19 / 179
魔王、再会する
しおりを挟む
村を出てから3日後。
クリスたちはまっすぐ、ではなく、やや遠回りしながら魔王の元に向かっていた。
「なんでこんな遠回りするのよ」
「その近道で、君たちが略奪をしていたからでしょ」
サーニャがぶつぶつ言うのを聞いて、クリスはそう返した。
サーニャとオークたちは食糧を得るために、付近の村を襲っていた。
本来なら、ひとつひとつ謝りに向かうところだが、謝る前に人間たちに襲われたり、むしろパニックを起こす可能性が高い。
クリスとしても早く魔王と対面して終わらせたいため、弁明や無駄な争いに時間をかけるより、避けて通った方が早いと思い、遠回りなルートとなった。
それに、魔族とオークたちという構成のため、人間の集落に寄ることは出来ず、徒歩で森の中の道を通らざるを得なかった。
サーニャはまだぶつぶつ呟く。
「うう……やだ……疲れた」
「え、もう?」
サーニャはあまり鍛えてないのか、体力がない。
だが、回復魔法では疲労はほとんど癒せないため、休み休み行くしかなかった。
「私は唯一の女子なのよ!もう少し配慮してもいいんじゃない!?」
「……ミドとラドとシラは女だけど」
「誰よ、それ?」
「……オークだよ」
「女子いたの!?」
サーニャは驚いて、後ろのオークたちを見た。
オーク女子3人は「失礼な」と憮然とし、男たちは笑いをこらえる。
クリスも聞いた時は驚いた。
こちらのオークは男女差があまりないようだ。
「まぁ、でもそろそろお昼だし、一休みしようか」
そう言うと、クリスは立ち止まり、後ろのオークたちに合図する。
「ちょっとここで待ってて」
「どこ行くのよ」
森の中に入ろうとするクリスにサーニャが聞いた。
「何か動物とか狩って来るよ。そろそろ果物も飽きてきたし」
いくらおいしくても、ここ3日ほど果物ばかりだったので、さすがに肉とか食べたい。
サーニャたちはなぜか目を丸くするが、特に文句は言わなかった。
しばらく探すと、そこそこ大きな魔獣を見つける。
毛むくじゃらの狼のような魔獣で、クリスよりも大きく、鋭い牙と爪を持っていた。
「やぁ、こんにちは」
一応、意志疎通できる相手を食べるのは気が引けるため、クリスは声を掛ける。
すると、魔獣はクリスを獲物と認識したのか、襲いかかってきた。
意志疎通不可だと判断したクリスは、魔獣にオークたちに放ったより強い雷魔法をぶつける。
バチッという大きな音とともに、魔獣は体から煙を放ちながら倒れた。
すでに死んでいることを確認すると、重力操作魔法を使い、木々にぶつからないよう気を付けながら、元の場所まで運ぶ。
オークたちは大人しく待っていた。
魔獣を見て歓声を上げるオークたちに笑いかけると、クリスはシャルルを抜こうとする。
「おい、待て。俺でこいつを解体する気か?」
「ダメなのかい?」
「いや、ダメじゃねぇけど……」
口ごもるシャルルを無視して、クリスは魔獣の皮を剥いだ。
ピンク色の肉の部分のみにすると、クリスはサーニャの方を見る。
「サーニャ、悪いけど、これ、焼いてくれない?」
「え、私がやるの!?」
突然指名されたサーニャは驚きの声を上げた。
「あんたがしなさいよ!」
「僕が焼くと、全部灰になるんだよね」
クリスは火の魔法が苦手だった。
どんなに火を小さくしても、何故か全て燃やし尽くしてしまうのだ。
「……わかったわよ!」
せっかくの肉を灰にしては堪らないので、しぶしぶサーニャは魔法で肉を焼き始める。
「うおおぉ!」
しばらく焼いていると、どこかで聞いた声の雄叫びが迫ってくる。
そしてオークたちに向かって剣を振り上げる人影が飛び出してきた。
「危ない!」
クリスはとっさに魔法で結界を作り、剣を防ごうとした。
だが、剣はクリスの結界をやすやすと切り裂く。
「……!」
クリスは驚いたが、思考するよりも早く聖剣を抜き、オークと襲撃者の間に割って入る。
ガキンッと刃と刃がぶつかる音が響く。
間一髪で、クリスはオークたちを凶刃から守ることができた。
腕に力を込め、相手を押し飛ばし、クリスは改めて、襲撃者を見る。
「げっ」
クリスの口からそんなうめき声がでた。
襲撃者は、栗色の髪に目付きの悪い青い瞳をしていた。
「勇者……!」
そう、それは紛れもなく、クリスがこの間城で追い返した勇者だった。
