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魔王、怒る2
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サーニャは困惑した。
(聞き間違いだろうか)
今、真剣な顔で食糧について聞かれなかっただろうか。
「もう一回言うけど、君たちの食糧はどこにあるんだい?」
聞き間違いじゃなかった。
「……どういうつもり?」
とりあえず思いつくのはそれを全部奪うとか、目の前で燃やすとかだ。
「時間的にそろそろ夕食の時間だし、君たちに配ろうと思って」
(……この男は頭に花でも生えているのか?)
確かに日は沈みかけているし、夕飯時には違いないが、一応、敵である自分たちに食事など与えてどうするのだろう。
目の前の男を観察した。
年は十九歳のサーニャと同じか、それより下か。短い黒髪に金眼で、どこか幼さの残るきれいな顔をしている。魔力からどう考えても魔族だから赤い帽子の下に角があるのだろう。
どう見ても強くなさそうだが、先ほどの村の上に張った結界といい、今、サーニャが何度も攻撃してるが、全く歯が立たない体に巻き付けられている蔓草といい、とんでもない魔力の持ち主かつ、魔法の使い手である。
そのはずだが、この男から殺気どころか敵意すら感じない。
まぁ、それはともかく、食糧については答えたところで不利を被ることはない。
なぜなら……。
「ない」
「は?」
「食糧はない。奪った物は食べ尽くした」
つまり、元からないので何かしようがないのである。
男の顔は少し険しくなった。
「えっと、魔王から糧食はもらってないのかい?」
「もちろん、そうよ。食糧は全部そこら辺の人間たちから奪ってこいと言われている」
そもそも、魔王側は人間たちと違って食糧に恵まれてない。奪うのは当然のことだった。
だが、男の顔はますます険しくなる。
「奪うっていったって充分な食料が手に入るとは限らないでしょ?」
その言葉にサーニャはぐっと詰まった。
確かに食料が足りないことは多々あった。
「……話は変わるけど、この村を襲う時、何か作戦を立てた?」
「……? 立てる訳ないでしょ。そんなことしなくても勝てるし」
魔族や魔物と人間たちでは圧倒的な力の差がある。
実際、こいつに敗けるまでは順調だったのだ。
「……魔王から具体的な指示はあった?」
「特になかったけど…」
なんでこんなことを聞いてくるかわからない。
「……もし、この襲撃が成功していたら、何か褒美とかある?」
「……まぁ、気が向いたらくれるかもね」
男の目は据わっている。
「じゃあ、逆に失敗した場合、罰はある?」
サーニャの顔が青くなった。
「……あるんだね」
「あ、あるかもしれないというだけよ!」
サーニャはそう言ったが、あの魔王が敗者に厳しいのは確かだ。何もないとは思えない。
「……つまり、君たちの魔王は、命令はするのに、食糧を充分に与えず、作戦は現場任せで、褒美の約束もせず、なのに失敗した場合は罰を与えると」
男は怒っているようだ。
「そ、それがどうしたのよ!」
魔王というのは巨大で理不尽なものだ。
それが当たり前だったから、男の怒りが理解できない。
「……許せない」
男が低い声で呟いた。
「え?」
サーニャが反応すると、男はガバッと顔を上げた。その金色の瞳は怒りでらんらんと輝いている。
「王と呼ばれながら、配下を大事にしないなんて、王失格だ!直談判して改心させてやる!」
「……怒るとこ、そこ?」
呆気にとられたサーニャはそれだけいうのが精一杯だった。
(聞き間違いだろうか)
今、真剣な顔で食糧について聞かれなかっただろうか。
「もう一回言うけど、君たちの食糧はどこにあるんだい?」
聞き間違いじゃなかった。
「……どういうつもり?」
とりあえず思いつくのはそれを全部奪うとか、目の前で燃やすとかだ。
「時間的にそろそろ夕食の時間だし、君たちに配ろうと思って」
(……この男は頭に花でも生えているのか?)
確かに日は沈みかけているし、夕飯時には違いないが、一応、敵である自分たちに食事など与えてどうするのだろう。
目の前の男を観察した。
年は十九歳のサーニャと同じか、それより下か。短い黒髪に金眼で、どこか幼さの残るきれいな顔をしている。魔力からどう考えても魔族だから赤い帽子の下に角があるのだろう。
どう見ても強くなさそうだが、先ほどの村の上に張った結界といい、今、サーニャが何度も攻撃してるが、全く歯が立たない体に巻き付けられている蔓草といい、とんでもない魔力の持ち主かつ、魔法の使い手である。
そのはずだが、この男から殺気どころか敵意すら感じない。
まぁ、それはともかく、食糧については答えたところで不利を被ることはない。
なぜなら……。
「ない」
「は?」
「食糧はない。奪った物は食べ尽くした」
つまり、元からないので何かしようがないのである。
男の顔は少し険しくなった。
「えっと、魔王から糧食はもらってないのかい?」
「もちろん、そうよ。食糧は全部そこら辺の人間たちから奪ってこいと言われている」
そもそも、魔王側は人間たちと違って食糧に恵まれてない。奪うのは当然のことだった。
だが、男の顔はますます険しくなる。
「奪うっていったって充分な食料が手に入るとは限らないでしょ?」
その言葉にサーニャはぐっと詰まった。
確かに食料が足りないことは多々あった。
「……話は変わるけど、この村を襲う時、何か作戦を立てた?」
「……? 立てる訳ないでしょ。そんなことしなくても勝てるし」
魔族や魔物と人間たちでは圧倒的な力の差がある。
実際、こいつに敗けるまでは順調だったのだ。
「……魔王から具体的な指示はあった?」
「特になかったけど…」
なんでこんなことを聞いてくるかわからない。
「……もし、この襲撃が成功していたら、何か褒美とかある?」
「……まぁ、気が向いたらくれるかもね」
男の目は据わっている。
「じゃあ、逆に失敗した場合、罰はある?」
サーニャの顔が青くなった。
「……あるんだね」
「あ、あるかもしれないというだけよ!」
サーニャはそう言ったが、あの魔王が敗者に厳しいのは確かだ。何もないとは思えない。
「……つまり、君たちの魔王は、命令はするのに、食糧を充分に与えず、作戦は現場任せで、褒美の約束もせず、なのに失敗した場合は罰を与えると」
男は怒っているようだ。
「そ、それがどうしたのよ!」
魔王というのは巨大で理不尽なものだ。
それが当たり前だったから、男の怒りが理解できない。
「……許せない」
男が低い声で呟いた。
「え?」
サーニャが反応すると、男はガバッと顔を上げた。その金色の瞳は怒りでらんらんと輝いている。
「王と呼ばれながら、配下を大事にしないなんて、王失格だ!直談判して改心させてやる!」
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呆気にとられたサーニャはそれだけいうのが精一杯だった。
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