その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、聖剣に話す

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 オークを退治する前に、上空に女がいると聞いて、クリスは念のために村を覆う結界を張っていた。
 そのため、魔法による攻撃を防ぐことができたが、もし、始めから連携して攻撃されていたら、村は大惨事だっただろう。

 上空にいた魔族の女を気絶させたあと、クリスは彼女もオークたちと共に植物の蔓でぐるぐる巻きにした。
 そうして簡単な結界で覆うと、偵察に出て行かせたジョセフが戻って来る。

「他に、残党はいなかった?」

 いない、とネズミの姿の側近は首を横に振った。
 ジョセフはこの場で話す気もヒト型になる気もないらしい。

「ねぇ……」

 とりあえず、クリスは近くにいた村の男に話しかけようとした。
 だが、その男は顔を青ざめて逃げてしまう。
 仕方がないので、村を歩いていると、逃げていく人間のなかに逃げない者がいた。

 いや、正確には怪我をして逃げられない者が。

 クリスはその人間に近づく。

「な、なにをする気だ!」

 怪我をした男を守ろうとするように、一人の勇敢な男がクリスの前に立ちはだかる。
 クリスはため息をついた。

「ちょっと退いて」

 だが、男は退こうとしない。

 仕方なく、クリスが強引に退かそうとすると、触れると呪われると思ったのか、男は飛びのく。
 なんの邪魔もなくなったため、クリスは怪我人に近づくことができた。

 呼吸はあったが、意識はなく、頭から血を流して、片腕と片脚がいびつに曲がっていた。

 クリスは頭から少し離したところで手をかざす。

 すると、クリスの手の平から温かな光が放たれた。
 しばらく当てたあと、曲がった腕と脚を伸ばしてから、同じように光を当てる。
 光を当て終わったあと、クリスは黙ってその場を後にした。

「おい、大丈夫か!?」

 クリスが立ち去った後、怪我人を庇おうとした男が怪我人を揺すった。

「……うるさいなぁ」

 怪我をした男はゆっくりとまぶたを開ける。

 そして心配している男を鬱陶しそうに見ると、ごく普通に立ち上がった。

「お、お前、なんで立ち上がれるんだ?!」

 さっきまで目の前の男は大怪我をしていたはずである。
 元怪我人も首をひねった。

「あれ、そういえばなんでだ?」

 頭に手をやると、血はついていたが、傷はすっかりふさがっていた。
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