10 / 179
魔王、聖剣に話す3
しおりを挟む
「まず、この世界の魔王は国王とかじゃなくて、世界を滅ぼすために魔族や魔物を率いるやつのことな」
「世界を滅ぼす? なんでだい?」
クリスはまずそこが理解できない。
「ああ、これはある神話があってな」
シャルルが語ったのは次のような話だった。
昔、神はまず、大地や動物を創造した。
次に自分に似せた人間やアレンジを加えた亜人族を創造した。
神は人々に知恵や技術を与え、仲良く暮らすように言った。
だが、人々は争い、奪い、殺しあった。
神は絶望し、人々を滅ぼそうと考えた。
だが、神は人々を愛してもいた。
だから神は、造った。世界を滅ぼす剣とそれに抗う剣を。
そして、世界を滅ぼす剣が選んだ者を魔王、抗う剣が選んだ者を勇者とした。
「……で、その世界の滅びに抗う剣が俺というわけ」
シャルルは自慢気に言った。
「ふーん」
それに対してクリスの返事は素っ気なかった。
「なんだよ、その返事は」
気分を害したらしいシャルルに、クリスは苦笑した。
「ごめん、僕、神話って好きじゃなくて」
「……まぁ、人間たちは世界を滅ぼす剣を神が造ったことを否定したり、自分たちにとって都合よく変えたりしているからな」
そうなのだ。
たまに不死者になる人間がいて、その者から神話について聞いたが、どれも魔族は悪者で、自分たち人間は神聖であると語っているものばかりだった。
「そういえば、なんで魔族や魔物は魔王に従うんだい?」
今の話だけだとそこが腑に落ちない。
「魔族は神の創造したなかで1、2を競う力の持った種族だったから、いろんなところで差別や迫害にあったんだ。
しかも、その強さを初代魔王に目を付けられて、半ば無理矢理部下にさせられた。魔物たちも似たような感じだな」
「そんなに魔王は強いのかい?」
「世界を滅ぼす剣、つまり魔剣の持ち主になると、とんでもない魔力の持ち主になるからな。他にも寿命が延びたりするし」
「……へえ」
グリムも魔剣と呼ばれることがあるが全然機能が違う。
「シャルルは何ができるんだい?」
「俺か、俺はな……なんと、魔法を斬ったり、身体を強化できたりするんだ!」
「……」
自慢気に言うシャルルに、クリスはどういう顔をすればいいかわからなかった。
「シャルル……」
「ん?」
「ごめん、それ、全部、魔法でできる」
「ふぁ!?」
再びシャルルが奇声を上げたのだった。
「世界を滅ぼす? なんでだい?」
クリスはまずそこが理解できない。
「ああ、これはある神話があってな」
シャルルが語ったのは次のような話だった。
昔、神はまず、大地や動物を創造した。
次に自分に似せた人間やアレンジを加えた亜人族を創造した。
神は人々に知恵や技術を与え、仲良く暮らすように言った。
だが、人々は争い、奪い、殺しあった。
神は絶望し、人々を滅ぼそうと考えた。
だが、神は人々を愛してもいた。
だから神は、造った。世界を滅ぼす剣とそれに抗う剣を。
そして、世界を滅ぼす剣が選んだ者を魔王、抗う剣が選んだ者を勇者とした。
「……で、その世界の滅びに抗う剣が俺というわけ」
シャルルは自慢気に言った。
「ふーん」
それに対してクリスの返事は素っ気なかった。
「なんだよ、その返事は」
気分を害したらしいシャルルに、クリスは苦笑した。
「ごめん、僕、神話って好きじゃなくて」
「……まぁ、人間たちは世界を滅ぼす剣を神が造ったことを否定したり、自分たちにとって都合よく変えたりしているからな」
そうなのだ。
たまに不死者になる人間がいて、その者から神話について聞いたが、どれも魔族は悪者で、自分たち人間は神聖であると語っているものばかりだった。
「そういえば、なんで魔族や魔物は魔王に従うんだい?」
今の話だけだとそこが腑に落ちない。
「魔族は神の創造したなかで1、2を競う力の持った種族だったから、いろんなところで差別や迫害にあったんだ。
しかも、その強さを初代魔王に目を付けられて、半ば無理矢理部下にさせられた。魔物たちも似たような感じだな」
「そんなに魔王は強いのかい?」
「世界を滅ぼす剣、つまり魔剣の持ち主になると、とんでもない魔力の持ち主になるからな。他にも寿命が延びたりするし」
「……へえ」
グリムも魔剣と呼ばれることがあるが全然機能が違う。
「シャルルは何ができるんだい?」
「俺か、俺はな……なんと、魔法を斬ったり、身体を強化できたりするんだ!」
「……」
自慢気に言うシャルルに、クリスはどういう顔をすればいいかわからなかった。
「シャルル……」
「ん?」
「ごめん、それ、全部、魔法でできる」
「ふぁ!?」
再びシャルルが奇声を上げたのだった。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!
うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。
皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。
この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。
召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。
確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!?
「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」
気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。
★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします!
★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる