その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、質問責めに合う2

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(何、この子――!?)

 クリスは混乱していた。

 先ほど勇者が来た時も、平静でいられなかったが、その時以上に動揺していた。

 リスのような少女は、緑色の大きな目をキラキラ輝かせて、矢継ぎ早に質問を投げてくる。

 そこには先ほどまであった緊張や怯えは見られず、純粋な好奇心だけがあった。

 始めの質問で毒気を抜かれた時、「もしかして、こういう作戦?」と一瞬思ったが、この様子だと、本当にただの興味本位でここに来たようだ。

 正直、人間、しかも勇者の仲間からこういう敵意や嫌悪、怯えが全くない感情を向けられたことにたいして、クリスは戸惑っていた。

「えっと、そうだ!君の名前は?」
「ルディアです!」
「僕はクリス。ルディア、君の質問に順番に答えるから、落ち着いて」

 うーっと唸りながらも、ルディアは一応、大人しくなる。質問したりなくて、口は疼くように動いていたが。

「まず、普段は昼に寝て夜起きているかというと、別にそういうわけじゃない。というか、ほとんどの者は朝起きて、夜寝ているよ。
 牙のことといい、君たちは、僕ら魔族と不死者を混合しているみたいだね」
「不死者ですか?」
「そう。不死者の中でも、吸血鬼と呼ばれている者が、君たちが言った牙があって、昼に寝ている種族だね」

 うんうん、とルディアは頷くが、ふと、首を傾げる。

「魔族って不老不死じゃないんですか?」
「いや、確かに不老だけど不死身じゃない。回復できない怪我や寿命で死ぬよ」
「……魔族って聖剣以外で倒せないって聞いたんですけど、そういうわけではないんですか?」
「あー、聖剣は確かに魔族に有効だろうけど、別に聖剣でなくたって死ぬ時は死ぬなぁ。めったにないけど」

 魔族は自己回復魔法が使える者がほとんどで、大抵の怪我はあっという間に治してしまうのだ。

「そういえば、魔族の寿命って何年ですか?」
「だいたい、千年くらいだね」

「「千年!?」」

 これにはルディアだけでなく、なぜか同じ魔族のサーニャも驚いていた。
 クリスはサーニャの方を見る。

「こっちの魔族はどのくらい生きるんだい?」
「…だいたい五百年くらいよ」
「そっか」

 こちらの魔族は成長が早い代わりに、寿命は半分くらいのようだ。

「やっぱり、あなたは私たちの世界の魔族なんですか?」

 疑問というより、確認するようにルディアが聞いた。
 クリスは頷く。

「そうだよ」

「ということは、あの国の兵士の方なんですか?」

 クリスはわずかに硬直する。

 国境から城まで、勇者の相手をしたのは甲冑を着た兵士たちだった。それ以外の一般国民は避難させていたのだ。
 つまり、勇者と会ったことがあるのは、兵士か魔王ということになる。

「……こう見えて、城で働いているんだ。その時に、君たちを見かけたんだ」

 さすがに魔王だとは言えず、クリスは誤魔化す。

 ルディアはわずかに首を傾げたが、それ以上は追及しなかった。
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