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魔王、聖剣に話す2
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クリスは一通り怪我人を治したあと、オークたちを集めたところに戻る。
「お前、変わっているな」
「? 何が?」
座って休んでいると、聖剣が話しかけてきた。
「魔族なのにオークから人間を助けたり、そしてそのオークたちを殺さなかったり、恐がられているのに強引に怪我人を治療したり」
「……? どれも普通じゃないかい?」
襲われている者がいれば助けるし、話を聞かずに殺すのはクリスの主義に反するし、回復魔法が使えるから怪我人がいれば治療する。
聖剣は爆笑した。
「いや、全然普通じゃない。
俺の見てきた奴らは異種族なら助けないし、オークたちは斬るだろうし、恐がられているなら治療しない」
クリスはむぅっと唸る。
クリスは異種族という理由で差別することが嫌いだ。
正直、人間や他種族に対して偏見を持っているが、だから助けないというのは違うだろう。
あと、何もしていないのに勇者に斬りかかられてばかりなので、自分はそういうことをしたくない。
そして、ふと、聞いてみたくなった。
話を聞かれないように、まず、音を遮断する結界を張った。
「えっと……」
話を切り出そうとしたとき、自分がこの剣の名前を知らないことに気がついた。そして、自分も名乗っていないことも。
「僕はクリス。クリス・リディル・ヒオン。君の名前は?」
「シャルルだ」
「じゃあ、シャルル……」
「ん?」
「僕、元の世界で魔王って呼ばれてたんだけど、それでも聖剣にふさわしいと思うかい?」
「……はぁ!?」
シャルルはすっとんきょうな声を上げた。
「お前が、魔王!?」
もし、顔があったら、目を見開いたり口をあんぐり開けていたのだろう。とにかく、そのぐらい驚いていた。
「正確にいうと、国王なんだけどね」
「国、王!?」
ヒオン国第五代国王がクリスの役職の正式名称で、実は魔王というのは人間が勝手に呼んでいるだけの俗称なのである。
「まぁ、この格好で信じろっていうのは難しいだろうけどね」
クリスは苦笑した。
今のクリスはどう見ても一般人だろう。
「いや、俺にはお前が嘘をついていないのがわかる」
シャルルは断言した。
「俺と契約したとき、そういったことがわかるようになるからな」
「契約?」
「俺がお前を選んで、お前が俺を抜いた。それで契約は成立だ」
「……そう」
なんだか詐欺にあったような気がしなくもないが、クリスはそう答える。
「で、一応、魔王と呼ばれている僕が君にふさわしいって、まだ、思っている?」
シャルルは笑った。
「言っただろ、お前が魔族だろうが関係ないって。ましてや魔王でもな。
俺が選ぶのは種族でも素質でもねぇ、心のあり方だ。それが気に入ったからお前を撰んだんだ」
この言葉にクリスはあるものを思い出した。
「……なんか、グリムみたいなことを言っているね」
「グリム?」
訝しげにシャルルが聞いた。
「僕の剣」
「……はぁ!?」
再び、シャルルが変な声を上げた。
「まさかと思うが、そいつもしゃべるのか?」
「うん、しゃべるよ。言葉遣いとか全然違うけど」
クリスは頷いた。
剣がしゃべったことに驚かなかったのは鈍いわけでも度胸が据わっているわけでもなく、ただの慣れである。
「そ、そう、なのか」
シャルルは著しいショックを受けた。
「そういえば、ここの魔王って何かしたのかい?」
クリスはシャルルに聞いた。
自分みたいに何もしていないのに退治されるのは理不尽だと思うからだ。
「……そうか、そこから話さなければいけないのか」
「シャルル?」
シャルルが今までと違う暗い調子で話し出す。
「お前、変わっているな」
「? 何が?」
座って休んでいると、聖剣が話しかけてきた。
「魔族なのにオークから人間を助けたり、そしてそのオークたちを殺さなかったり、恐がられているのに強引に怪我人を治療したり」
「……? どれも普通じゃないかい?」
襲われている者がいれば助けるし、話を聞かずに殺すのはクリスの主義に反するし、回復魔法が使えるから怪我人がいれば治療する。
聖剣は爆笑した。
「いや、全然普通じゃない。
俺の見てきた奴らは異種族なら助けないし、オークたちは斬るだろうし、恐がられているなら治療しない」
クリスはむぅっと唸る。
クリスは異種族という理由で差別することが嫌いだ。
正直、人間や他種族に対して偏見を持っているが、だから助けないというのは違うだろう。
あと、何もしていないのに勇者に斬りかかられてばかりなので、自分はそういうことをしたくない。
そして、ふと、聞いてみたくなった。
話を聞かれないように、まず、音を遮断する結界を張った。
「えっと……」
話を切り出そうとしたとき、自分がこの剣の名前を知らないことに気がついた。そして、自分も名乗っていないことも。
「僕はクリス。クリス・リディル・ヒオン。君の名前は?」
「シャルルだ」
「じゃあ、シャルル……」
「ん?」
「僕、元の世界で魔王って呼ばれてたんだけど、それでも聖剣にふさわしいと思うかい?」
「……はぁ!?」
シャルルはすっとんきょうな声を上げた。
「お前が、魔王!?」
もし、顔があったら、目を見開いたり口をあんぐり開けていたのだろう。とにかく、そのぐらい驚いていた。
「正確にいうと、国王なんだけどね」
「国、王!?」
ヒオン国第五代国王がクリスの役職の正式名称で、実は魔王というのは人間が勝手に呼んでいるだけの俗称なのである。
「まぁ、この格好で信じろっていうのは難しいだろうけどね」
クリスは苦笑した。
今のクリスはどう見ても一般人だろう。
「いや、俺にはお前が嘘をついていないのがわかる」
シャルルは断言した。
「俺と契約したとき、そういったことがわかるようになるからな」
「契約?」
「俺がお前を選んで、お前が俺を抜いた。それで契約は成立だ」
「……そう」
なんだか詐欺にあったような気がしなくもないが、クリスはそう答える。
「で、一応、魔王と呼ばれている僕が君にふさわしいって、まだ、思っている?」
シャルルは笑った。
「言っただろ、お前が魔族だろうが関係ないって。ましてや魔王でもな。
俺が選ぶのは種族でも素質でもねぇ、心のあり方だ。それが気に入ったからお前を撰んだんだ」
この言葉にクリスはあるものを思い出した。
「……なんか、グリムみたいなことを言っているね」
「グリム?」
訝しげにシャルルが聞いた。
「僕の剣」
「……はぁ!?」
再び、シャルルが変な声を上げた。
「まさかと思うが、そいつもしゃべるのか?」
「うん、しゃべるよ。言葉遣いとか全然違うけど」
クリスは頷いた。
剣がしゃべったことに驚かなかったのは鈍いわけでも度胸が据わっているわけでもなく、ただの慣れである。
「そ、そう、なのか」
シャルルは著しいショックを受けた。
「そういえば、ここの魔王って何かしたのかい?」
クリスはシャルルに聞いた。
自分みたいに何もしていないのに退治されるのは理不尽だと思うからだ。
「……そうか、そこから話さなければいけないのか」
「シャルル?」
シャルルが今までと違う暗い調子で話し出す。
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