その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、再会する2

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「……? なんで俺が勇者だって知っているんだ?」

 勇者は首を傾げる。

 そんな勇者に、目を背けないようにしながら、クリスは混乱していた。

(あれ、僕、ちゃんと転移魔法で国境の外に送ったはずだよね?間違ってこっちに送ったとか?
 でも、遠視装置ではちゃんと無事送れていたはず……)

 遠視装置は、設置してある場所を離れたところから見ることができる便利な魔道具で、国境付近の勇者を送るところにも置いてある。
 しかも、国境付近にある遠視装置は、幻覚魔法なども効かない特別製で、これに虚偽が写ることはあり得なかった。
 そもそも、転移魔法では異世界に行くはずがない。

 ということはおそらく、その後でこちらに召喚されたのだろう。

 まぁ、どっちにしろ会いたくない相手ではあるが。

「というか、なんで人間が魔物をかばうんだ?」

 勇者はクリスが帽子をかぶっているせいか、魔族と気付いてない。

「ヨハン、たぶん、あの人、魔族だよ」

 仲間の茶色いローブを纏った小柄な人間がおずおずと言った。

「なっ……」

 ヨハンと呼ばれた勇者が絶句する。

「お、おかしいだろ!魔族なのに牙も羽もないぞ!」
「は?」

 今度はクリスがポカンとした。

「昔、師匠に聞いたけど、魔族って見た目は角以外、人間と違わないんだって。
 あと、今まで会った人たちと魔力の感じが違うし……」

 勇者の仲間にも魔力の違いがわかる者がいるらしい。

 勇者は怒りに燃えた目をクリスに向ける。

「くそ、魔族の癖に騙しやがって!」
「へ?」

 また、クリスの口から間抜けな声がでた。

「いや、あんたが勝手に勘違いしたんでしょ」

 今度は背に矢筒を担いだ明るい茶色の髪を1つ結びにしたオレンジの瞳で軽装の人間の女が呆れて言う。

「……ともかく、お前が聖剣を盗んだ魔族か!?」
「はぁ!?」

 クリスは今度は驚きの声を上げた。

「おい、こら人間! こいつは俺を盗んでねぇ! 俺はこいつを選んだんだ!」

 シャルルが抗議すると、勇者の顔が青くなった。

「け、剣がしゃべった……!」

 勇者の反応にシャルルは「ふふん!」と鼻を鳴らすような音を出した。

「そっちの聖剣はしゃべらないのかい?」

 あんぐり口を開ける勇者にクリスはのんきに聞く。

「剣がしゃべるわけないだろ!
 お前、聖剣に何をしたんだ!」
「何言ってんだ!俺はしゃべる聖剣だ!」

 勇者の言葉にすかさずシャルルが抗議する。

「それはともかく、その聖剣は俺が抜くはずのものだったんだよ!なんで魔族のお前が持ってるんだ!」
「えっと、じゃあ、はい」
 
 かなり理不尽な責めに、クリスは何故か聖剣を差し出した。
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