王、質問責めに合う4
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「他に聞きたいことは――」
クリスが聞こうとしたとき、ドタドタとこちらに向かう足音が近づいて来る。
「ここにいたのか、ルディア!」
そして来たのは、やはり勇者一行だった。
勇者はクリスを見ると、今までで一番激しい怒りのこもった目で睨みつける。
「お前、なんでルディアを拐ったんだ!」
「は?」
思わぬ濡れ衣に、クリスはポカンとした。
「ち、違うよ、ヨハン。私が自分の意思でここに来たんだよ」
ルディアの弁解に勇者は驚く。
「お前、何考えてんだ! 殺されていたかもしれないんだぞ!」
「この人は殺さないよ。もしそうなら、ヨハンは、今、生きてないもの」
ルディアはきちんとそこを見極めてクリスに会ったのだ。
その言葉に勇者はぐっと詰まった。
「……けど、危ないだろうが! それに心配したんだぞ…」
「ごめん、言ったら、反対されると思って……」
心から心配した様子の勇者に、ルディアはさすがに謝った。
「けど、なんでこいつのところに行ったんだ?」
当然の勇者の疑問に、ルディアの目が泳ぐ。
「……初めて、ちゃんとした魔族に会ったからいろいろ聞いてみたくって」
「お前なぁ……」
勇者がため息をついた。
「だって、初めての魔族だよ。第一魔族だよ」
「第一魔族ってなんだよ……」
「それにクリスさん、私たちと同じ世界から来たみたいだったし……」
「そうなのか!?」
突然、呆れ返っていた勇者が勢いよく反応する。
そして二人の様子を生温かく見守っていたクリスを睨んだ。
「お前、あの魔王の知り合いなのか?」
「……そうだけど」
クリスは目が泳ぎそうになるのを抑えながら答える。
正確にはクリスがあの魔王なのだが、言うと絶対めんどくさいことになるので言わなかった。
「あいつ、俺たちをコケにしやがったんだ! 絶対許さねぇ!」
勇者は瞳に怒りを燃やして、拳を握った。
クリスは頭を抱える。
(あー、そうだ! 勇者の相手する時、手を抜くと、遺恨を残してしつこくなるからやめとけって言われているんだった!)
いくらめんどくさく、何もしていない相手を叩きのめすのが気が引けたからって、手を抜くんじゃなかったと後悔する。
「大丈夫ですか?」
急に苦悩し始めたクリスをルディアが気遣う。
「だ、大丈夫……」
クリスは無理矢理笑顔を作った。
「お前、もしかして、あいつと親しいのか?」
クリスたちの様子をジトッと見ていた勇者が聞いてくる。
「まぁ、うん」
親しいというより、同一人物なのだが、一応、頷いた。
「じゃあ、弱点とか知ってるか!?」
「教えるわけないでしょ!」
勇者の言葉に反射的に返す。
というか、自分たちが不利になる情報を言えるわけがない。
「そりゃあそうか。けど、聖剣は弱点になるんだろ」
背中にある聖剣に触れながら勇者は聞いた。
「まぁね」
このことについては双方で周知の事実だったため、クリスは素直に頷く。
勇者は首をひねった。
「なんで聖剣が魔王の弱点になるんだ?」
「は……?」
何を言ったか信じられなくて、クリスは勇者を凝視する。
勇者はまだ首をひねってる。
「魔法が斬れるっていうのはわかるんだけど、それだけで魔王って倒せるのか?」
「…………」
クリスは沈黙した。
最初の勇者がヒオン国に来てから二千年近く経っている。
つまり聖剣の恐ろしい能力についての知識が失われていても不思議ではないのだ。
なのだが、クリスはなぜか釈然としなかった。
「2つ前の勇者が失踪したからね」
「……え?」
ルディアの言葉にクリスは目を見張った。
クリスが聞こうとしたとき、ドタドタとこちらに向かう足音が近づいて来る。
「ここにいたのか、ルディア!」
そして来たのは、やはり勇者一行だった。
勇者はクリスを見ると、今までで一番激しい怒りのこもった目で睨みつける。
「お前、なんでルディアを拐ったんだ!」
「は?」
思わぬ濡れ衣に、クリスはポカンとした。
「ち、違うよ、ヨハン。私が自分の意思でここに来たんだよ」
ルディアの弁解に勇者は驚く。
「お前、何考えてんだ! 殺されていたかもしれないんだぞ!」
「この人は殺さないよ。もしそうなら、ヨハンは、今、生きてないもの」
ルディアはきちんとそこを見極めてクリスに会ったのだ。
その言葉に勇者はぐっと詰まった。
「……けど、危ないだろうが! それに心配したんだぞ…」
「ごめん、言ったら、反対されると思って……」
心から心配した様子の勇者に、ルディアはさすがに謝った。
「けど、なんでこいつのところに行ったんだ?」
当然の勇者の疑問に、ルディアの目が泳ぐ。
「……初めて、ちゃんとした魔族に会ったからいろいろ聞いてみたくって」
「お前なぁ……」
勇者がため息をついた。
「だって、初めての魔族だよ。第一魔族だよ」
「第一魔族ってなんだよ……」
「それにクリスさん、私たちと同じ世界から来たみたいだったし……」
「そうなのか!?」
突然、呆れ返っていた勇者が勢いよく反応する。
そして二人の様子を生温かく見守っていたクリスを睨んだ。
「お前、あの魔王の知り合いなのか?」
「……そうだけど」
クリスは目が泳ぎそうになるのを抑えながら答える。
正確にはクリスがあの魔王なのだが、言うと絶対めんどくさいことになるので言わなかった。
「あいつ、俺たちをコケにしやがったんだ! 絶対許さねぇ!」
勇者は瞳に怒りを燃やして、拳を握った。
クリスは頭を抱える。
(あー、そうだ! 勇者の相手する時、手を抜くと、遺恨を残してしつこくなるからやめとけって言われているんだった!)
いくらめんどくさく、何もしていない相手を叩きのめすのが気が引けたからって、手を抜くんじゃなかったと後悔する。
「大丈夫ですか?」
急に苦悩し始めたクリスをルディアが気遣う。
「だ、大丈夫……」
クリスは無理矢理笑顔を作った。
「お前、もしかして、あいつと親しいのか?」
クリスたちの様子をジトッと見ていた勇者が聞いてくる。
「まぁ、うん」
親しいというより、同一人物なのだが、一応、頷いた。
「じゃあ、弱点とか知ってるか!?」
「教えるわけないでしょ!」
勇者の言葉に反射的に返す。
というか、自分たちが不利になる情報を言えるわけがない。
「そりゃあそうか。けど、聖剣は弱点になるんだろ」
背中にある聖剣に触れながら勇者は聞いた。
「まぁね」
このことについては双方で周知の事実だったため、クリスは素直に頷く。
勇者は首をひねった。
「なんで聖剣が魔王の弱点になるんだ?」
「は……?」
何を言ったか信じられなくて、クリスは勇者を凝視する。
勇者はまだ首をひねってる。
「魔法が斬れるっていうのはわかるんだけど、それだけで魔王って倒せるのか?」
「…………」
クリスは沈黙した。
最初の勇者がヒオン国に来てから二千年近く経っている。
つまり聖剣の恐ろしい能力についての知識が失われていても不思議ではないのだ。
なのだが、クリスはなぜか釈然としなかった。
「2つ前の勇者が失踪したからね」
「……え?」
ルディアの言葉にクリスは目を見張った。
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