その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、聖剣に話す3

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「まず、この世界の魔王は国王とかじゃなくて、世界を滅ぼすために魔族や魔物を率いるやつのことな」
「世界を滅ぼす? なんでだい?」

 クリスはまずそこが理解できない。

「ああ、これはある神話があってな」

 シャルルが語ったのは次のような話だった。


 昔、神はまず、大地や動物を創造した。
 次に自分に似せた人間やアレンジを加えた亜人族を創造した。
 神は人々に知恵や技術を与え、仲良く暮らすように言った。
 だが、人々は争い、奪い、殺しあった。
 神は絶望し、人々を滅ぼそうと考えた。
 だが、神は人々を愛してもいた。
 だから神は、造った。世界を滅ぼす剣とそれに抗う剣を。
 そして、世界を滅ぼす剣が選んだ者を魔王、抗う剣が選んだ者を勇者とした。


「……で、その世界の滅びに抗う剣が俺というわけ」

 シャルルは自慢気に言った。

「ふーん」

 それに対してクリスの返事は素っ気なかった。

「なんだよ、その返事は」

 気分を害したらしいシャルルに、クリスは苦笑した。

「ごめん、僕、神話って好きじゃなくて」
「……まぁ、人間たちは世界を滅ぼす剣を神が造ったことを否定したり、自分たちにとって都合よく変えたりしているからな」

 そうなのだ。

 たまに不死者になる人間がいて、その者から神話について聞いたが、どれも魔族は悪者で、自分たち人間は神聖であると語っているものばかりだった。

「そういえば、なんで魔族や魔物は魔王に従うんだい?」

 今の話だけだとそこが腑に落ちない。

「魔族は神の創造したなかで1、2を競う力の持った種族だったから、いろんなところで差別や迫害にあったんだ。
 しかも、その強さを初代魔王に目を付けられて、半ば無理矢理部下にさせられた。魔物たちも似たような感じだな」
「そんなに魔王は強いのかい?」
「世界を滅ぼす剣、つまり魔剣の持ち主になると、とんでもない魔力の持ち主になるからな。他にも寿命が延びたりするし」
「……へえ」

 グリムも魔剣と呼ばれることがあるが全然機能が違う。

「シャルルは何ができるんだい?」
「俺か、俺はな……なんと、魔法を斬ったり、身体を強化できたりするんだ!」
「……」

 自慢気に言うシャルルに、クリスはどういう顔をすればいいかわからなかった。

「シャルル……」
「ん?」

「ごめん、それ、全部、魔法でできる」

「ふぁ!?」

 再びシャルルが奇声を上げたのだった。
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