その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、再会する4

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「なぜ、殺さない?」

 男はクリスを睨むと、問いかける。

 確かにクリスは剣を弾き飛ばすだけで、一度も斬りかかっていない。
 クリスは頭を掻いた。

「……逆に聞くけど、なんで殺さなきゃいけないんだい?」

 そもそも、クリスは勇者が斬りかかってきたから対処しただけなのである。クリスからは何もしていない。
 男は顔をしかめた。

「魔族や魔物というのはそういうものだろう?」
「別にそうとは限らないと思うけど」

 クリスがため息をつく。

「じゃあ、僕たちが人間だったら、君たちはどうした?」

 男は黙ってしまった。
 勇者が襲ったのは、クリスたちが魔族と魔物だったからだ。

「……じゃあ聞くけど、あんたたちは何をしていたわけ?」

 矢筒を担いだ女が、声に険を含ませて聞いてきた。

「これから昼食を摂ろうとしたとこ」
「そうじゃなくって!」

 クリスの返答に女はイラつく。

「……これから魔王のところに行く」
「行ってどうするつもり?」
「彼の配下たちの待遇改善の要請だけど」
「……は?」

 思いもしなかったところから答えられて、女は呆気にとられる。

「あ、あと、ついでに世界の滅亡防止のためだね」
「ついで……」

 しばらく女はポカンとしていたが、ハッとして首を振ってクリスを睨み付けた。

「ちょ、ちょっとおかしいでしょ! なんで世界の滅亡の方がついでなのよ!」

 その問いにクリスの後ろでサーニャがうんうん、と頷く。

「敵に容赦のない上官より、味方を粗雑に扱う上官の方がよほど害悪だと思わないかい?」

 なぜそんなことを聞くのかわからないクリスは当然のように答えた。

「ブハッ! クククク……」

 するとずっと黙っていた紺色のローブを着て癖のある金髪と薄い青の瞳の男が笑い出した。

「なるほど、ずいぶん変わった魔族だな」

 なんとか笑いをおさめると、ローブの男はにやけたまま、クリスに向き合う。

「それじゃ、俺らはお前たちと争う理由はないし、さっさと退散するわ」
「グレイ!」

 信じられない様子の勇者にグレイと呼ばれた男は冷たい目を向けた。

「……もとはといえば、ヨハン、お前が勝手に暴走しただけだろうが。
 人の話を聞かない癖はどうにかしろよ」
「うぐ……」

 うめきながらも、勇者は反論しなかった。
 不満げな顔をしながらも、勇者一行はグレイを先頭に立ち去って行った。
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