クリスたちはまっすぐ、ではなく、やや遠回りしながら魔王の元に向かっていた。
「なんでこんな遠回りするのよ」
「その近道で、君たちが略奪をしていたからでしょ」
サーニャがぶつぶつ言うのを聞いて、クリスはそう返した。
サーニャとオークたちは食糧を得るために、付近の村を襲っていた。
本来なら、ひとつひとつ謝りに向かうところだが、謝る前に人間たちに襲われたり、むしろパニックを起こす可能性が高い。
クリスとしても早く魔王と対面して終わらせたいため、弁明や無駄な争いに時間をかけるより、避けて通った方が早いと思い、遠回りなルートとなった。
それに、魔族とオークたちという構成のため、人間の集落に寄ることは出来ず、徒歩で森の中の道を通らざるを得なかった。
サーニャはまだぶつぶつ呟く。
「うう……やだ……疲れた」
「え、もう?」
サーニャはあまり鍛えてないのか、体力がない。
だが、回復魔法では疲労はほとんど癒せないため、休み休み行くしかなかった。
「私は唯一の女子なのよ!もう少し配慮してもいいんじゃない!?」
「……ミドとラドとシラは女だけど」
「誰よ、それ?」
「……オークだよ」
「女子いたの!?」
サーニャは驚いて、後ろのオークたちを見た。
オーク女子3人は「失礼な」と憮然とし、男たちは笑いをこらえる。
クリスも聞いた時は驚いた。
こちらのオークは男女差があまりないようだ。
「まぁ、でもそろそろお昼だし、一休みしようか」
そう言うと、クリスは立ち止まり、後ろのオークたちに合図する。
「ちょっとここで待ってて」
「どこ行くのよ」
森の中に入ろうとするクリスにサーニャが聞いた。
「何か動物とか狩って来るよ。そろそろ果物も飽きてきたし」
いくらおいしくても、ここ3日ほど果物ばかりだったので、さすがに肉とか食べたい。
サーニャたちはなぜか目を丸くするが、特に文句は言わなかった。
しばらく探すと、そこそこ大きな魔獣を見つける。
毛むくじゃらの狼のような魔獣で、クリスよりも大きく、鋭い牙と爪を持っていた。
「やぁ、こんにちは」
一応、意志疎通できる相手を食べるのは気が引けるため、クリスは声を掛ける。
すると、魔獣はクリスを獲物と認識したのか、襲いかかってきた。
意志疎通不可だと判断したクリスは、魔獣にオークたちに放ったより強い雷魔法をぶつける。
バチッという大きな音とともに、魔獣は体から煙を放ちながら倒れた。
すでに死んでいることを確認すると、重力操作魔法を使い、木々にぶつからないよう気を付けながら、元の場所まで運ぶ。
オークたちは大人しく待っていた。
魔獣を見て歓声を上げるオークたちに笑いかけると、クリスはシャルルを抜こうとする。
「おい、待て。俺でこいつを解体する気か?」
「ダメなのかい?」
「いや、ダメじゃねぇけど……」
口ごもるシャルルを無視して、クリスは魔獣の皮を剥いだ。
ピンク色の肉の部分のみにすると、クリスはサーニャの方を見る。
「サーニャ、悪いけど、これ、焼いてくれない?」
「え、私がやるの!?」
突然指名されたサーニャは驚きの声を上げた。
「あんたがしなさいよ!」
「僕が焼くと、全部灰になるんだよね」
クリスは火の魔法が苦手だった。
どんなに火を小さくしても、何故か全て燃やし尽くしてしまうのだ。
「……わかったわよ!」
せっかくの肉を灰にしては堪らないので、しぶしぶサーニャは魔法で肉を焼き始める。
「うおおぉ!」
しばらく焼いていると、どこかで聞いた声の雄叫びが迫ってくる。
そしてオークたちに向かって剣を振り上げる人影が飛び出してきた。
「危ない!」
クリスはとっさに魔法で結界を作り、剣を防ごうとした。
だが、剣はクリスの結界をやすやすと切り裂く。
「……!」
クリスは驚いたが、思考するよりも早く聖剣を抜き、オークと襲撃者の間に割って入る。
ガキンッと刃と刃がぶつかる音が響く。
間一髪で、クリスはオークたちを凶刃から守ることができた。
腕に力を込め、相手を押し飛ばし、クリスは改めて、襲撃者を見る。
「げっ」
クリスの口からそんなうめき声がでた。
襲撃者は、栗色の髪に目付きの悪い青い瞳をしていた。
「勇者……!」
そう、それは紛れもなく、クリスがこの間城で追い返した勇者だった。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる