その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、怒る

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「う……んん」

 目を覚ましたのか、魔族の女が唸った。

「あ、起きた」

 女はしばらくぼんやりしたあと、クリスを見て少し驚いて、睨む。

 紅い目と髪をした整った顔だちをした女性で、頭にはまっすぐな角があり、ゆったりとした黒いローブを着ている。目の形や警戒している様子がどことなく、滅多に懐かない猫を思わせる。

「……なぜ、魔族が聖剣を持っている?」

 絞り出された声には怒気が混じっていた。

 魔力というのは種族ごとに特徴がある。
 感覚的であいまいなものだが、魔力の扱いに長けている者は魔力だけで相手がどの種族かわかる。
 だからこそ、帽子をかぶって角が隠れているクリスが魔族だとわかったのだろう。

 クリスは苦笑した。

「さぁ、なんでだろうね」

 心のあり方がシャルルに気にいられたらしいが、正直、どこがいいのかわからない。
 ただ、最初、肌を刺すようだった聖剣の力は今はクリスを攻撃していないことは確かだった。

「……なぜ、殺さなかった?」

 当然の疑問、かもしれない。
 少なくとも、シャルルが言うには「普通なら殺す」らしいから。
 ただ、クリスはこれには明確な答えを持っていた。

「僕の主義」
「は?」
「襲われている者がいたらとりあえず助けて、双方から話を聞くことにしているんだ」

 まぁ、この場合は襲われている方はクリスを怖がって話ができないので、襲っている方から話を聞くことになるが。

「それより、まず、聞きたいことがあるんだけど」

 ぐっと女は口を固く閉じた。何も話さないつもりらしい。
 だが、すごく大事なことだから、話してもらわないと困る。

「君たちの食糧ってどこ?」
「……は?」

 女は気の抜けた声を出した。
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